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第12話 花火と爆弾

「どのツラ下げて戻って来たんだ」


 マルコが真っ先に電動車椅子で駆け寄った。このときすでに、僅かにいた爆破に巻き込まれた遺族や、その知り合いが泣き声を上げながらダニー・モーレイを批難した。


「待ってくれよ。あれは事故だったんだ。俺には俺のやるべきことがあって、ああいう結果になった」


「ふざけるな。あれのおかげでほとんどのレーサーが負傷した。おまけに、あのアンヌ・フローラのお嬢さんが非常事態宣言だぞ。公開処刑になった方がまだ格好がつくってもんだ」


「おいおい、マルコヴィッチが珍しく正当なことを言いやがる。問題は、あの爆弾を誰が用意したかってこった」


「はぁ? あのマシンを運転してたのはお前らだろ。シラを切る気か」


 マルコが車椅子でなければすでに何発のパンチが飛んでいただろうか。俺もこのときばかりは感情的になっていた。


「おい、何が言いたいんだ。仲間を殺して言い逃れできるとでも思ってるのか? 今すぐ匿名の通報でシャルフを呼んでもいいんだぜ」


 ダニー・モーレイは突然、泣き寝入りのような顔をくしゃくしゃにして俺にしがみついた。


「あんたなら、分かってくれるはずだ。俺は花火を積んだはずだった。ところがいざ切り離してみると爆弾じゃねぇか。誰かが花火と爆弾をすり替えたんだよ」


 俺は捕まれた腕を振りほどいた。


「どういう意味だよ」


 歯ぎしりで歯が痛んだ。


「俺は、あの人に認められたくて、レースで花火を上げるつもりだった」


「あの人ってまさか」


「あんたの尊敬するイザークさんだよ。あの人の手引きで俺たちと残りの生き残ったレーサーは下層階に帰ってこられた」


 イザーク・ヴァイグルは下層階の革命グループ『ブラオレヴォル』のリーダーだ。


「イザークはどこまでお前の計画を知っていたんだ?」


 ダニー・モーレイは妙に優しい口調で、情けないという顔をした。


「全部さ。花火のことは言わなかったが。レースでいいもの見せてやると言っといた。そしたら、脱出の手引きをしてくれると約束してくれた」


「あの人は派手好きだから、上層階で派手な行動をすれば認めてくれるのはお前も知ってるだろ? 俺は被害も考えて花火にしたんだ。そしたらよ、誰かが爆弾にすり替えやがった」


 俺はダニー・モーレイの話を半ば信じていなかった。こいつは上層階にこびるような男だ。それなのに、今更革命グループに入りたいとは信じ難い。もしこいつの話が本当なら俺はイザークに裏切られたような気もした。


「イザークは俺には何も言わなかったぞ」


「なら、信用されてないんだろ。というより、イザークさんに敬語を使え。まあ、あんたらの救出手引きもあったとは思うが。あんたらこそ、上層階でどこにいて、どうやって帰ってきたんだ?」


 俺はダニー・モーレイにつかみかかった。マルコがやっちまえと俺を何故か殴るが、俺は震える手を何とか抑えて離してやった。


「今日イザークに聞く」


「あー、俺も同行させてもらえねぇかな。そのあんたとイザークがやってる秘密のバイトとやらに」


「お前なんか入れてくれるかよ」と、マルコが呟くが、俺は否定できなかった。


「いつも参加するのは数人だ。今日は定員が埋まってる。あんたをグループに入れるならイザークの方から来てくれと連絡があるだろう」


 その後、店に残っていた連中にダニー・モーレイは手を取り合うそぶりまで見せて謝って回った。息子をレースで亡くしてやけ酒を煽っていた老婆に握手を求めたときは、平手で張り倒されていた。ざまあみろ。


「うさんくさいよな。あんな反省してるの見たことないわ俺」


 マルコが言うのも最もだ。


「ところでお前のマシンに乗ってた人間はどうなんだ。あいつが爆弾とすり替えたってのが一番怪しいんじゃないのか?」


 ダニー・モーレイは首を振ってため息をつく。


「あいつは俺の従兄だ。あいつは裏の世界を駆け上がり、上層階の人間と上手くコネをつかって上層階に住まわせてもらったのさ。レース後は上層階の別荘にとんずら。偽の証明書で暮らしてるから上層階で捕まることもない。まさにリッチな暮らしと自由な暮らし両方を手に入れた男なのさ」


 マルコが噴いた。


「従兄はすごいがお前はだめだめじゃねぇか」


「そう言うな。俺は下層階のまずい缶詰食ってる方が合ってる。あっちのクローンレタスはべとべとした舌触りに感じるのは俺だけかね?」


 ダニー・モーレイは俺たちの食いかけのつまみを拝借して代金は払わず帰っていった。打ち解けたわけではないが、ダニー・モーレイにしてはみなに謝罪して回ったりと今日はおかしな深夜だ。



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