図鑑No.008『マンドラゴラ』
その葉っぱは漬物に、根は栄養に富み様々な料理に使われる。花には毒が含まれる為、食用には適さないが貧しい地域では鎮痛剤の代用品として使用される場合がある。一部の地域には良く似た別種が存在する。
《勇者様コメント》
いやどっちのことだよ。わかんないよ。
まぁ魔物図鑑なんだから『動く方』なんだろうけど。
『動く方』は北方の固有種で、俺も生きている物を見たことはない。なのであくまで王国民としての所感であることに注意。だから北方の人も南方の人もどうか暖かい目で見てほしい。俺達はあなた方の戦争に首を突っ込む気はない。当人達同士で解決してください。
詳細不明だが北方の『マンドラゴラ』は植物なのに動くらしく、それ故に魔物扱いされている。ちなみにどう動くのかは知らない。揺れるのだろうか?歩くのだろうか?。問題なのは南方にも同じく『マンドラゴラ』という固有種が存在することだ。そちらは動かない普通の植物らしい。
北方人と南方人は互いに自分達の『マンドラゴラ』こそが『マンドラゴラ』であり、相手のは『マンドラゴラモドキ』の間違いだと主張している。事態を更にややこしくしているのは双方の地域には『マンドラゴラモドキ』が既にいることだ。
その為、主に加工食品として入ってくる『マンドラゴラ』が何処の『マンドラゴラ』あるいは『マンドラゴラモドキ』なのか王国民には区別がつかない。以前、お酒の席の余興として仲間全員で北方と南方の物を味比べしてみたが、全く区別が付かなかった。北方人と南方人曰く、『味が全然ちがう』らしいが正直思い込みとしか思えない。
よって王国ではできそうで、できない事の例えとして『マンドラゴラの目利き』という慣用句があったりする。
ちなみに北方では『マンドラゴラが動かなくなった』が不吉な事、南方では『動くマンドラゴラ』がありえない事を表すとか。
『マンドラゴラ』の専門家によると、見た目に関して北方の『マンドラゴラモドキ』は『マンドラゴラ』より『マンドラゴラモドキ』に似ているそうだ。そして『マンドラゴラモドキ』も『マンドラゴラ』に似ている。だから『マンドラゴラモドキ』は『マンドラゴラ』であり、『マンドラゴラ』は『マンドラゴラ』ではなく『マンドラゴラモドキ』、『マンドラゴラモドキ』は『マンドラゴラ』ではないので、『マンドラゴラ』かあるいは『マンドラゴラモドキ』の近縁種なのではないかという説が…………うん、自分でも何を言ってるのか分からなくなってきた……。王国民としてはさっさと決着をつけて名称を整理して欲しい。