将軍職兼務の王太子
お父様はいつものように優しく抱き上げ、どうしたロゼ?と背中をトントンしてくれる。
私は涙をゴシゴシゴシゴシ手で拭い、必死で笑顔を作ろうとする。
「あぁ目を擦ってはいけないよ」お父様のハンカチで丁寧に涙を拭われ、ロゼは泣き顔も可愛いねと抱きしめられる。
「ロゼ、久しぶりだろう?覚えるかい?イスタニア王国の王太子ランスロット様だよ。」
ひゃっ?この傾国の美しい騎士が王太子?!
「ごきげんよう、ロゼレッタでございましゅ…」
噛んだ……
9歳児の滑舌の悪さよ!
そんな私に微笑む殿下の美しいことといったら、もう!もう!眼福ですわ!
傾国の美しき王太子は、お父様と次に会う約束をし、武器屋の外に繋いでいた愛馬で王都に帰って行った。
「はぁ〜なんだか威厳というか、オーラがある方でしたわね」
さすが王太子……
「ああ、ランスはこの国の軍を率いる将軍でもあられる方だからね。」
「はっ??」
「将軍職兼王太子といったところだな……まぁいずれ王太子殿下が国王陛下になったら、将軍職は誰かに任せることになるだろう。でもそれはまだ先の話だ。」
お父様っ!何気にさらっと爆弾発言!
将軍職は国家防衛の最高位!
もちろん、王太子は次期国王ですよっ!?
この国は有事の際に王太子殿下が最前線で指揮をとって戦うの??
「ロゼ?どうした?…そんな難しい顔をして」
お父様が心配そうに私の顔を覗き込むので、なんとか誤魔化す。
ヘタなことを言って怪しまれたりしないようにしなくちゃ……
「いえ、昨夜マリさんから王太子殿下の噂を聞いたので……」
「へぇ、どんな噂かな?」
「お妃様選びのためにお城で舞踏会を開いてるっていうお話しですわ……なかなか婚約者を決めないのだとか…」
「そう…確かにまだ婚約者は居ないんだ。…ロゼもお城の舞踏会に行きたいかい?」
ニッコリ笑うお父様が眩しくてモジモジしてしまう。
「お父様とダンスできるなら、行きたいですわ!亅
私もだよ。ではロゼに似合うドレスも見に行こう…と再びギュッと抱きしめられる。
斯くして武器屋の前でお父様とイチャイチャタイムを終わらせ、ようやく武器屋に入る。
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