第4章「闇の奥の光」2
「……はぁ」
雪が本格的に降り始め、だんだんと白に染まりゆく《神輿街》。
その繁華街からやや外れた郊外の、その更に人通りの少ない路地裏を燐は肩を落としながら歩いていた。彼の心にのしかかるのはただ自分を置き去りにして姿を消した謎の少女・祀のことである。どうして彼女が自分の前から去ってしまったのか燐にはわからず、ただただ意気消沈するばかりだ。
「どうしてなんだ祀……」
「神宮祀がどうしたって?」
すると背後から声が若い男の声がし、燐は振り返る。
天から絶え間なく降り続ける雪、生ゴミがぶち込まれた臭いポリバケツ、違法駐輪らしい錆びた自転車、縦横無尽に張り巡らされた配管などが織りなす混沌とした薄暗い路地裏のその奥に誰かのシルエットがあり、燐はわずかに目を細める。そこに立っていたのは破戒僧(?)であった。
年齢は燐と同じくらいだが身長はややあちらの方が高く、細身だが鍛えられた身体付きだ。肌は浅黒く、赤味がかった髪はツンツンに逆立って威圧感があり、目つきも鋭い上おまけにピアスもしている。それだけ見ると怖いお兄さんだが、黒を基調とした着物と半袈裟、数珠で繋がれた茶色と黄色の碁盤目模様の袈裟っぽいマントからお寺の坊さんだとわかる。
バックルが金の高級皮革っぽいベルトや蹴られると痛そうなスパイク付きのレザーブーツなど中々パンクな印象を受けるが、燐や祀を初めとしてやたらとこの街に多い宗教関係者は普段着も兼ねているのでこういう格好をしていても別に珍しくもないが。
「突然《灰鬼》の反応が生じたと思ったらすぐに消えて、何事かと現場に来てみたらまさかここに居たとはな」
「誰だ……?」
燐は目の前の怪しげな男をじっと睨むが、対するパンク坊主は小さく肩を竦めてそれを躱した。ファンキーな見た目に反して安い挑発には乗らないクレバーなタイプらしい。
「まずはこっちの質問に答えろ……って言いてェトコだがまぁいいさ。俺は大黒寺大慈。お前と同じ《葬装者》だよ。よろしくな」
パンク坊主こと大黒寺大慈は警戒心むき出しの燐を宥めるように、気さくに名前を名乗る。そういえば《大黒寺》という名前には聞き覚えがあるが、巨大な阿吽の金剛力士像が目印のお寺だったか。燐の住む《境界神社》からそう遠くはなく、それなりに名の知れた場所だった筈だ。もしかしたらその寺の住職の息子なのかもしれない。しかしそれ以上に燐が気になったのは彼が名乗った《葬装者》という肩書だ。
「《葬装者》……やっぱり俺や祀以外にも居るのな」
「当たり前だ。世界中に《葬装者》は存在するが特にこの街には多い。気を付けたほうが良いぜ? いつ襲われるかわかんねぇからな」
「……それが今か?」
「わかってるじゃねぇか。幽鬼守燐」
「……なんで俺の名前を知ってるんだ?」
ケラケラと愉快げに笑う大慈に燐は僅かに語気を強める。燐は自分の名前をまだ名乗ってはいないが、相手がこちらの素性を把握して接近している以上、確実にロクなことにはならない。燐は更に警戒心を強め、後ずさることで相手からわずかに距離を取る。しかし大慈は強めに足元をブーツの底で蹴りつけ、その動きを牽制した。
「上からの命令でな、テメェは標的なんだよ。神宮祀と関係している重要参考人ってことでな」
大慈が出した祀の名前に燐は肩を震わせた。
「祀が何をしたって言うんだよ!? まるで犯罪者みたいに……あの子はアンタと同じ《葬装者》だよ、人々を守るために《灰鬼》と戦ってる……そんな強くて優しい子だ。それなのに何で彼女を追う?」
