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小説の書き方

【コメディ小説の書き方編】もう、もう、先輩、恋愛相談じゃありません!

作者: 正城不落

(△)プロローグ:告白


「先輩――先輩、今日は、大事なお話があります」

「ああ」

 静まり返る教室の放課後。

 二人しかいない静けさの中で、気弱な私の精一杯の想いが、真剣な声音こわねに乗ってひびき渡った。

「こっ、これを見てください!」

 言葉に出すのは恥ずかしい。だから、こんなにもあふれて破裂しそうな心臓の高鳴りを、手紙にしたためて伝えることにしたのだ。

 どうしたら先輩に伝わるかな? ヘンなことを書いて嫌われたりしないかな?

 たくさん悩んで、色んなことを書こうと思ったけど、友達に見てもらったら何が言いたいのかよく分からないってショックを受けた。

 でも、今回は大丈夫なはず!

 こんな内容でいいのかなと心配に思うけど、私の中では一番シンプルで、最高の出来栄えのラブレターだった!


 だから先輩、私のこの気持ちを受け取って!


「ふむ…なるほど、そういうことか」

 先輩はラブレターの封筒ふうとうから中身を取り出すと、一瞬(なや)んだようにその文章を凝視し、そして、何かに思い至ったのか、なぜか私に内容が見えるように便せんを裏返した。

差出人(さしだしにん)不明のラブレターをもらって困っている…つまり君は、僕に恋愛相談をして欲しいのだろう?」


『好きです、付き合ってください!


         夏野香織さまへ』


「夏野香織(かおり)くん、僕は君のために精一杯協力しよう」


 し、し…失敗したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



(□)第1話:恋愛相談を受けたい先輩


「あはははははは、マジ受けるんですけど!?」

 笑っているのは、私のお友達のミヤビちゃん。

 ひ、ひどい、ちょっと先輩の名前と私の名前を間違えただけなのに、そんなに笑わなくてもいいと思うけど!

「でもよかったじゃん、今日の放課後も先輩と一緒に遊ぶ約束したんでしょ?」

 そう、そう、全部結果オーライだから、先輩と放課後にデートできると思えば、少しくらい告白して想いが伝わらなくても、良いことの方がたくさん! ほら、トータルで考えたらプラスだよ!

香織かおりは前向きだね。

 それ、実質タダで先輩とデートができるってこと?」

「………」

 昨日の告白の後、先輩は私の恋愛相談に乗るためという名目で、好きな人の好みや、普段していることことなど、私のことを根ほり葉ほり聞かれる羽目になった。


『男が好きなのか?』

『せ、先輩?』 

『好きなコーヒーは』

『こ、コーヒー? えっと』

『ふむ、ところで君は、メガネは好きかい』


 一体なんだったんだろう、あの時の先輩は。

 確かに、先輩はフレームが細い素敵なメガネをかけていて、ちょっとだけさわってみたいなと思うけど、そんなこと、とても先輩に伝えることはできないよ!

「根ほり葉ほり聞かれて…ふーん、そうなんだ。

 でもそれってさ、先輩も、香織かおりの個人情報に興味津々ってことなんじゃない?」

 やめて、ヘンに期待させるようなことは言わないで!

 今日は私がうっかり書いてしまったラブレターの持ち主を探しに行かなくちゃいけないんだから、そんなの絶対に見つかるはずないし、上手く誤魔化すいいわけを考えないといけないの!

「いけない、もう時間だから行ってくるね!」

「相変わらずヘンなこと考えるな香織かおりは…誤魔化す必要なんてないのに」


 ハナで笑ってる!? 全部、聞こえてるのに!?

 もう、もう、私は絶対にヘンなんかじゃないんだからね!!

 行ってくるね、ミヤビちゃん!



(□)第2話:手紙の送り主はどこ!?


「ふむ、まずはラブレターを君の下駄箱あたりに張り出したら、持ち主を捕まえられると思うのだが」

「や、やめましょう、先輩!」

 大変だ、先輩が暴走してヘンなことをしでかしてしまう前に、ラブレターのことを誤魔化す言い訳を考えないといけない。

「では、順当に聞き込みを開始するとしよう。

 昨日の君の話を聞く限り、手紙の持ち主の犯行推定時刻は昼休みから放課後にかけて。

 僕の友人の証言によると、人の出入りが激しい昼休みに誰かがラブレターを仕掛けていたといううわさは耳にしていないらしい。

 そうなると、午後の授業をサボる生徒や、人のいない時間を歩き回れる教員という線もある。

 ふむ、本命は放課後に手紙を仕掛けられたという線だが、まずは、そのことを確定させるために放課後までに不審な行動をしていた人間がいないかを聞き込みに回るとしよう」

 だめだ、先輩が見つかるはずがない事件の犯人を見つけようとしてる。だって、そのラブレター書いたのも渡したのもゼンブ私なんだし、犯行時刻は手紙を書いた一昨日おとといの夜から昨日きのうの放課後にかけてなんだよ。

 でも…そんなこと正直になんて言えないよ!

