『ウケる』は大阪NGワード?「そらせやろ」しか言えない
ひと月ほど前でしたかね。
某バラエティ番組でウケるは大阪NGワードで嫌がられるぞ、的なVTRが流れておりまして。
二十代女性らしき二人組がインタビュー受けて、面白いのかわりのようにウケると言ってる、まあよくあるVTRだったわけです。
て、大阪でその様子を見せると、それまで女性二人組を好意的に見ていても途端に嫌そうな顔をして馬鹿にされたように感じる、本当は面白いと思ってないくせに、のようなコメントをするおっちゃんおばはんの姿が流れておりました。
私から見ればそう反応されても「そらせやろ」です。
私なりに考える関西人にとっての『オモロい話』の作り方というか構成って、謙譲語と似てるんですよね。
自分や周囲のうっかりなどを話して笑ってもらうパターンが多いのですが。
話す時点で自分が一段下がって「さあ、遠慮なく笑って」の空気を作る。
聞いてる側は笑って「そらオモロいな」「しょーもな!」「アホやなぁ」などの反応をすることで面白さを肯定し、一段下がってくれてた話し手を元の位置に引き上げる。
その繰り返しで会話が続く感じなんですよね。
ちなみに普通の話でも「まぁ、オチはないんやけど」「ないんかい!」で締めるパターンもあります。
芸人さんがロケで素人と絡む時もわりとこのパターンを踏襲してます。
さして面白くない素人のトークでも、芸人さんが自分を一段下げて盛り上げることで成立させてることが多いのです。
とはいえこれは関西芸人さんのほうが衒いなく使っていることが多い手法です。自分を下げることにさほど躊躇いがない方が多いので。
素人さんのトークやエピソードを料理する番組で関西芸人さんが多いのはそのへんも大きな理由でしょうね。
関東バラエティでは相手を馬鹿にするコメントや態度をして鼻で笑うのが笑いの一種になっていますけど、そういう手法を使う方は外ロケ行ってないあたり、よくわかっていらっしゃるなと。
例えば。
「僕のそのエピソード、誰が興味あんねん!」
というツッコミ兼オチのワード。
自分のエピソードに興味持つ人はいないだろう、と自分でツッコミに行くのが普通のやり方。
ですが。
「誰も興味ないでーす」
と相手を下げてざまぁ的笑いを取る人だと、素人と絡ませるのは……ねぇ?
相手を不快にさせる可能性が怖いでしょうね。
あ、芸人さんの話がオチきらない時に先輩とかが「おもろないし誰も自分(君)に興味ないで」みたいにバッサリいってオトすことはなきにしもあらず。
ちょっと話がずれましたが。
関西はそういう謙譲語構成でのしゃべくりに慣れている人が多いので、最近の『ウケる』はウケないのです。
相手を元の位置に引き上げず。
自分が一段下がって同じ高さになるわけでもなく。
上の立場にたったまま。
なんの興味もないけど幼児がわーわー騒ぐから
「はいはい。面白い面白い。○○ちゃんすごいねー(棒読み)」
っていなしてる態度のように見えちゃうんですよね。だから失礼感ハンパない。
あとは面白いの方向性が違うというか、「あはは、何それ変なの」「コイツ馬鹿じゃん」のように嘲笑うのが前提の時に『ウケる』という言葉が使われやすいのもイラつかれる理由でしょうね。
良くて愛想笑い扱いになってるかもしれない。
元々、『ウケる』という言葉が浸透し始めた頃はそんなことなかったはずなんですよ。
『ツボに入る』の代替え語みたいに使われていたので、聞いてる側もちゃんと面白がってたはずですから。
いつから変質しちゃったんでしょうね。