「犯罪者、ねぇ……ある意味そっちの方がまだ救いようがあるぜマジで。あの女はそれよりもっとヤベェ爆弾抱えてるぞ」
大慈は大きく溜息を付き、後頭部をボリボリと掻く。やれやれとでも言いたげな態度だ。
「……まぁとにかくだ。神宮祀の居場所を話せ。痛い目に遭いたくなけりゃな」
「もし仮に俺が祀の居場所をお前に伝えたとして、お前はその後あの子をどうするつもりだ?」
「さて、ね。もうあんな状態じゃ助かる見込みは無いだろ。最悪俺たちの手で直接……」
「……殺すのか?」
「……そうだ」
一瞬詰まった大慈の返答はあまりにも理不尽であり、燐はカッと頭に血が昇った。何故何の落ち度もない祀の命が奪われなければならないのか、燐は一方的な相手の言い分に激昂しそうになる。しかし相手に向けるべきなのはそんな言葉ではない。目の前の敵はあらゆる手段を使って彼女の命を狙うだろう。であればこちらも武力行使でそれを止めるしかない。ならばやることはただひとつだ。考えるよりも早く燐の身体は動き出し、大慈もそれに反応して好戦的な笑みを浮かべる。
「わかんねぇな……何故そんなにあの女に固執する? 庇ってやるほど大切な存在か?」
「確かにあの子とは昨晩出会ったばかりだよ。ついさっきデートしてたけど勝手にどっか行っちゃったしな……でもだからって祀を見捨てる理由にはならない」
「そうかい……割と好きだぜ、そういう一途なバカはよ。ただまぁ立場がそれを許しちゃくれねェがな」
燐と大慈が真正面から睨み合い、路地裏の空気が一瞬で張り詰める。
路地裏の光景が一瞬ぐにゃりと歪み、空気の流れが変わる。この感覚はさっき《灰鬼》と戦った時にも感じたものだ。
「空間が変わった?」
「ここら一帯の空間を切り取ったんだよ。これで俺たちの戦いで周囲に被害を与えることもないし外部からの干渉も防ぐ。《葬装機》の基本機能だ覚えとけ」
「そりゃありがたい」
互いの視線が交錯し、緊張感が電流のような痺れを伴ってお互いの全身を走った。しかし燐は目の前の強敵に竦むことなく、力強く一歩足を踏み出す。もう既に覚悟は決まっていた。
《葬装者》。燐の脳裏に浮かぶのは昨晩、参道の途中で《灰鬼》に自分と祀が殺されるイメージだ。目の前が真っ暗になり、極寒の奈落へ意識が堕ちていく感覚は今でもはっきりと覚えている。しかし彼がその真っ暗で寒い奈落の底に堕ちた自分の前に暖かで眩い光が溢れ出すのを確かに目の辺りにしたのだ。それを目指して進んでいくといつの間にか意識は戻っていて《灰鬼》もどこかに消えていた。その時と同じ熱が己の内側から発せられているのを燐ははっきりと自覚する。
であれば、後は自分の心に従えばいい。
自ずと身体は動き出し、その力は発現する。
「《葬装機》・《紅蓮煌火》起動! 《憑依装着》・《幽鬼》!」
爆音が轟き、薄暗い闇を光が塗りつぶし、冷たい風が熱風に呑み込まれ、降り積もる雪が一瞬で蒸発する。
燐は胸に生じた閃光に右手を突っ込ませると、たちまち全身を青い炎が包み、やがて紅蓮に変わる。そして紅の炎は渦を巻き、掲げた右手に収束すると瞬く間に長大な大剣へと変貌した。そして燐は間髪を入れず、《紅蓮煌火》の切っ先を目の前の敵に突き付ける。
「いいねいいねェ、そう来なくっちゃな。でなけりゃつまんねェ」
対する大慈は余裕の笑みでそれを迎え入れた。決してこちらを油断させる演技や虚仮威しではないその好戦的な笑顔に燐は警戒を強めた。寧ろ目の前の敵は戦いを楽しもうとすらしている。となると相応の力を相手は有しているということだが、燐は気圧されずに立ち向かう。
「《葬装機》・《吉祥神三叉槍》起動! 《憑依装着》・《大自在天》ッ!」
