図鑑No.007『ディスホーン』
深い森の奥に生息する草食の魔物。頭に生えた3本のツノは、大きなほど強力な個体である証明であり、毎年生え変わる。この角は支配階層において、権力の証として好まれ、細工を施した物が芸術品として取引されている。
《勇者様コメント》
新大陸と旧世界の両方で見られる魔物。
森で不意に遭遇した場合、時期によっては死を覚悟しなければならない。
森で生計を建てている者なら、その危険性は嫌というほど熟知している。春から夏にかけて角が成長している途中のこいつらは相対的に危険性が低く、猟師の罠や角を求める冒険者によってよく狩られている。
市場で流通している肉や角のほとんどは、この時期に狩られた個体の物だ。
危険性が頂点に達するのは角が完全に成長し、繁殖期を迎える秋頃の話。この時期のこいつらは、繁殖為オス同士で闘いを繰り返し凶暴性が増していく。
特に危険なのは、闘いに負け続けていて、繁殖ができていない個体だそうだ。
この個体は凶暴性が極限に達しており、動く生物に対しては同族であろうがなかろうが、即座に突進して、突き殺そうしてくるらしい。
遭遇した場合、絶対にやってはいけないのは、背中を見せて逃げる事。
走力は高く、足の速い大人でも逃げ切れない。
だから、相手から眼を離さず、自分とディスホーンの間に木や岩を挟むようにしながら距離を離す事。
万が一、突進されて避け切れないと思った時は思い切って体を地面に投げ出す。
これで少なくとも、角で突き殺されることはなくなる。あとは踏み潰されないことを祈って、匍匐前進で逃げよう。
これだけ危険性が知られているにも関わらず、繁殖期のこいつらを狩ろうとする冒険者や傭兵は必ずいる。
完全に成長した3本の角は、非常に高く売れる為だ。
一攫千金や、金に困って狙う者に言わせてもらうが、そんな行為は絶対に止めるべきだ。
ディスホーンのヤバさを表す話として、こんな話がある。旧世界において『人類』が絶滅させてしまった『オーガ』の成人の儀。その中の一つとして、繁殖期のディスホーンを一人で狩るという物があったそうだ。
しかし、屈強かつ血気盛んな『オーガ』ですら、あまりの死亡率の高さ故に、挑戦する者がほとんどおらず、挑戦するだけで英雄扱い。
成功した者は無条件で、集団の支配者になったとか。
繰り返しになるが、繁殖期のディスホーンを狩ろうとしてはいけない。
あなたは『オーガ』でもなければ、『英雄』でもないのだから。




