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勇者04──防衛省異世界対策室の少年  作者: 朱実孫六
死と再生

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第2話 バイト先に異世界が落ちてきた

 ──同じ日。夕暮れも近いJR新宿駅前。


 朝倉真琴は、西口ハルクの足もとで、道行く人に埋もれながらチラシを配っていた。




 いたずらウイッチのコスの彼女が抱えているのは、焼肉店のハロウィンイベントのチラシだ。


 歩行者信号が赤に変わった。


 オオカミ娘の着ぐるみが友人だ。人通りがいったん途絶えて、彼女が真琴を見た。


「じゃあ、マコトのお父さんって、本当のお父さんじゃないの……?」


 真琴は、チラシの残りを確かめる。


「そう。ボスって呼んでる」


 信号が変わり、人が流れ始めた。


「反抗期的な意味で?」


「ちがうかな。事故で入院したとき、はじめて自分の血液型を知ってさ」


 両親はふたりともO型。けれど自分はAB型だった。


 友人も、手を動かしながら言った。


「血がつながってないってことか」


「わたしは知りたいわけよ。朝倉真琴って、ほんとうはどこから来た誰なのかって」


 真琴は配る手と笑顔は止めないものの、


(それがわかんない限り、どうも人生が落ち着かない……)


 胸のなかでそう思いながら、目を曇らせた。




 サキュバスとゾンビナースのコスプレをした専門学校生の二人組が、一緒に写真を撮ろうとスマホと自撮り棒を見せてきた。応じて多めにチラシを受け取ってもらう。


 見送って、真琴が口を開いた。


「でもヒントはたぶん、昔っからよく見る、あの夢よ」


「赤いマントの勇者の夢?」


「そう。今日もね、久しぶりにみた」


 いつになく鮮明だった。魔王城で、白い髪の少女は勇者の胸に抱かれていた。


 すこし、胸が高鳴った。


「なんかのトラウマかなって、思うんだけど……」


 友人が口をゆがめた。


「トラウマぁ? その割には嬉しそうな顔してんじゃん」




 そのとき、ふたりの前に、二メートルはありそうな影が立った。


 周りのざわめきがふっと遠のいた気がした。真琴が見上げると、その漆黒の仮面のコスプレイヤーは、彼女を見下ろしたまま、つふやいた。


「そうか。そのほうは転生したと言うことか」


 真琴の指が何度か上滑りしながら、チラシを一枚とりわけた。細いスリットの黒い仮面にはどこか見覚えがあったが、どのアニメのキャラクターなのかは──思い出せなかった。


 とりあえず、愛想笑いで差し出した。


「こ、この先の焼肉店で、キャンペーンやってるんです……」


 




 仮面の男の横から、真紅の胸甲をまとった美熟女感のある女剣士コスが歩み出た。


「この女僧侶、勇者も来るとすれば、厄介だわ」


 真琴はもう一枚、チラシを手に重ねた。


「も、もちろん勇者コスでも、おくれてご来店でも、かまいませんけど……」


 女剣士は、真琴を一瞥し、面倒臭げに口を歪めた。


「ここで始末したほうがいいわ」


 真琴は思わず復唱していた。


「しまつ?」


 その手から、筋肉質な蛮族コスの大男が、太い指先でチラシを摘みとっていった。


 大男は、取ったチラシの中で焼けている肉の画像を鼻で嗅ぎ、ぺろりとなめたが、つまらなそうに顔をしかめた。




 真琴は足もとに置いていたリュックサックを二つとも、静かに抱きあげた。


「……と、ともかく、コスだと一皿サービスなんで」


 友人を背中に隠しながら、彼女の手を引いて三人に会釈し、立ち去ろうとした。


「よかったら、この後にでもぜひ。……それじゃ……」


 だが、仮面の男は、見えない手で真琴の魔女コスのフードをつかんだ。


「え……?」


 彼女のかかとは宙に浮いていた。そのまま仮面の男に正対させられた。


 行き交う人たちが、スマホを見たまま声をあげずに避けていく。




 着ぐるみの友人にリュックを投げて目配せすると、彼女は顔を真っ青にして、人波のほうへ駆けていった。


 真琴は、魔力につり上げられたまま、ひとまずほっとした。彼女だけでも逃げてくれれば安心してキレられる。



ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


次回は、明日18:00に公開予定です!

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