第6話 ②
通りは、焼け野原の中央を伸びていた。
天に向かってねじ曲がったガードレール。
ブレーキ跡を残したアスファルトの上に、焼けただれた車。
昨日まであったビル街の景色が、焦げた瓦礫の折り重なる広場と化していた。
車の上に乗りあげた車を、自衛隊の重機がどかして道を拓いている。
オレンジ色の消防と、紺色の警察が、犬を連れて瓦礫の隙間に要救助者を捜索している。
僧侶の姿も見える。遺族なのか、泣き崩れている姿もある。
規制線のこちら側では、昨日の惨劇が、火を消したそのままに広がっていた。
倒れたビルのあいだから、風が抜けてきた。
その風が、濡れた炎の匂いを運んでいく。
高いはずの空に、まばらなハエが円環を描いていた。
花束が、コンクリートの重なりに手向けられている。添えられたぬいぐるみの小ささに、真琴はうつむいた。直視できなかった。
やり場のない気持ちに、胸の奥が、ざわついた。
けれどこれが何なのか。怒りよりも深く、悲しみよりも熱いもの。
喉の奥が締めつけられているように、なにを言えばいいのかわからない。
たまらず、かたわらを見あげると、父は制帽を手に、静かに頭を垂れていた。
真琴も、涙をこらえ、父に倣った。やり場のない手を胸の前で合わせていた。
数千人が犠牲になった。
テレビが言っていたはずなのに。
消し炭のにおいを風が運んでくる。
この瓦礫の下に、まだ誰かがいる。
破壊の爪痕は、画面とはまったく別物だった。
こんなにまでのことが起きていたとは、知らなかった。
真琴が目を上げると、傍らで真二は、彼方の都庁に目をやっていた。
「特異体ゼロワン、およびゼロツーによるものだ。ここから都庁の手前まで、この通り焼け野原に変えた」
むこうに、白く霞む都庁だけが立っていた。
真二は言った。
「まず、このツケを誰に払わせるのか、我々がこの目で見極める」
そして真琴に振り向いた。
「あの少年が、お前の言うように敵でないことの証拠もな」
初仕事だ。
うなずいて、胸に焼き付けた。この踏みにじられた新宿の中央通りを。
真二の目が鋭くなっていた。
「特異体-ゼロワン。魔王か」
その爪痕の上を、鼓膜を叩くほどの風が渡っていく。真二は空を見上げた。
「ならば、ゼロフォーは勇者かもしれんな」
父のその言葉が胸の中でこだました。なにかが、真琴の中で吹っ切れていくような気がした。
「──そう。勇者、04」
うなずく。
荒漠な傷痕を前に、目を上げた彼女が、つよく親指を握り込んだ。
ツケを払わせる。
何千回、夢のなかで見てきた戦いに、また立っていた。
この先で待つ、あの勇者とともに。
ここで風になった人たちの声を、こうして耳にしながら。真琴たちは足を進めた。
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次回は、明日7:00に公開予定です!




