表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

Choice+

選択肢は自分が一番最初に選んだものから変えない方がいいですよ

「さて、今日のアプリはどれにしようかな。」


高校二年生になり、ある程度新しい生活に慣れてきた俺はいつものように起床してすぐのベッドの上でスマホをいじっていた。


スマホには“Choice+”というアプリがインストールされている。毎朝一回、そのアプリが三つのアプリを提示してくれる。そして、そのうちのひとつを選ぶと、それがその日の“運命”になる。


「今日は“空気を読まずに過ごす”アプリか…あと、“知らない人に話しかける”、“一日中誰の話も聞かない”…」


どれも地味に嫌だった。だが、選ばなければ強制的に“ランダム選択”される。それだけは絶対に避けたい。前に一度それで「今日一日、語尾に“ニャン”をつける」というのが出て地獄を見た。


俺は結局、「空気を読まずに過ごす」を選んだ。授業中、教師に呼ばれても妙な返事をしたり、周囲の微妙な空気を全スルーして答えたり。クラスメートには

「なんか今日、変だね。」と言われたが、アプリのせいにできると思えば気が楽だった。


こうして俺はアプリの言う通りの日々を過ごしていた。


アプリが選択肢を出す。

自分が選ぶ。

だから、自分の意志で選んでいる。


少なくともそう思っていた。



Choice+は、ある日突然現れたアプリだった。


インストールしたきっかけもよく覚えていない。

ある日、目を覚ますと、もうスマホに入っていた。

削除できず、強制通知が飛んでくる。


「本日の選択肢をお届けしました。午前8時までにご選択ください。」


周囲の人間にも使っている者が増えていった。誰もがそれを「便利」と言った。


「だって、自分で何するか決めなくていいんだよ?ストレスなくなるじゃん」


友人のカズキは、そう言ってスマホを見せてきた。

彼の選んだアプリは


「今日一日、自分を肯定する」


だった。


俺はクスッと笑った。


「なんだそれ、やたらポジティブじゃん。」


「選んだのは俺だよ。でも、正直どれも自分じゃ思いつかないことばっかり。だからありがたいよ。」


その言葉が妙に引っかかった。


そんなある日、Choice+の選択肢に異変が現れた。


「今日のアプリは、“全てのことに従順になる”、“他人の意見を否定しない”、“何も決めずに流される”の三つです」


俺は思わず眉をひそめた。

どれも、自分の意志を削ぐような選択肢だ。

だが、時間は8時を過ぎようとしていた。


「もう“従順になる”でいいや!」


その日、彼は誰にも逆らわなかった。教師にも親にも友人にも。ただ頷き、従った。

それが自分でも気持ち悪いほどに“楽”だった。


そして夜、彼はふとスマホのアプリを開いて思った。


「これ、俺の意志ってどこにあるんだろう…」


それから数日後のある朝、Choice+はこう言ってきた。


「本日は、“アプリを削除する”という選択肢も含まれます。」


驚いて目を見開いた。

削除なんて、今までできなかった。

なぜ突然?


「残りの選択肢は、“これまで通り続ける”、”より最適化された選択を許可する”です。」


俺は指を止めた。

「削除する」が一番左に、「続ける」が中央に、「最適化」が右に表示されている。


そして、アプリの注意文が表示された。


「削除を選んだ場合、すべての選択の責任はあなた自身に戻ります。ストレス、後悔、葛藤などが発生する恐れがあります。」


しばらく考えた。何度も画面を見つめ、そして、俺は「より最適化された選択を許可する」をタップした。


次の日から、Choice+は選択肢を提示しなくなった。通知も来ない。ただ、“今日の予定”が自動的にスケジュールに組み込まれている。


「7:30 起床。8:00 出発、8:30 教室到着。9:00 1時間目の授業。10:00 2時間目の授業…」


それに従って動く。

迷いも悩みもない。


ただひたすらに「楽だ」と思った。


だが、ふとした瞬間に、こんな疑問が浮かぶ。


「俺、今、何を選んでるんだっけ?」



夜、俺は夢を見た。

そこでは、人々がみなアプリの指示通りに動いていた。


誰も怒らず、誰も争わず、誰も疑わず。

完璧な社会だった。


だが一人だけ、アプリを持っていない男がいた。


彼は叫んだ。


「これはお前たちの意思で決まっている人生じゃない!誰も望んでいないはずだ!」


だが周囲は、笑ってこう返した。


「でも、自分で選んだんだよ?」


俺はその男が自分に見えてきて、飛び起きた。



翌朝になった。


アプリはもう何も表示しない。

ただ一言だけ、通知が来た。


「あなたはすでに最適な選択を完了しています。これからは我々が選びます。」


「楽だしこれでいいや…」


俺は今日も誰かが考えた完璧なスケジュールを生きる。

短編集を作ろうと思って始めました。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