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企画参加作品(ホラー)

雪の降る帰り道で

作者: keikato

 二月、小雪の降る夜だった。

 この日は残業があって、帰りがいつもよりずいぶん遅くなった。

 降りた駅を出て、いつものように鉄道敷に沿った道を歩いて帰る。

 その帰り道の途中。

 高架のガード下の暗がりに、まだ新しい段ボールの箱が置かれてあるのに気がついた。そしてその横を通り過ぎようとしたとき、段ボール箱の半開きのふたの間から見捨てられないなものが見えた。

 数匹の子猫である。

 私はスマホを取り出すとその明かりを、うっすらと雪の積もった段ボール箱に向けてみた。

 子猫たちは箱の隅で身を寄せ合っており、数えると全部で五匹いた。そしてどれもが息をしていないように見えた。

 念のために手で触ってみると、どれもがずいぶん冷たくなっており、死んでからかなり時間が経っていることがわかった。

 心ない者に捨てられたのだろう。

 飼い主も捨てざるを得ない事情があり、誰か心優しい者に拾われることを期待したのかもしれない。

 ただこの寒さだ。

 誰にも救われないまま、小さな命の灯は数時間で消えてしまった。

――かわいそうに……。

 私は子猫たちの入った段ボール箱を抱えた。

 幸い我が家の庭は広い。

 埋めてやることぐらいはできる。

 死んだ猫に関わることは気持ちのいいものではないが、猫好きな私はそのままそこへ捨て置くことができなかった。

 翌朝。

 彼らを庭の隅に埋葬してやり、庭に咲いていた梅の花を折って手向けてやった。


 その夜から……。

 我が家で奇妙なことが起こり始めた。

 ソファーの上に置いていたクッションが手も触れないのに落ちたり、窓も開けてないのにカーテンが揺れたり、はたまた何かが足にまとわりつく感じがするのである。

 どうやらあの夜、あの子らの魂も一緒についてきたらしい。

 それも一匹ではないようだ。

 だがこういうのであれば何匹いても、私はいっこうにかまわない。持病の猫アレルギーを心配しなくてすむし、エサ代もかからない。

 それに何より身も心も癒されるんで……。


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― 新着の感想 ―
[一言] たくさんの猫ちゃんの霊に囲まれるのも、幸せかもしれませんね~。 私は猫派です。 ( *´艸`)
[良い点] 猫⁉ かわいいっ(ノ≧∀≦)ノ 怖くないけどほろっと、ほのぼのしていますのね。 付いてきましたのね。しかも五匹全員でしょうかな。かわいすぎます (T_T*)
[一言] 拝読しました。 作者の優しさが溢れ出るような温かなホラーでした。 だけど〜。 私的には、たとえ猫アレルギーでも、エサ代かかっても、やはりあったかな猫の毛皮が癒やしのもとと思います。
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