5年以上待ち続けた王女と勇者ハーレム
魔王討伐から無事に戻って来た、勇者チットのパーティー。
魔王討伐クエストから五年、我が王国は国民にお願いをして血税で勇者チットの支援を続けて来ました。
私も勇者チットと婚約し、彼の要求する討伐報償として身を差し出しました。
国を挙げての支援の甲斐もあり、勇者チットは魔王討伐を成し遂げたのです。
でも、勇者パーティーがハーレムなんて聞いていません。
――――というか、王族である私達よりも無駄に華美で贅沢な貴金属に包まれている女共。これ以上、何を彼らに与えるというのでしょう。
確かに魔王討伐は、その代価に見合うものです。ですが、支援金も報償も全ては勇者チットのために送られたのです。
「あっ? なに勝手な事抜かしてんの」
「そうよ、勇者チット様こそ、魔王討伐功労者」
「お金を出しただけで偉そうにしないで欲しいわよねぇ」
「行き遅れの姫を押し付けられる勇者様が可哀想」
ハーレム女達の言葉に、ブチッと私の何かがキレました。私を望んだのは、他でもない勇者チットよ。
五年もの間、国民と節税に取り組み費用を捻出した挙げ句、悪様に言われる。
それに最後のは間違いなく悪口。
「報償金は約束通りお渡しします。ですが、私との婚約は破棄とさせていただきます」
「へっ、俺もこんな貧乏臭い国を継ぎたくないから助かるぜ。じゃあな」
報償金とハーレム女を引き連れて、堂々と王宮を去る勇者チット。
「お疲れ様。約束通り、勇者チットは始末しよう。女共から金品を取り返し、疲弊した国民に還元するがいい」
――――そう、これは五年も討伐を待たされた私と魔王ヒトヨシの作戦。
この魔王は異世界からやって来たお人好しで、魔王になった以上、魔王らしく散るつもりでいた。
勇者チットは女達の企みで魔王討伐を引き伸ばし、支援金を着服し豪遊三昧だったのだ。
律儀な魔王は私の国を心配し、この作戦を持ちかけてくれた。
「恩に来ます、魔王ヒトヨシ。貴方が討たれた事になり、王国と魔物が激しく争う事もなくなります」
「元の世界でも、善人面した連中への貢ぎ物で苦しむ人々が大勢いて、他人事に見えなかったのです……だ」
彼のいた世界も酷かったようね。
「ふふ、私の前では無理なさらずに。出来れば騎士として私に仕えて下さるかしら」
「喜んで。貴女と貴女の愛する王国を共に見守りましょう」
こうして、私は怠惰で強欲な勇者ハーレムから国の財産を取り戻し、真の魔王討伐者ヒトヨシと幸せに暮らすことが出来ました。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
初の異世界恋愛になりました。主人公ではないので、正確には違うかもしれません。
はじめは勇者が来るはずなのに、来ないから待ちぼうけの転生魔王のネタでした。企画用に書いてみた所、主人公がお姫様に、勇者様にざまぁ的な未来が望める話しに変わりました。
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