第1話 ③
◇
──同じ頃。
勇者がマントの裾を払って立ち上がると、そこは晴れわたった空の下だった。
車道──というものを彼が理解しているはずもない。
迫ってくるトラックを振り向きざま、彼はクラクションごと両断した。
剣をしまう。
真っ二つになった車体の右半分は、運転手ごと中央分離帯に乗りあがった。もう半分は、ガードレールに火花をあげて燃えあがった。
勇者は、逃げ去る運転手の背中を目で追った。
ビル風に、マントと炎と黒煙がたなびく。
歩きだすと、道の端で足をとめた人々が、薄い箱のようなものをこちらに向けてくる。
勇者は、彼らの前を行きながら、並び立つ巨大な塔を見あげた。
陽光を反射する高層ビルが、空を囲むようにそびえ立っている。
真紅のマントをたなびかせながら、兜の先をあげた。勇者は天を仰いだまま口を閉じられずにいるようだった。
緑まばらな、そこは──新宿副都心。
ここが東京だということを、まだ彼が知る由もない。
けれど、その時。
背中からの風に、かすかな気配がした。
マントの少年は、通りで振り向いた。
空の向こうで、今、彼女がこちらを見た──ような、そんな気がした。
「生きて、いるのか……キターラ」
そうつぶやいて、彼は顔を明るくした。
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次回は、本日15:10に公開予定です!