同じく大慈の全身が青い炎で燃え上がり、やがて右手に炎が集まって一本の三叉槍と成す。そして大慈はそれをクルクルとバトンのように回転させ、燐の前にぴたりと突きつけた。彼我の距離は一〇メートルほどだが、相手の得物が長柄であることを踏まえるとやや心もとない距離である。おそらく最初から相手は遠すぎず、近すぎない、最も自分が有利に戦える距離を維持していたようだ。しかし燐は特に意に介さず、静かに剣を構える。ならば槍が効果を発揮できないほど密接すればいいだけだ。
「はあああああああッ!」
燐は地面を蹴ると同時に《紅蓮煌火》から炎を一気に噴き出し、ロケットのような推力を生み出すことでその勢いのまま真っ直ぐ相手の方へ突っ込んでいく。
「おおっ、はえーなオイ」
対する大慈は目前に迫る大剣を《吉祥神三叉槍》で受け止めるが、燐の大剣の勢いは殺しきれず、そのまま吹き飛ばされてしまう……ように見えたがそうではなかった。大慈は燐の放った攻撃の衝撃を利用して跳ぶことで相手から距離を取ったのだ。そして三角飛びの要領で壁を駆け上がり、燐の視界から逃れると燐は姿を消した敵を探す。しかし薄暗く障害物の多い路地裏は相手の姿を捉えにくい。燐は出来るだけ死角を潰そうと壁に身を寄せるが、
「上か!」
異変を感じ、咄嗟に真上を確認すると大慈が三叉槍を突き出しながら高速で迫っていた。燐は慌てて横合いに転がり、穂先をすんでのところで回避する。しかし攻撃を外した大慈はすぐさま《吉祥神三叉槍》を手元に寄せ、追撃に切り替える。
繰り出されるのは神速の乱れ突きだ。あまりの速さで残像すら生じるその技はとても目で見て回避できるものではなく、燐は地面を蹴って真後ろに跳ぶ形でなんとかやり過ごす。
距離を詰めても相手の巧みな槍捌きの技量の前では太刀打ちできず、こんな重い大剣では反撃をする余裕すら無い。であれば距離を詰めるのではなく、その逆の選択をするだけだ。
燐は《紅蓮煌火》のバーニアで大慈から距離を取り、空中で身を捻って相手と向かい合う。お互いに斬撃や刺突による攻撃は出来ないほどの距離であり、ただの仕切り直しだろうか。
いや、それも違う。燐は《紅蓮煌火》の切っ先を大慈に向け、グリップの基部にあるトリガーを引くと切っ先に光が集まって複数の弾丸となり、それらが高速で発射された。数は三つ、それぞれが相手の退路を塞ぐ形で配置されており、回避を選んでも必ずどれかは当たる軌道になっている。
対して大慈は眉一つ動かさず、真正面から燐の放った光弾に立ち向かう。彼はただシンプルに両手で《吉祥神三叉槍》を巧みに操り、高速でプロペラのように回転させることでそれらを防ぎ切った。
「ただの槍だと思うんじゃねぇぞ、飛び道具はこっちにだってあるからよ!」
「何っ!?」
大慈はクルクルと槍を回して弄び、勢いをつけてその三叉の切っ先を燐に向ける。直後、閃光が燐の視界を覆った。槍の先から放たれたのは三本の太い光軸だ。莫大な熱量を秘めたそれらは周囲の雪を一瞬で蒸発させ、水蒸気爆発を伴いながら燐のもとへ迫る。燐は咄嗟に《紅蓮煌火》のブレードの側面でそれを受け止めるが、その破壊力を殺し切るには至らず、そのまま吹き飛ばされてしまう。硬いアスファルトをゴロゴロと転がり、雪に大きな跡を作っていくが、大慈は容赦なく連続して砲撃をぶち込む。燐は膝を着いたままその場で砲撃をガードするが、その全てを切り払うことは出来ず、被弾した。
「ぐわっ!」
熱と衝撃があり、身体を確認すると脇腹が僅かに抉れていた。しかし内蔵の露出や出血の代わりに青い光が漏れ出しているだけで特に大きな痛みも無い。
