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勇者04──防衛省異世界対策室の少年  作者: 朱実孫六
再会

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第9話 雨と抱擁

 腕時計は、面会時間を二分も過ぎていた。


 立ち合いの警官は、鍵を取り出すと、勇者に言った。


「外の様子を見てきます。ここで待っているように」


 真琴にも言った。


「防衛省さんも、面会室を出ないほうがいい。戻ってくるまでそこにいて」


 そう言うと、警官はドアを小さく開けて覗き込み、留置場側の様子をうかがった。それで受付のほうに何かを見たのか、彼は慌てて廊下へ出ると外側から鍵をかけた。


 駆けていく靴音が遠のいていく。





 アクリル板を挟んで、勇者とふたりきりになった。


 心細さを感じながらも、同時に胸が高鳴った。


「──でも、さっきはたしかに、爆竹みたいな音がしてた」胸の前で冷たい手を握った。


「あなたも、聞いたでしょ。たぶんあれよ、銃器対策の部隊の人がもってたやつ」


 そう言い終えて、顔を上げたとき、先ほど警官が駆け出していったほう──待合のほうから、金属を叩き鳴らすような音が聞こえた。


 勇者を見ると、アクリル板のむこうで目を鋭くし、身構えたように耳を澄ませている。


 真琴は部屋を見回した。けれど室内は狭く、壁があるだけ。


 出るとしたら、開くのはこちらのドアだけ。勇者のいる留置場側には警官が向こうから施錠していった。




 いくつもの足音が、重なりながら近づいてくる。けれど、人じゃない。転んでは踏まれ、踏まれ終わるとまた立ち上がって、先で転んでいるものを踏みながら進む。不毛で哀れな亡者たちのあしどりだ。


 真琴が、胸の前で握った手を抱きしめて、勇者を見た。


 待合と、廊下の方からか。その一団が、ゆっくりと近づいてくるのは間違いない。その音だけで、外の様子がおぞましい光景として目に浮かぶ。


「ねえ、……聞こえてる、よね?」


「──しっ」勇者は指を口先に立てて声をひそめた。


「……屍鬼だ。この音は」彼の目が鋭くなっていた。


「キターラ、そっちの扉は開くか」




 同時に、全館放送が流れた。ドアの向こうから聞こえる放送に顔をむけた。


 署が、襲撃を受けているらしい。襲撃者の数は特定できていないが数十。放送が持ち場に応じた防戦と避難を呼びかけている。




 真琴は尋ねた。


「ドアは開くと思うけど……シキって、なに?」


 勇者は、部屋を仕切るアクリル板に触れて、すこし押してみながら言った。


「魔物の食いさしだ。そこに魔王が息を吹きこんで、ソルバウたちが操る」


「ソルバウ……って、あの蛮族の大男のこと?」


 勇者はうなずき、増えてきた壁の向こうの足音へと目で示しながら、真琴に静かにするよう、立てた指を口に当ててみせた。


 そしてジェスチャーで彼女に、待合へとつながっている面会人側のドアを押さえておくよう指示して、




 留置場側に勇者。


 面会人側に真琴。


 それぞれ3畳のスペースに閉じ込められた形だ。


 そして勇者の言ったことが正しければ、待合には複数の屍鬼がいる。




 真琴は忍び寄ってドアに寄りかかり、力をいれた。と、同時に勇者がアクリル板の向こうで大きく拳を振りかぶった。


 まさか、仕切り板を叩き割ろうというのか。真琴は思わず「無理だよ……」とつぶやいた。


 その瞬間、押さえていたドアのノブが勝手に回って、外から押され始めた。


「んぐっ……」


 押し返すが、ドアは隙間を広げた。外の騒乱がたちまち流れ込んでくる。


「キターラ、壁まで下がれ!」


 そう仕切りの向こうから聞こえるものの、真琴は、ドアを押し返しながら必死で言い返す。


「むりだよ……! その板、アクリル……!」




 留置場と外の世界を隔てる面会室の仕切りは、逃走防止のために強固だと聞く。いつかニュースを見ながら父が言っていた。普通は半日蹴っても外れないと。




 けれど、勇者は、キターラ、早く下がるのだと、アクリル板にはりついて叫んでいる。


 開くドアに耐えきれず、押し負けそうなまま天井をあおぐ。


「ってか、……下がれって、言われても、もう……!」


 ドアの隙間から、屍鬼の片腕が突っ込まれた。目の前で扉を引っ掻いている。その爪のはがれた男の腕に、真琴は顔を背けた。


 その上、押してくる圧力は、どんどん増していく。


 踏ん張っていたが、ついに耐えきれず尻もちをついた、その時だった──


ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


次回は、本日18:00に公開予定です!

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