決着と一瞬の出来事
皆さんどうも、ガクーンです。
この話を書いている途中に保存するのを忘れ、サイトを閉じそうになりました。
やはり、確認は重要ですね。
では、お楽しみください。
~エバン視点~
「凄い……」
漏れ出る言葉に気づかないまま、目の前で繰り広げられる戦闘に熱中していく。
今何回攻撃をした? 3回……いや、4回は突き刺しをしていたはずだ。
目では追えないほどの素早い攻撃。
サリアナは左手を腰につけ、独特なステップを踏みながら白銀の戦士へと攻め立てる。
手首のスナップにより繰り出される変幻自在の突き。そこへ腕の収縮運動が加わった瞬間に起こる、目にもとまらぬ速さの刺し攻撃。
そんな恐ろしいほど難易度の高い技を一瞬にして何度も繰り出すその技術は、称賛に価する程の価値がある。
エバンはサリアナから視線を外し、相対する相手。白銀の戦士へと目を向ける。
……相手も恐るべき実力の持ち主だ。
今は被り物のせいで素顔は明かされていないが、恐らく、名の知れた剣豪。
サリアナは究極の攻めに対し、白銀の戦士は後の先をいく、究極のカウンター型。
相手の攻撃を最小限の動きでかわし、防御への体制が間に合わない瞬間を狙う、隙を伺うスタイル。
もし、軽い攻撃を繰り出し、隙を見せたのならば、そこへ正確な一撃が飛んでくるだろう。
皆が見守る中、サリアナの攻撃は止むことを知らず、数分が経過する。
全力の私だったら何分……何秒持たせることが出来ただろう。
サリアナ様の突き刺し攻撃。白銀の戦士の正確無慈悲なカウンター。
どちらも恐ろしい技を持つ、圧倒的強者。
一向に勝負がつきそうにない二人の勝負をただ、真剣に観戦する。
「どうだ? 凄いだろ?」
「ガイル様……」
そこへ、体力を回復させたであろうガイルが近づいてくる。
アルス様はキルク王子の膝でゆっくりと寝ている。敵側もこちらに興味を無くしたようにあの二人の戦闘を見守っているからやる事が無くなってこちらへいらしたのだろう。
もちろん、辺りを警戒しながらいつ、どんな時でもアルスとキルクを守れる体勢を整えつつの行動。
まったく……この人には隙すら無いのか。
エバンはチラッとアルスへと目を向け、気持ちよさそうに寝ている事を確認する。
「サリアナは王国内じゃ敵なしの化け物だ。もちろん、俺が戦ったらいい勝負になるけどな」
……あのガイル様が勝てるとは断言しない相手。
サリアナの評価を最大にするエバン。
「そんなサリアナ相手にあそこまで張り合ってるあいつは何者だ?」
ガイルは怪訝な顔で白銀の戦士を見る。
それは私も思った事だ。
王国は広いようで狭い。
何処かで活躍した。または実力が認められでもしたら、簡単に名声が伴い始め、いつの間にか王国で名の知れた人物になる事が多い。
「……カウンター型の剣使い。サリアナといい勝負出来るぐらいってなると……」
エバンの脇でガイルが何やら考え込み始める。
私は王国内の強者の名前はおろか、まだ知らないことが多い。
「まだまだガイル様どころか、あの領域で渡り合うことすら遠い未来の話だな……」
エバンは薄っすら笑みを浮かべ、まだまだ自分より上がいる。自分はもっと先に行けると言わんばかりに闘志を燃やす。
そんなエバンがやる気に満ち溢れている時……
ワァー!
相手側から歓声が上がる。
な、なんだ?
エバンは突然の事に驚きながら、戦闘中の二人に注目する。
「あ、あれは……」
エバンが白銀の戦士、サリアナという順番で姿を確認した時、サリアナにある異変が起こっている事に気が付く。
サリアナ様の顔に傷が……
つぅ……
「……血なんて久しぶりに流したよ」
右頬に斜めに入った線にそり、血が玉の様に吹き出て、地面へとポタポタ滴る。
垂れた血を見ながらサリアナは傷ついた箇所へと手をのばし、斜めに入った傷に沿ってスライドさせるように血を拭きとると、それを見て、ニコッと笑みを浮かべる。
「……笑ってる?」
エバンはサリアナの変化に戸惑う。
「あいつ。やっちまったな」
すると、そのサリアナの変化を見て、あちゃーっといった様子で天を仰ぐガイル。
「やってしまった……とは?」
その言葉に食いつくエバン。
「そのまんまの意味さ」
ガイル様は憐みの目で白銀の戦士を見ていた。あれは何というか、白銀の戦士がサリアナ様を怒らせてしまったというような。
外野の事は露知らず、白銀の戦士はサリアナへと視線を合わし。
「……すぐに大量の血を見る事になる」
挑戦的な言葉を突きつける。
「へぇ……それは楽しみだ」
白銀の戦士の一言に更に好戦的な笑みを深めるサリアナ。
「じゃあ、もうちょっと本気。見せないとね」
サリアナが意味深な言葉を吐いた瞬間。
ブワァー!
