コラム 勇者パーティ秘話『聖剣の使い道を求めて』
前々回のコラムで真の能力が発覚した聖剣。勇者パーティが如何にして聖剣に向き合ったのか、編集部はその秘話を追った。
《魔法使い殿コメント》
聖剣の能力が発覚した後どうなったかだって?
それはもちろん荒れたわよ。
勇者は『鋳つぶしてやる!!』って叫びながらへし折ろうとするし、戦士は魂が抜けて呆然自失。特に戦士は勇者の伝説に詳しい分、憧れが強かったからショックが大きかったみたい。心配した僧侶ちゃんがずっと慰めてたわ。
私は私で、聖剣を岩に叩きつけたり魔法をぶつけて溶かそうとしてるバカを止めるのに忙しくてそれどころじゃなかったわよ。まぁ当の聖剣は傷一つ付いてなかったんだけど。剣に作用する攻撃魔法の属性も、光属性に書き換えてるわねこいつ。
私も全力で魔法を叩きこんだんだけど、ダメだったから悔しいけど魔法で破壊するのは不可能と言わざるを得ないわね。勇者はそれが更に気に食わないみたいで、唾吐きかけてた。
それからは誰がこの呪いのアイテムを持って帰るかで揉めたわ。勇者と戦士がさっきまで『ゴーレム』の眼の前で取り合いしてたとは思えないくらい押し付け合いを始めてね。
戦士は『決闘で勝った以上、聖剣はおまえの物だぜ。神聖な決闘の結果を曲げることは許されないのさ。おまえも漢なら分かりな。』って言って拒否するし、勇者は『何が神聖だ!いつもくだらない理由で決闘騒ぎを起こして、魔法使いに怒られてる癖に。第一、決闘前にこれは試し切りの権利を決めるだけだって自分で言ってたじゃん!』って反論するから収集がつかなくなったわ。
最終的に勇者が『分かった。俺の物って言うなら、どうしようが俺の自由のはずだ!ここに捨てていく!』ってなって戦士も『いいぜ。捨てろよ。どうせ誰も拾わねぇよ!』って売り言葉に買い言葉を口にするから、あいつら本当に聖剣捨てて行っちゃったのよね。
しょうがないから、私が拾って持って帰ったわ。実際、パーティ内で一番リスクが低いのは私だったしね。
勇者と戦士が遠吠えして怒られた『ポチ』みたいにしょげ返ってた帰り道、僧侶ちゃんが二人を励ましたの。『魔法に干渉しているだけですから、純粋な炉の火力ならおそらく溶かせると思います。』って。
それを聞いた瞬間、今度はおやつ貰えた『ポチ』みたいに眼を輝かせてたわ。大の男が二人で上機嫌に肩を組みながらスキップしてるのは、はっきり言って気持ち悪かったわね。
街についたらすぐ、私から聖剣をひったくって馴染みのメーヒム工房に先を争う様に持ち込んだの。そして『『俺専用に打ち直してくれ!』』って二人して直談判。また決闘騒ぎになったのを私が鉄拳制裁で黙らせて、親方が聖剣を炉にぶち込んでから待つこと三時間、疲れた様子の親方が工房から出てきて一言。
『無理。』
二人して崩れ落ちて号泣し始めたときは私、腹が捩れて死ぬかと思ったわ。
なにせ慈愛の眼差しで抱きしめる僧侶ちゃんに、二人してすがりつきながら『『だって……聖剣が……聖剣が…………』』って壊れたオルゴールみたいに繰り返してるんだもの。私は悪くないわ。