「そんなビビんなくても《葬装者》は《霊子》に変換された肉体にダメージ受けたところで死にはしねぇよ。《葬装機》の内部にある《霊核》が本体だからな。手足を吹っ飛ばそうが《霊核》さえ無事なら肉体が再構築されるし、だから容赦なく攻撃できるって訳だ」
「くそっ!」
燐は抉れた脇腹を左手で抑えながら急いで立ち上がり、飛んできた光弾を弾いていくがじわじわと追い詰められていく。近距離も遠距離も大慈の方が有利で、破壊力も手数でもあちらには敵わない。燐はギリギリのところで相手の攻撃を躱しつつ、次の一手を考える。とにかく少しでも時間が欲しかったが相手の攻撃がそれを許さない。次々に繰り出される砲撃や槍の刺突に少しずつ消耗させられる。しかし燐の視界の端にあるものが入り、彼は咄嗟にそれを蹴り上げ、大剣で斬りつけた。燐が見つけたものは消火器のボンベだ。高熱のブレードであっさりと焼き切られたそれは瞬間的に爆発し、相手の視界を煙で覆う。
「ちっ!」
大慈は小さく舌打ちし、煙に紛れた燐の気配を探ろうとした。しかし彼がその姿を捉えるよりも早く燐は反撃を開始する。大慈は煙を切り裂いて横合いから迫る大剣をすんでのところで躱した。しかし燐はそれを見越しており、大きく振り抜いたことで生じたパワーをそのまま利用し、更にもう一度斬撃を繰り出した。大慈はすぐさまバックステップで斬撃を回避しようとするが、凄まじい破壊力を内包したその一撃は余波だけでも相応の威力があるようで、僅かに衣服が焼き焦げる。燐は大慈がバランスを崩した一瞬を見逃さず、更に連撃を叩き込まんと踏み込んだ。しかし大慈もすぐに身を捻り、体勢を取り直すと振り下ろされた大剣を槍で防いでいく。そうして織りなされる剣戟はまるで舞踊のようだった。
刃と刃がぶつかり合う度に乾いた炸裂音と火花が散り、雪に反射してプリズムのように煌めく。高速で繰り出される互いの攻撃はぶつかり合うごとにそのスピードを増していく。
面白くなってきた、と大慈は高揚感を実感する。燐は《葬装機》の扱いはまだまだ未熟で経験値も無いに等しいがそれでも根気で追い縋ってくる上センス自体はかなりのものがある。ならば今彼が出せる限界はどこまでなのか、それを見極めたくなり大慈も本気を出す。
「オラッ!」
「くっ!」
《吉祥神三叉槍》を下から上に振り上げ、燐の《紅蓮煌火》を弾き飛ばし、無防備な胴体目掛けて三叉槍をそのまま横薙ぎに振るう。燐は咄嗟に飛び退き、ギリギリで回避するが、バランスを崩したところを続けざまに刺突で狙う。なんとかバランスを取り戻した燐も紙一重で《紅蓮煌火》を構えガードするが、穂先が密着した状態で大慈はビームを発射し、燐の身体は思い切り吹き飛ばされて地面を転がる。更に大慈は続けざまにオマケの光線を一発撃ち、燐の右目を吹き飛ばした。
「ぐあああああッ!」
「勿論欠損箇所が増えて体内から漏れ出す《霊子》の量が増えていけば《葬装機》を稼働させるエネルギーも不足して自動的に《憑依解除》される……まだ《憑依装着》を維持しているようだがじきにそれも解除されるよ。諦めな」
燐は右目を抑えて《霊子》の流出をせき止めながらぜぇぜぇと息を切らす。
今にも意識が遠のきそうで、身体に力が入らないが、大分ダメージを受けたことで消耗してしまったようだ。地面に刺して身体の支えにしている《紅蓮煌火》の輝きも弱くなっているし、大分限界は近いだろう。燐はなんとか踏ん張り、立ち上がろうとするがすぐに膝を着いてしまう。
(駄目なのか……!)
