図鑑No.009『ラビビン』
薄茶色または灰色の体は地面に対応した保護色であり、外敵から逃れるための彼らの知恵だ。前足の爪は一生伸び続け、地面を掘る際に役に立つ。彼らが生息する場所の地面は特徴的な荒れ方をする。
《勇者様コメント》
冒険者は間違っても狩ってはいけない魔物。
狩ってしまうと最低でも牢屋に投獄の上、多額の罰金刑、最悪の場合は処刑もありえる。
理由はこいつが猟師の指定狩猟生物になっているからだ。
駆け出し冒険者向けに説明するが、我々冒険者と猟師の方達は野生生物を狩るという点で生活領域が被っている。本来、野生生物の狩猟は猟師の専売特許であり、領主による許可制だ。だから冒険者が魔物を狩って生計を建てることは厳密には違法行為であり、処罰の対象になる。実態として魔物を狩って処罰される冒険者などいないが、それは単に様々な事情で我々がお目溢しされているだけに過ぎない。
たまに『法律は野生生物の狩猟を禁止しているだけで、魔物を狩るだけなら問題ない。』と主張する冒険者がいるが、それは自分達に都合の良い解釈に過ぎない。なぜなら『ラビビン』の様に一般的に魔物と呼ばれている生物も法律で指定狩猟生物になっているからだ。
指定狩猟生物とは野生生物の自由な狩猟が許されている猟師に対して、禁猟期間の設定や狩猟数の報告などが義務付けられている生物のことだ。当然だが、義務を怠れば猟師であっても処罰を受ける。それを我々が破ればどうなるかは言わなくても分かるだろう。
万が一なんらかの事情で狩ってしまった場合は、最寄りの猟師小屋に必ず報告すること。報告の際は狩ってしまった場所を覚えておき、猟師の方を案内する方法を取る。間違っても狩ってしまった生物を猟師小屋に持って行こうとしてはいけない。その姿を同業者に見られただけでもあらぬ誤解を産みかねない。狩猟したことを報告すると、大抵かなり怒られるが甘んじて受け入れること、狩ってしまった我々が全面的に悪い。大丈夫、猟師の方に怒られることは熟練した冒険者なら一度は通る道だ。
指定狩猟生物に関わらず、全ての野生生物や自然は猟師の管理物であるということを常に忘れないこと。森や山に入る前に猟師の方に挨拶したり、目的を説明したりして、関係を良好に保つことは冒険者全員の義務だ。お酒の席で怖いモノは何かと聞かれて『猟師』と答えられる様になれば、冒険者として一人前だ。