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コラム 勇者パーティーアイテム特集『聖剣』

その刃は極北の新雪の如く白銀の輝きを持ち、幾千の返り血を浴びても一滴も血がつく事はない。柄と持ち手は黄金に輝いており、埋め込まれた大粒のダイヤモンドは、この剣がもたらす聖なる光と正義と同じく決して砕けることはないのだ。


《勇者様コメント》

クソ!ゴミ!カス!

これを作ったバカは何処のどいつだ!

この剣の仲間内であだ名はこうだ!

俺『折れない木の棒』

戦士『スライムスレイヤー』

僧侶『聖剣様(笑)』

魔法使い『ドアストッパー』


あちこち回ったり、伝承を確認したり、散々苦労した挙句とある村で発見した時はそりゃあ嬉しかった。感動しすぎて俺と戦士は変なテンションになってたし、いつも冷静沈着な僧侶でさえ笑みを隠せてなかった。散々ぱら俺と戦士でどっちが持つか揉めて決闘騒ぎにまでなっても、魔法使いはやれやれ顔するだけだったし!

こいつの化けの皮が剥がれたのは調子に乗った俺が野生の『ゴーレム』相手に試し切りしよう!って言ったからだ。


切れ味がすごいのは認めよう。『勇者の剣』で切れない『ゴーレム』がまるでバターみたいに切れる切れる。普通はあり得ない現象だ。それを見た瞬間『ゴーレム』の真ん前でまた戦士と取り合いになったが無理もない。それくらいおかしな切れ味だった。俺も戦士の大興奮だった。魔法使いの魔法が炸裂するまでは。


魔法使いが『ゴーレム』相手に俺たちごと魔法をぶっ放したのは何も間違ってない。魔物の前で剣の取り合いなんてバカな事しているんだ。多少俺たちを巻き込んでも『ゴーレム』を処理するのは正しい判断だ。おかしいのは結果だ。

爆散して動かなくなる『ゴーレム』。

肩のホコリを払ってる戦士。

大ダメージを受けて死にかけてる俺。

おかげでウキウキ気分だった剣の試し切りが、真剣な顔をしたアイテム検証会に早変わりだ。


一通りの検証の結果、分かったのはこの剣が属性を光属性に書き換えてしまうってこと。通常の魔剣の場合、剣に宿っている特殊能力は装備者の魔力を使用して発動する。『聖剣様(笑)』の場合このプロセスなしで効果が発動している。効果は単純、剣での斬撃に光属性を付与する。戦士みたいに生まれつき魔力が無いか少ない前衛にとっては数少ない自前で用意できる属性攻撃だ。

ここまでは良い、問題の1つ目はエンチャントの属性すら書き換えてしまうってことだ。前衛の俺と戦士は普段、僧侶と魔法使いから各種バフを受けて戦っている。敵に対応してエンチャントを切り替えることで、前衛の属性攻撃を最適な物に変更するのはとても大事なことだ。

だがこの『ドアストッパー』はどんなエンチャントを受けても光属性で上書きしてしまう。つまり『折れない木の棒』を装備している限り光属性でしか攻撃できないってことだ。この時点で既に武器失格だが、これだけならまだ使い道が無くもなかった。『スライムスレイヤー』のヤバい所は防護魔法の属性まで光に書き換えてるってことだ。俺たちは属性防御を怠らない。

敵からの攻撃はもちろん後衛からの魔法攻撃に前衛が巻き込まれる事態が頻繁に起こるからだ。魔法使いが『ゴーレム』にぶっ放したの火属性、当然だが俺や戦士はアイテムや魔法で耐性を上げて巻き込まれても大丈夫な様にしている。実際巻き込まれた戦士はほとんど無傷だった。一方『聖剣様(笑)』を装備してた俺、耐性属性が光属性オンリーに切り変わって大ダメージ。これが『折れない木の棒』の正体だ。

ちなみに光属性の弱点は暗黒属性なのでこいつを装備してる時にそんなモノ食らったら間違いなく即死する。


伝承では聖剣の勇者様は『魔王を切り伏せたが、最後は闇に倒れた』って言われてるけど、こんなの物握ってたらそりゃそうだろうとしか言えない。

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