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休息も大事!!

===============

 カメリア・佐紀音


【お知らせ】


 しばらく配信をお休みします。理由は、正直に言うと、疲れて、心病んでるからです!

 旅行に行って、癒されたら、また配信します!2週間ぐらい後です。あと、旅行でVlog撮っておくので、動画化をお楽しみに!

 

===============


 佐紀音は、自らのSNSアカウントを更新した。


 数年と活動をし続けて初めての配信休止ということで、リスナーたちは、様々、コメントを寄せた。



【お疲れ様です。配信、楽しみにしてます】


【ゆっくり休んでください】


【お疲れ様です。二週間と言わず、ゆっくり休んでください】


【旅行Vlog楽しみにしてます】


 みんな、温かいコメントを寄せてくれた。


 これには、佐紀音も、「よしよし」と言って、部屋でご満悦。ゆっくり休めるなと思って、心を穏やかにした。



 スマホを閉じて、ベットに横になった佐紀音。


 床にべったり座って、次のオリジナル曲の作成と、動画のアナリティクスの分析を行っていた俊也が、低い声を響かせた。


「旅行、どこ行くの?」

「んー……どこ行こうかねぇ……」


 佐紀音は、顎に手を添えて、呻くように悩んでいた。


 悩みに考えて、結局回答を返さない佐紀音に代わって、俊也が提案した。



「草津温泉とか、どう?」

「行こう」

「決めるの早っ」


 提案は、あっさりと受け入れられた。


 ベットから飛ぶように起き上がった佐紀音は、「俊也も一緒に行こうよ!」と言って、俊也に顔を近づけた。



「うわっ!?びっくりしたぁ……」

「ねぇ、行こう!草津!」


 接吻せっぷんを迫るかのごとき佐紀音の顔の近づけように、俊也は背後へとのけ反った。まるで、目の前に不快な虫を見つけてしまったかのような驚き方であった。


「お金ならいっぱいあるからさ!」


 彼女のようなセリフを、人生で一度でいいので、使ってみたいものだ。


「分かった……一緒に行くからさ、顔近づけるの、やめて」

「やった~」

「で、いつ行くの?」

「できるだけ早く」

「何泊するの?宿は?」

「予約しておいて。二人部屋でもいいからさ~」

「はぁ?俺が全部やるのかよ」

「お願い~」

「やだ」

「ねぇ、一生に一回のお願いだって~」

「一生に一回の貴重なお願いを、こんなことに使うな」

「はーい……」


 佐紀音は、俊也からの正論でパンチで殴られて、ようやく食い下がった。



 結局は、俊也も一緒に草津へと旅行することになった。


 佐紀音は、メールを閉じて、次に、チャットアプリを開いた。会話のメンバーは、佐紀音、俊也、ズッ友のリオン、フリーイラストレーターのケンジである。


「リオンとケンジも誘いたい。いい?」


「え、まあ、いいけど……リオンさんは、忙しいから、一泊二日は、難しいんじゃないかな」


「聞くだけならタダだし、何より、仲良し4人で行けたら、これ以上のことはないでしょ」


「たしかに」


 慣れた手つきで、佐紀音は、カタカタと、スマホのフリック入力で文字を打ち込んで、メッセージを送った。


――――――チャット――――――


さきねぇ:週末、ウチと俊也で草津に旅行に行きます


さきねぇ:リオンとケンジ、予定空いてますか?一緒に行きたいです


リオン:ごめん。同期とコラボの予定入れちゃった


リオン:また誘って♡


さきねぇ:リオンちゃんんんん!!


リオン:さきねぇぇぇぇぇぇ!!!ごめんよぉぉぉぉぉ


ケンジ:大丈夫です


ケンジ:ぜひご一緒させてください


さきねぇ:ありがとう、ケンジ!


俊也:よろしくです


ケンジ:自由な予定が組めるのは、フリーランスの特権です


―――――――――――――――


 リオンは、企業に所属のVライバーということもあって、ダンスや歌のレッスン、案件の予定に、同期や会社の公式チャンネルとの予定などがてんこ盛りで詰まっており、自由な時間に乏しい。


 一方、フリーランスでイラストレーターをやっているケンジは、予定が合いやすい。


 旅行も、ノートパソコンとスマホさえ持参すれば、宿でイラスト制作の作業ができてしまうらしい。


「やっぱり、リオンは難しいかぁ……」


「企業勢のライバーだもんね」


「お給料はいいんだろうけど、自由に休みが取れないって、大変そうだなぁ」


「佐紀音は、Vライバーの企業に所属しようって考えたことないの?」



 俊也は、佐紀音に尋ねてみた。


 佐紀音は、中学生の頃からインターネットでの活動をしており、一貫して、個人勢として、活動を続けてきた経緯がある。


「あるよ。何なら、いくつかの企業からお誘い受けたことあるし」


「なんで断ったの?」


 スマホでSNSを閲覧しながら、「企業は、個人勢よりも福利厚生とか、お給料がいいかもしれないけど……」と前置きして、語り始めた。


「ウチの場合、Vライバーとしての活動って、お仕事というよりも、趣味の範疇なんだよね。だから、お金よりも……楽しさとか、ウチらしさとか、リスナーたちとのコミュニケーションのようが大事だって思ってる」


 なるほど、自分の楽しさや、興味、自由な時間を大切にしたいという考えのもとの活動だったのかと、俊也は、配信活動を楽しむ彼女の姿を顧みた。



 FPSのゲームを一緒にプレイしたときも、誕生日凸待ち配信のときも、ASMR配信をしたときも、クリスマスたこ焼きパーティーの実写配信のときも、年越し企画の人生ゲーム配信のときも、ホラーゲーム配信のときも……いつだって、彼女は、心から楽しんでいるようだった。


 

――自分の楽しいこと、やりたいことと、世の中が彼女に求めることが一致しているというのは、幸せなことだなと、俊也は、瞳の裏側に涙の熱さを隠した。


 俺も、自分の好きなことで、佐紀音みたいに笑ってみたかったなと、過去の景色を思い出して、頭が痛くなった。



「さてさて、宿はどこにしようかな~あ、俊也は、ケンジと相部屋でも大丈夫?」


「もちろん」



 佐紀音の、純粋無垢で嘘偽りも陰りもない笑顔に、今は亡き【あの人】の面影を見た。


 元気かな?俺の音楽、聴いてくれたかな……?

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