圧倒的、死のオーラを漂わせた圧が、サリアナからあふれ出す。
「な……」
言葉にならないエバン。
息が詰まる……
それは敵も同様で、皆、硬直したまま動けなくなっていた。
「ほら、言っただろ?」
ガイルは相手に同情した顔で言葉を漏らす。
「ああなったサリアナはもう止まらない」
サリアナはスッと顔に張り付いていた笑みを消し去り、不自然な程深く、腰を落とす。
「この技はまだ、両手で数えるぐらいしか使った事無いんだ」
そして、レイピアを持つ腕を引き、レイピアと目線が同じ高さになる。
この場にいる全員の視線がサリアナに集まる。
独特な体制でレイピアを向けるサリアナと、一向に構えを崩さない白銀の戦士。
……次の一瞬で決まる。
誰もがそう予感する中……
「いくよ?」
最後の予告がなされる。
無言のままの白銀の戦士。
サリアナは無言を肯定の意味として受け取り、レイピアを長年追求してきてやっと完成させた大技。
「頑張って生き残ってね……」
この技を受けて生き延びた者はまだいない、究極の一撃を白銀の戦士へと……
「……え?」
ぶつけた。
さ、サリアナ様が……ブレた?
エバンの目には一瞬、サリアナの像が3つに増えたかのように見えたのだが、気づいたら消えていた。
ど、何処に……
信じられないモノを見たかのようにその場を右に左にと視線を向けるエバン。
サリアナ様は……あ。
エバンの視線の先には、視界から消え去ったはずのサリアナ。
そんなサリアナをようやく発見したエバンはそこで、恐るべき光景を目の当たりにする。
「嘘だろ……」
誰かが呟く。
皆が注目する先には、至近距離で相対するサリアナと白銀の戦士の姿。
「グフッ……」
そして、膝をつきながら脇腹を抑える白銀の戦士と、勝者の様にその場に立ち尽くすサリアナの姿があった。
……サリアナ様の勝利だ!
二人の格好から、サリアナが勝者だと確信したエバンは恐る恐るサリアナへと足を進めようとしたその時。
「待て」
エバンを制止する、ガイルの声が響く。
「何かがおかしい」
「はい?」
サリアナ様は白銀の戦士に勝った。これの何がおかしいんだ?
エバンはガイルのいう事がさっぱり分からず。
「おかしいとは……一体?」
「あいつは……白銀の戦士は何故、サリアナと戦ったんだ?」
「サリアナ様と……ですか?」
ガイル様とサリアナ様、二人と戦闘するのが危険だからじゃないのか?
相手は20人近い数。しかし、騎士団隊長である二人相手にその数をぶつけても勝てる可能性は限りなく小さいと白銀の戦士は考えた。
エバンはこう、自分の中で結論付け、ガイルに話す。
「俺も最初はそう考えた。でも何かがおかしいんだ。良く考えてみろ、相手の目的はなんだ?」
「私達に勝つ事では……」
「それは過程であって、目的ではない。あいつらの目的……」
ガイルが考えを話す中、エバンの視界にある人物が映る。
……アルス様?
突如、寝ていたはずのアルスが起き上がる。
もう少し休んでおかれた方がいいのでは……
そして、ある地点へ顔を向けたアルスは顔色を変え、キルクを守るかのように押し倒しながら覆いかぶさる。
「あ、アルス様?」
その行動に驚きを隠せない様子のエバンに……
「それは……」
ガイルが一番重要な話の部分をしようとし……
「キルク王子の……」
途中まで言いかけた次の瞬間。
「ぐあっ……」
「あ、アルス……?」
視界の端にいたアルスが苦悶の表情を浮かべ。
「……は?」
予想外の出来事に思考が停止し、それと同時に……
「殺害だ」
ガイルが大事な事を話し終える。
お読みいただきありがとうございました。
この話が面白いと思って頂けたら、高評価等をしていただけると嬉しいです。
では、また次回お会いしましょう。




