第十四章
「なるほど」
話を聞き終えたウィルは感心したように頷いた。
「今の君の多才さは、その君のお兄さんの影響に寄るんだね」
ルナは無言で俯いた。
話しすぎた、と悟ったのだ。
アレクシスの名は出さなかったが、ルナが家庭教師を何人も雇えた家の出身だと、ウィルは知っただろう。
一つ彼女は自分の仮面を剥いでしまった。
これ以上それを続けると、ウィルには消えてもらわねばならなくなる。
「……真の教師の役目は、生徒に学ぶ楽しさを教えること、か」
「はい」小さく彼女はウィルに首肯する。
「だから勉強に暴力はいらない。むしろ害なんです。家庭教師がついても、全てを網羅して教えるわけではありません。アイリス姫はその他の大部分をご自身で身につけていかねばならないはずです。しかし、暴力の恐怖と屈辱は、勉強そのものの忌避に繋がります」
ルナは再び息を呑む。
また余計なことを口走った。
そもそもアイリス姫は彼女の『目標』の一人だ。徒に入れ込んではならない。
「君の言うとおり、ブッフバルト夫人はその時点で教師失格かもしれないな」
ウィルが何か思案し出し、契機なのでルナは足早にその場を離れようとした。
「どこに行くんだ?」
ルナはウィルに振り返らなかった。ただ、
「厨房に行って参ります」とだけ答えた。
どうしてか常ならしつこく追ってくるウィルは、今回は遠慮してくれた。




