転生先での生活は♡その1
医師の診察の結果、身体に問題はないと太鼓判を押されたが、記憶が曖昧で挙動不審な私をたいそう心配したメイドのマリさんと父親と名乗る赤髪の美青年ミシェルが、常に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
今は、メイドのマリさんに湯浴みと食事の手伝いをされながら、7日間、意識不明になった経緯を説明された。
どうやら、私は流行り病で寝込んでいたらしいが、メイドが目を離したすきに部屋から出てしまい、階段から転落していたそうだ。大きな外傷はなかったものの7日間も意識不明だったらしい。
その上、覚醒してから、記憶が曖昧で、いつもと様子が違う私を見て最初は二人とも悲痛な表情を浮かべていたが、日に日に元気を取り戻す私をみて、いずれ記憶も戻るだろうと温かく見守られるようになって行った。
「ロゼ、無理に思い出さなくていいんだ。先ずは沢山食べて、ゆっくり休みなさい…体調が戻ったら、外にも出よう。」
優しく微笑む美青年……いや、お父様!!
いや、ロゼレッタの記憶は戻らないんだけどね?
だって私は、ロゼじゃない…侯爵令嬢アンジェ19歳だった。
第三王子の婚約者候補者として10年に渡り妃教育を受け、ようやく正式の婚約したばかり…からの婚約破棄……からの馬車の事故だと思う。
アンジェの記憶なら鮮明にあるのに。
馬車の事故にあい、死んだのかな?ロゼレッタに憑依?転生?う〜ん神様、分かりませんわ。……この状況、誰か?神様?………解説して下さい??
ロゼレッタの情報を整理すると、どうやら数日前に母親が亡くなり、家族はお父様と二人きり。
私、ロゼレッタは、まだ9歳の女の子!!
いきなり、10年若返りましたわ!
白金のサラサラな髪にエメラルドグリーンの瞳、愛らしい整った天使の様な顔立ち…
キャ〜これだけ見れば、もう!最高に可愛らしい美少女ですわ~将来が楽しみ!
フフフフフフ……♪
……なんて喜んでばかり居られませんわ……
この先、どう振る舞えば良いのでしょう?
しばらくは、安静を言い渡されていましたが、ようやく屋敷内であれば、マリさんと一緒に散策しても良いとお父様から許可を頂いたので、食事が終わると早速マリさんに案内してもらう。
私ことアンジェが住んでいた侯爵家に比べると小ぢんまりした屋敷内の部屋は何処も明るく、上品ながら可愛らしい雰囲気が漂う。どうやら、調度品などは、亡くなった母親の趣味らしい。
ホール中央に飾られた家族3人の肖像画を見ると、そこには美しいロゼレッタによく似た女性が描かれていた。「こちらの女性が私のお母様…」私の呟きにマリさんが少し哀しそうな笑顔で応える。
「とても聡明でお美しい奥様でした。ご家族との仲も良くて……」と言葉を詰まらせる。
あ〜こんな超絶美少女ロゼレッタとお優しいお父様を残して亡くなるなんて…!!
一通り屋敷内を案内してもらい、最後にお父様の執務室に案内してもらう。
丁度その時、部屋から執事のオズワルドさんが出て来た。
「ロゼレッタ様!もうお加減はよろしいのですか?旦那様も丁度今、ロゼレッタ様にお会いしたいと……」オズワルドさんの話しが終わる前に麗しいお姿が!
「ロゼ!」お父様が少し慌てて部屋から出て来て私を抱きあげると執務室に入る。
「手が冷たいのではないか?外はまだ雪が降っているんだ屋敷内とはいえ、もう少し厚着をしなさい。」
お父様の上着を掛けられながら抱っこされたまま暖炉の前の椅子に座る。優しく髪を撫でながら、微笑むお父様、んふふふ…眼福ですわ〜♡
う〜ん、生きてて良かった~!!
いや、死んだんだったかな?
─とにかく転生して良かったですわ♡