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勇者04──防衛省異世界対策室の少年  作者: 朱実孫六
再会

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14/18

第7話 ②


 三階の留置管理課の面会受付で、防衛省の身分証に加え、マイナンバーカードを差し出すと、男性職員の表情が和らいだ。


「例の少年との面会ですね。お待ちいただけますか」


 鍵付きのロッカーにスマホとリュックを預け、受付近くのベンチに腰掛けた。


 天井近くに狭い窓があるが、そこにも鉄の格子が入っている。


 火事の時とかどうするんだろと思いつつ、手がスマホを探す。けれど考えてみれば、いまロッカーに預けたばかりだった。




 腕時計を持たせた意味が、腑に落ちた。


「そういうことか……」


 受付の説明によると、一般人の面会時間は最大でも二十分らしい。



 待合のベンチから、掲示物を眺めてすごす。


 指先が行き場をなくし、ボトムスの糸くずをつまんですごす。受付前の廊下を、三人連れの警官の靴音が近づいてから遠のいていった。


 格子戸が閉まる音と共に、靴音が消えると、奇妙なくらい静かな待合に戻った。


 こうなると、まぶたが重くなってくる。


 目を擦って顔を向けると、一般用の面会室は二部屋あるらしい。このどちらかで彼が現れるのだと思うと、とたんに鼓動がはね上がった。


 十五分も待っただろうか。腕の時計を見ようとしたとき、受付から警官が呼びに来て、真琴は立ち上がった。






 ひとりで通された面会室1は、六畳ほどの、狭くて生活感のない部屋だった。壁に窓はなく、待合よりもさらに音がなかった。




 部屋の中ほどには、机ほどの高さの仕切り台があり、その上部のアクリル板が天井までを仕切っている。


 仕切りの中央には、そこだけ二重になった円形の通話口があった。


 向こう側、留置人側のドアにはノブがなかった。真琴は一瞥したのち、思わず二度見した。


 ノブのあるべき場所が、つるっとしていて、鍵穴だけが付いている。


 振り返って確かめると、自分が入ってきた面会人側のドアには、ちゃんとノブがあった。ほっとして、胸を撫で下ろした。




 通話口の前にあるパイプ椅子へと腰掛ける。


 仕切りの向かい、留置場側でも、パイプ椅子がこちらを向いている。まもなくここに彼が腰をおろすことになる。


 そうなれば、待ち焦がれていた対面だ。


 胸に手を当て、呼吸をおちつけた。


 冷静になんてなれるわけないけれど、しないよりはましだ。


 目を開けると、二重になった通話口のアクリルに、自分の顔が二つ重なって映っていた。


 天井の照明の反射で輪郭がわずかに歪み、もう一人の自分がこちらを見返している。


 緊張していないと言えば嘘になる。


 父は、


「警察庁と防衛省のあいだで、すでに話はついている」


 そう言っていたが、このアクリル板を挟んであの少年と、自分はどんな話をするのだろうか。


 この点について、真琴は完全にノープランだった。


 どんな会話になるのか、まるで予想がつかない。もしもこちらの本心を話せたとしても、子どもの頃から夢で会っていたの話など、とても人様に聞かせられる会話にはならない。


 というのも、仕切りの向こうの留置人側には、壁向きに小さな事務机とパイプ椅子があり、そこに立ち合いの警察官が同席するからだ。


 防衛省を名乗って、生まれる前の記憶だの、そんな会話をしてよいものだろうか。真琴は小さくため息をついた。


 かと言って、いきなり「仲間になって」とも言えない。


 防衛省からの打診を、すでに昨日、彼が断っている。


 しくじれば、彼と話せる機会も、全部なくなるかもしれない。


「あんがい、こういうのって一発勝負なんだな……」


 かたちのない気持ちだけがある。どう伝えればよいものか。


「……まずは、雑談でいいか」


 父のG-SHOCKが、無音で秒を刻んでいく。


 室内の空気が体温を奪う。


 これは、母が結婚前に父へと贈ったものらしい。


 そんな母の顔を思いだしているうちに、足音が聞こえてきた。



 上着の襟元を正した。


 心臓が喉から飛びだしそうなほど、高鳴っている。


 留置側のドアが開いた。真琴は立ち上がった。真新しいシャツとスラックスの少年が、男性警官とともに入室してきた。


ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


次回は、明日7:00に公開予定です!

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