第二十七章
寝室ではマリアが平和そうに眠っていた。
もうそろそろ起きる時間だ、とは思うルナだが、マリアがあまりにも無防備なので、ため息をつく。
一人侍女の服に着替えて、洗顔等身支度をすると、マリアを起こさずにアイリス姫の元へと向かった。
途中で水差しを代えるトレイを受け取り、彼女はアイリス姫の寝室の扉の前に立つ。
何度かノックした。
いつも帰ってこないのだが、これは儀礼だ。
「入って良いわよ」
ルナは驚く、アイリス姫がこの早朝に起きているのだ。
「失礼致します」
扉を開けるてアイリス姫の寝室に入ると、彼女はベッドに横になっていた。
「どうかなさいましたか?」
ルナは思わず尋ねてしまう。
アイリス姫の目は赤く、顔に疲労の陰が残っている。
ぷっとアイリス姫が弱々しく吹き出す。
「何よそれ。私だって眠れない日もあるわ」
「眠れなかった……」
ルナは彼女の体調が気になる。今日は少し変なのだ。
素直すぎるし、口調もふわふわとしている。
「でも、ルナ、あなたもよ。眠れなかったの? 疲れているみたいだけど」
「私も色々悩みがあります」
「そうね……ねえ、こんなの言って良いかわからないけど、ルナ、何だか臭いわ」
アイリス姫はそう言うと、癖なのか何かを取るように片腕を伸ばす。
「あっ」と彼女がしゅんと萎れた。
そこにあったウサギの縫いぐるみがないのだ。
肩を落とすアイリス姫を目の当たりにし、ルナはゴミ集積場を思った。