「ふむ、香織くんのその目…何か気になることがあるのかい?」

「ひゃい!?――そ、そうなんです!」

 やったぁ、先輩が私に話をパスしてくれた!

 チャンスなんだけど、どうしよう? 何か話をそらせる話題はないかな?

「その、先輩の!?」

「僕の?」

 そうだ…何をやっているんだろうね、わたし。

 先輩に、先輩に私の、私の想いを伝えないと!

 勇気を振り絞って、私は先輩の方に指をさした。

「私、先輩の!?「メガネ?」」

 違うよぉ!

 その銀縁のメガネは素敵ですけど、今は口を挟まないでください!

「だから、先輩なんです!!」

「先輩なんです?

 ふむ…なるほど、そういうことか」

 え、なんだろう、嫌な予感がする。

「君はこう言いたいのだろう?

 このラブレターを君に渡した犯人、それが――僕であると」

 そう告げると先輩は、私の手をにぎってくる。

香織かおりくん、僕は…君のことが好きだ」

「ひゃいっ!?」


 先輩!? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?――



(☆)最終話:後輩は告白がしたい


「あははははははっ、マジ受けるんですけど!?」

 違うの、ぜんぜん笑うところじゃないんだから!

 先輩は私のために、私に手紙を渡した誰かを見つけようとしてくれてたの!

「だから、先輩は香織かおりに自分よりも先に告白した誰かさんに喧嘩を吹っ掛けるつもりだったんでしょ?

 俺の香織かおりに手を出すなって、感じで」

 そ、そんないい声で言われても、ドキドキなんかしないんだから。

 先輩はやっぱり格好良かったって、私はそういう話がしたいの!

香織かおりは、先輩に好きだって言えた?」

「ひぃぃぃ!?」

 そんな大きな声で言わないでよ、先輩が聞いてたらどうするの!

「わかった、わかったって。

 …ということだから、今日は私も香織かおりについて行くね」

 それって隣で私を応援おうえんしてくれるってこと?

 つ、ついてきてもダメだよ!? 私、先輩に告白するの2回も失敗してるんだから!


 先輩に私から3回も告白する勇気なんて、もうこれっぽっちも残ってないんだからぁぁぁぁぁ!!――



(△)エピローグ:私も先輩のことが好きなんですけど!?


 次の瞬間、力強い両腕りょううでが、私の背中を包み込むようにきしめる。

「好きだよ、香織かおり

「ひゃいっ!?」

「ふむ、つまり、そういうことか。

 あの手紙を香織かおりくんに渡した犯人は、君だった――春野雅(はるのみやび)くん」

「先輩、私は香織かおりちゃんみたいに勇気もないし、先輩にみたいに男らしくないかもしれませんけど…香織かおりちゃんを好きな気持ちで負けるつもりはありません」

 ミヤビちゃん、どうして!?

「いや、君の勇気は見事だった。

 あのラブレターには、君のあふれんばかりの男気がすべて詰まっていたよ。

 初めてだった、あんなに胸をめ付けられる思いをしたのは」

 そ、そっか、先輩はそんな風に思ってくれてたんだ。

「つまり、僕と君との勝負ということだな?」

「はい、先輩なら、そういってくれると思っていました」


 何の勝負!? 勝負なんてしないんだよ!?

 私は――先輩のことが大好きなのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!





















<答え合わせ>

今回は、コメディ小説の書き方を説明する。

言い換えると、どうやって人を笑わせるのかの原理を説明する。


最初に事実を述べると、笑うこと自体は、笑った相手への挑発行為である。

動物園のサルはよく笑っているが、それは笑った相手を挑発している、つまり、自分の方が優勢で相手の方が劣勢であることを周囲にアピールしているのである。

人間の場合、難しい仕事をしていて、苦労の果てにそれが終わりそうだったら、笑うことがある。

つまり、サルと同じように、ついつい自分が優勢であることをアピールする原始的なくせがあり、だから、心に余裕がある時などの色々な瞬間に思わず笑ってしまうのだと推測される。


この仮説が正しいとすると、人は最初から笑いたいという欲求、食欲などと同じように持っているため、逆に言えば、笑わないとストレスが溜まってしまうのである。

そこで、コメディ小説では、普段はこんなことで笑ってはいけないと思う瞬間がたくさんあり、それによって笑えないことによるストレスを溜めているため、それを解消する場を提供することを目指している。


それでは、人を笑わせる方法を解説する。

まず前回、どうやったら物語の内容に読者が共感してくれるのかを解説し、その方法は、

仮に、

「ピンチの幼馴染」を状態A、「救われた幼馴染」を状態Bとすると、


・状態Aから状態Bに変化することを読者が予想できること


が必要であり、その上で、大きな共感を得たいとすると、


・状態Aと状態Bのギャップを大きくすること


が必要であると述べた。


このことを、今回の物語に当てはめて考えると

「告白できなくて不幸な香織」を状態A、「告白できるようになって幸せな香織」を状態Bとすると、

・「告白できなくて不幸な香織」から「告白できるようになって幸せな香織」に変化することを読者が予想できること

が大事であり、その上で、告白を邪魔する存在を描くことで、

・「告白できなくて不幸な香織」と「告白できるようになって幸せな香織」のギャップを大きくすること

このことに成功している。

よって、この物語で読者が笑うことは無くても、面白いと思えるように形は整っているのである。


この形式を守った上で、読者が笑えるようにするためには、「笑った方が賢い」と読者自身が思える状況を作る必要がある。

「笑った方が賢い」とは、逆に、笑ってはいけない状況を考えると分かりやすくて、笑って油断することで読者が不利益を被る場合、それは「笑わない方が賢い」状況であり、例えば、学校の授業中に笑うと教員から怒られるなど、考えられる。

