第7話 彼に会うんだ
新宿警察署の周囲には、見慣れない角ばったバン型車両が置かれていた。肩から短機関銃をスリングでさげた機動隊員も立っている。
正面玄関で真二は、その一人に軽く敬礼をした。
「防衛省の朝倉真二と、同じく真琴です。零級特異災害対策室から参りました」
分厚いアクリルのフェイスガードつきのヘルメットをかぶった機動隊員は、にこやかに言った。
「うかがっています。どうぞお通りください。……と言ってもこのとおりでして。ご案内までは手が回らないんですが」
真二は笑顔で返した。
「いや、お察しします。おつかれのことでしょう。ご苦労さまです」
真琴は振り返りながら、真二へと小声でたずねた。
「あの人たちも警察の方……?」
真二は、すれ違う警官に敬礼を返しながら答えた。
「そう。ERTって言ってな、テロや銃撃の緊急時に初動で駆けつける、対応部隊のみなさんだ」
真琴は足を止めて振り向いた。青い出動服に、重たそうな防弾着。足もとには頑丈そうなブーツ。彼らは、それでも笑顔を絶やさず来訪者の対応に当たっている。
署の自動ドアが開くと、外気とは違う、こもった熱気と汗のにおいが一気に押し寄せた。
足を踏み入れた新宿署の一階ロビーは、人と声と運びこまれた機材でごった返していた。
報道陣も被災者も、警官も、みな疲れ切った目をしていた。汗と埃のにおい、そして床の泥汚れに非常時を告げている。
真二は、壁際に真琴と寄りながら言った。
「朝の電話では、どこまで話したかな」
真琴は言う。
「青い勇者が仲間になってくれない、ってとこまでかな」
真二は苦笑した。
「たしかに、ネットの呼び名の方が的を得ているかもな。だが、我々にはあくまであの少年はゼロフォー」
「まぁ、そこは置いておいて、わたしは彼に昨日のお礼が言いたい」
「父さんは彼とパーティを組みたい。真琴の仕事はわかるな?」
胸を張った。
「わかる。彼とまず仲良くなる。それでいい?」
「よし。だがボーイフレンドをつくるという意味じゃないぞ」
歯を見せる。
「わかってるって。あくまで情報収集、でしょ?」
ふたりは親子でグータッチをした。
カニの親子のように、壁伝いにすすんで、案内板を見上げた。真琴がめざす留置管理課は、三階らしい。
真二は案内板を目に言った。
「署長室は二階か……」
そこで真二は思いだしたように腕時計を外しはじめた。
「おそらく、そっちでこれが必要になる。真琴が持っておきなさい」
受けとると、カシオのG-SHOCKだった。
「でも、これって母さんのプレゼントじゃん」
真二は微笑んだ。
「やるわけじゃない。貸すだけだ」
左腕にはめながら首をかしげた。
「時計ならスマホがあるじゃん」
真二は、謎めかすように笑んだ。
「じきにわかる」
真琴は手首につけたG-SHOCKを父に見せた。
「よし。どう? 本物の腕時計とかはじめて」
「なかなか似合う。じゃ、父さんは署長室だ。頭を下げてくる」
眉尻を持ち上げた。
「なんで? どうしてボスが謝んなきゃなんないの……。わたしの責任じゃん」
胸の内に、昨日の騒ぎがまたくすぶりはじめた。
けれど真二は「違う違う」と手で否定した。
「そっちの頭じゃない。あの光るヨロイを貸してくださいって頼むのさ。こちらさんからすれば、多大な出血の末に確保した押収物だ。実際のところ土下座したってこんな頭じゃ足りないが、筋は通さないとな」
小さく真二に手を振った。そして、ひとつ気合いを入れるように自分の腰を叩いた。
面会には、上階の留置管理課で窓口手続きが必要らしい。
混雑するロビーを見渡し、背伸びしてエレベーターか階段を探した。
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次回は、本日17:00に公開予定です!




