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第一章

 

 月だけが冷厳に美しく、悲劇を見下ろしていた。



 灯もない王の寝所で、一人の少女が身を起こした。


 大きなベッドは柔らかく、少女は微かに体勢を崩したが、持ち前の運動神経でそれを整えなおす。


 窓からは入る月明かりが、少女の頬を青く照らしていた。


「陛下……」


 少女は愛おしそうに眠る若き王に囁くと、ゆっくりと左の腕を持ち上げた。


 手に光る長い針。


 少女の手にあり、幾多の血を浴びてきた彼女の得物だ。


 ぎらりと月の光を、金属の針の先が反射する。


「……あなただけは私を信じてはいけなかった。私をここに招き入れてはならなかった……まして、私などを愛してはならなかった……」


 少女は悲嘆にくれながら、じっと王の整った顔を見つめた。


「私はあなたを殺すために、ここに来たのだから」


 少女の目から熱い涙が溢れ、滑り落ちていく。


「お別れです、我が君、国王陛下」


 少女はふっと慈愛溢れる表情になると、左手の針を持ち上げた。


「これが私の最後の任務です」



 月光は黙して語らず、少女と王の悲劇にただ光を当てていた。



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