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紫に染まる悪夢の記憶

はじめまして。まずは、この作品を見つけていただき、本当にありがとうございます。

『時の夜明け』は、ただの能力バトルではなく、「誰かを救いたい」という想いと、「過去の罪にどう向き合うのか」をテーマに描いた物語です。

主人公・純を通して、読者のみなさんにも何か感じてもらえる瞬間があれば嬉しいです。

――熱い。息が、できない。

 紫の光が視界を埋め尽くし、遠くで轟音が響く。肌を焼く熱が迫り、空気が震えている。

「この子を……殺すしか……ないんですか……」

 母の声は震えていた。涙が頬を伝い、刃物を握るその手も小刻みに揺れている。

「……そうするしかない」

 父は低く、押し殺すように言った。その目は決意で固く閉じられ、迷いの色はなかった。

――私の視線の先にいるのは……まだ言葉も話せない、赤ん坊の私。

 胸の奥が締め付けられ、呼吸が浅くなる。逃げたい。けれど、この悪夢の中で私はただ見ていることしかできない。

「純……すまない。本当に……すまない」

 父の腕が振り下ろされる。

 瞬間、紫の光が爆ぜ、すべてを飲み込んだ。

一瞬、光の向こうに――呆然と立つ少女の姿が見えた。澄んだ瞳が、大きく揺れている。

「――あれは……姉さん?

 轟音と共に世界が白く塗りつぶされ――


「はあっ……はあっ……!」

 荒く息を吐き、私は目を覚ました。心臓が早鐘を打ち、額には冷たい汗がにじんでいる。視界の端がまだ紫に霞んでいる気がして、思わず拳を握った。

「……何度目だろう、この夢」

 ベッドから身を起こし、カーテンを少しだけ開ける。夜明け前の街は、濃い青とわずかな橙色に染まり、静寂に包まれていた。

 まるで、何事もなかったかのように――。

 もうこの夢を何度見たか覚えていない。内容はいつも同じ。

 そして――夢の中で見ている“赤ん坊の私”の姿は、ありえないほど鮮明だ。

 あの爆発が何なのか、私は知らない。両親の顔すら、現実では覚えていない。けれど、夢に出てくる二人の表情と声だけは、なぜか心に焼き付いている。

 そして、一瞬見えた少女は……一体……


私の名前は時崎ときざき じゅん

表向きは探し物や浮気調査を請け負う、ごく普通の探偵。

だけど、本当の仕事は別にある――能力者に関わる事件専門の探偵だ。

なぜそんな仕事をしているのか?理由は単純。

私自身が、能力者だから。

この街には能力者と非能力者が共存している……はずだ。数年前、「能力者保護基本法」が成立し、表向きは平等が保証された。

しかし実態は違う。非能力者は今でも能力者を恐れ、遠巻きにし、時には迫害する。


 私は自分の能力に「森羅万象」と名前を付けた。

 周囲に存在するあらゆるものから力を借り、攻防を行える。爆破、盾、束縛、浮遊――使い方次第でいくらでも応用が利く。

 周囲に力を借りられない物はない。何もない「無の領域」では何もできないだろうが、そんな場所はどこにもない。能力は便利だが、同時に重荷だ。

 能力がある理由、それは「とが」があるからだ。咎とは、過去に何か重大な「悪」を起こしたことによって、抱えてしまった棘のようなものだ。

 だからこそ、私はその逆の「徳」を積むことにしている。誰かを守り、助け、良いことを重ねれば――いつか自分の咎を精算できると信じて。だから、自分が犠牲になっても、私は全てを許していきたい。これが私の能力者としての生き方だ。


 壁の時計は午前六時を回った。

 起きた時間が中途半端だったので、今まで新聞を眺めながら時間をつぶした。

 熱いコーヒーを淹れながら、窓の外を眺める。明かりが消えた街灯の下を、誰かが早足で通り過ぎていく。

「さて……今日は何が待ってるやら」

 小さく独りごと言ったその時、机の上のスマホが鳴った。番号を見ると、どうやら彼女からだ。

『もしもし、――純? 久しぶり。私、焔野ほむらの 陽朱花ひなか。』

 私は思わず口元に笑みを浮かべた。

「おはよう、陽朱花。こんな朝早くから何の用?」

 スマホ越しに、焔野 陽朱花の明るい声が響く。

『ちょっとね……純にしか頼めない仕事があるの』

 陽朱花とは、数年前のとある事件で知り合った。快活で人懐っこい性格。

 けれど、心の奥には炎のような罪悪感を抱えている。

――過去に自分の炎で、友人を傷つけた。そのときに初めて彼女の能力が発動した。

 以来、彼女は自分の能力を制御することに人一倍気を使っている。

「わかった。いつもの喫茶店で待ってて」

 完全に夜明けが終わり、新しい一日が始まった。


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

「過去に罪を抱えながら、人を救うことはできるのか」、純の抱える「咎」をとおして、私自身がずっと書きたかったテーマです。

もし少しでも心に残るものがあったなら、それが作者として何よりの喜びです。

これからも一緒に見守っていただけると嬉しいです。

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