それでは、「笑った方が賢い」状況をどうやって作るかというと、つまり、笑えば笑うほど利益を得られる状況を作ればいいのである。例えば、笑えば笑うほど、物語のキャラクターが強くなる状況が考えられる。

ジャンプコミックスに「ボボボーボ・ボーボボ」という作品があり、その中には「ハジケりょく」という概念が存在し、明確な説明は無かったが、読者の笑いを誘うような理不尽な言動をするほどボーボボの世界のキャラクターは強くなっていったように思える。

つまり、読者がその物語の中で、笑える瞬間に気づけば気づくほど、同時に、そのキャラクターが強いことに気が付くことができるため、読者は強いハジケ力を持つキャラクターが、どんなに凶悪な敵でも打ち倒すことができることを予想し、その予想通りに、笑えば笑うほど理不尽な敵を目の前から排除するという感覚を得られたはずである。


そこで、今回の物語で、「笑った方が賢い」と読者自身が思える状況をどのように作ったかを解説すると、


告白の成功を目指しているのに、ダメな行動を繰り返す主人公の香織に対して、


1.香織よりも優れた方法を思いつくことができる読者が優勢で、ダメな香織が劣勢であると判断できるようにして、これによって読者が笑って香織を挑発してもおかしくない状況を作り


2.香織ダメダメだなと、香織がダメだと思える瞬間を読者が見つけるたびに、だけど、そのおバカな行動によって、香織が先輩と幸せになれる未来に近づく状況を作ることで、


読者が気持ち良く笑える状況を作れる。


つまり、順番を言うと、

物語の中で香織がバカな行動をする

→読者がダメダメな香織の行動に気が付く

→読者は笑いたいので笑う

→読者が香織を笑えば笑うほど、香織が幸せに近づいていることに気が付いて、もっと笑いたくなる

この4つの手順の踏むための「1.」と「2.」の状況を、物語の中で用意することが、読者が気持ち良く笑えるコメディ小説を書く方法なのである。

(補足:

ここで大事なのは、読者にとって香織は笑う対象であると同時に、読者にとって幸せになって欲しい、強くなって欲しいと願う「推し」なのである。

この「推し」とは、読者の絶対的な味方のことである。なので、味方である「推し」が皆から褒められることをするほど、その逆に、「推し」の味方である読者自身も皆から褒められる存在だと感じる。

つまり、今回の物語の中の香織は、読者を裏切らない絶対的な味方として描いている。

例えば、香織の視点で文章を書くなどして、つまり、読者を香織の心を読める超能力者にすることで、香織の気持ちや次の行動を読者が予想できるように工夫して、香織は読者を裏切らない存在であることを読者に学習させているということである。)


なので、物語の作者は、笑いたいストレスを溜めている読者のために、笑えば笑うほど物語の中で読者が無双できる方法を考えて探す必要があるのだ。

(補足:

ここではコメディ小説のみを対象にしたが、もしも、ストレスの種類が笑い以外の欲求を満たすものである場合、例えば、食欲の場合は、キャラが食欲が満たされる瞬間を見れば見るほどキャラが幸せになる状況を物語で再現できればグルメ小説になり、キャラが性欲を満たす瞬間を見れば見るほどほどキャラが幸せになる状況を物語りで再現できれば官能小説を書くことができる。

同じように、

謎を解けば解くほどキャラが強くなったり幸せになるとミステリ小説、

幽霊などの超常現象に恐怖から逃げれば逃げるほど強くなったり幸せになるとホラー小説になる。

ただし、ホラー小説のように、あえて絶望感を描くために、最終的に超常現象に取り込まれて死ぬ場合もあり、その場合は、そのホラー小説の面白さとは、最強の怪物の誕生に読者が共感しているから面白いのである。

怖いもの見たさとは、最強の怪物が強くなっていき幸せになる様子が楽しいから、または、作者自身が読者を怖がらせてた死んでいる様子に共感して楽しんでいるなど挙げられるが、いずれにしても、誰かが幸せになる様子に共感して楽しんでいると思われる。)





最後に、


この物語は、


面白い物語の始め方と続け方と終わり方とタイトルの付け方

https://ncode.syosetu.com/n7330ie/


の応用編です。なので実際に活用したことが分かりやすいように書いてみました。


また、読者に物語の内容を共感させる方法について、


【応用編】サキュバスに魅了の魔法をもらったから困ってる幼馴染のために使うことにした

https://ncode.syosetu.com/n8233ie/


の中で詳しく説明しています。

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