表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者04──防衛省異世界対策室の少年  作者: 朱実孫六
再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

第6話 ②

通りは、焼け野原の中央を伸びていた。



 天に向かってねじ曲がったガードレール。


 ブレーキ跡を残したアスファルトの上に、焼けただれた車。


 昨日まであったビル街の景色が、焦げた瓦礫の折り重なる広場と化していた。




 車の上に乗りあげた車を、自衛隊の重機がどかして道を拓いている。


 オレンジ色の消防と、紺色の警察が、犬を連れて瓦礫の隙間に要救助者を捜索している。


 僧侶の姿も見える。遺族なのか、泣き崩れている姿もある。


 規制線のこちら側では、昨日の惨劇が、火を消したそのままに広がっていた。




 倒れたビルのあいだから、風が抜けてきた。


 その風が、濡れた炎の匂いを運んでいく。


 高いはずの空に、まばらなハエが円環を描いていた。


 花束が、コンクリートの重なりに手向けられている。添えられたぬいぐるみの小ささに、真琴はうつむいた。直視できなかった。


 やり場のない気持ちに、胸の奥が、ざわついた。


 けれどこれが何なのか。怒りよりも深く、悲しみよりも熱いもの。




 喉の奥が締めつけられているように、なにを言えばいいのかわからない。


 たまらず、かたわらを見あげると、父は制帽を手に、静かに頭を垂れていた。



 真琴も、涙をこらえ、父に倣った。やり場のない手を胸の前で合わせていた。


 数千人が犠牲になった。


 テレビが言っていたはずなのに。


 消し炭のにおいを風が運んでくる。


 この瓦礫の下に、まだ誰かがいる。


 破壊の爪痕は、画面とはまったく別物だった。


 こんなにまでのことが起きていたとは、知らなかった。




 真琴が目を上げると、傍らで真二は、彼方の都庁に目をやっていた。


「特異体ゼロワン、およびゼロツーによるものだ。ここから都庁の手前まで、この通り焼け野原に変えた」


 むこうに、白く霞む都庁だけが立っていた。


 真二は言った。


「まず、このツケを誰に払わせるのか、我々がこの目で見極める」


 そして真琴に振り向いた。


「あの少年が、お前の言うように敵でないことの証拠もな」


 初仕事だ。


 うなずいて、胸に焼き付けた。この踏みにじられた新宿の中央通りを。


 真二の目が鋭くなっていた。


「特異体-ゼロワン。魔王か」


 その爪痕の上を、鼓膜を叩くほどの風が渡っていく。真二は空を見上げた。


「ならば、ゼロフォーは勇者かもしれんな」




 父のその言葉が胸の中でこだました。なにかが、真琴の中で吹っ切れていくような気がした。


「──そう。勇者、04」


 うなずく。


 荒漠な傷痕を前に、目を上げた彼女が、つよく親指を握り込んだ。


 ツケを払わせる。


 何千回、夢のなかで見てきた戦いに、また立っていた。


 この先で待つ、あの勇者とともに。


 ここで風になった人たちの声を、こうして耳にしながら。真琴たちは足を進めた。

ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


次回は、明日7:00に公開予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