自分の無力が悔しく、燐は唇を噛む。祀に置き去りにされたから自分には力があるということを証明したかったのにこうして大慈に襲われ、一矢報いることも出来ずに無様に地面に這いつくばっている。誰がどう見ても勝敗は明らかで、ここから逆転をするとっておきの手段などいくら考えても思いつかない。
もう諦めろ、と自分の中で声がした。お前は何をしたところで無駄だと。そうだな、と燐も自嘲気味に口端を上げる。
「チッ……これで終いか。もっと楽しめると思ったが案外あっけなかったな」
大慈は苛立たしげに首を捻ってポキポキと音を鳴らし、気だるげに《吉祥神三叉槍》の穂先を燐の胸に向ける。後は彼が三叉槍のトリガーを引けばそれでこの戦いは終わるだろう。そうなれば燐は相手に身柄を捕えられ、祀の身に危険が迫り、その命は奪われる。それをわかっていながらやはり身体は重りでも付けられているかのようにぴくりとも動かなかった。
(でも……)
それでも燐は自分の中に宿る熱がまだ冷めていないことを自覚していた。まるで灰に埋もれた火種のように、それは闇の中でも未だに煌々と輝きを放っている。それが完全に消え失せない限りは敗北を認める理由にはならないだろう。
自嘲気味だった燐の笑みが別の意味に変わる。
右手が握る《紅蓮煌火》が光を取り戻し、動かなかった身体に力が漲り始め、覚束なかった意識もクリアになっていく。
(まだいける……!)
「……なんだ?」
その時、燐の気配が一気に変わるのを大慈は目の当たりにする。
大剣を支えにして立ち上がった燐を中心にして熱気が生じ、周辺の雪を溶かして大慈の肌を炙っていく。異変はそれだけに収まらず、どこからか大量の火の粉が舞い始めた。大慈はわずかに息を呑み、目の前の少年の動きに注目する。肩で息をし、全身ボロボロの燐は立っているのもやっとなほど弱っているように見える。しかしその目の中に映る闘志は力強く、消えることはない。彼の全身からかなりの熱量が発せられているのか、蜃気楼が生じて景色が歪む。
「おいおいヤベェな……なんだこの《霊子》の増加量? 二倍、三倍……もっと増えていくだと?」
燐の身体から放出される《霊子》の量が一気に増大し、それが余剰エネルギーとなって周囲に放出されている。こんな数値、普通ではありえない。燐が握っている《紅蓮煌火》も刀身が赤熱化し、煌々と輝いているが、未だその輝きはより強くなっていく。
本来であれば有り得ない、警戒すべき異常事態だった。
しかし大慈は寧ろ高揚感と期待感で思わず笑みを浮かべた。
「いいね……これなら俺も本気を出せる! 行くぞ!!」
大慈もそれに応じ、《吉祥神三叉槍》を縦に構え、その穂先を地面に突き刺す。すると虚空に巨大な力場が生じ、空気が渦となって大きくうねり出した。ガタガタッと周囲にあるゴミやガラクタ、配管などが震え出し、風が唸る。おそらくこれが大慈の出せる中で最大級の攻撃だろう。燐もそれを理解し、《紅蓮煌火》から生み出される熱を更に強めていく。
力と力が真正面からぶつかり合い、せめぎ合って路地裏の空間を丸ごと一変させる。燐と大慈は向かい合い、それぞれの武器を構えた。
もはや防御も回避も意味はなく、ただシンプルに全力の攻撃を繰り出せばいい。それだけで勝負は決まる。
それを理解し、ふたりは相手を打ち倒さんと咆哮した。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
燐は頭上に掲げた《紅蓮煌火》をそのまま縦に振り下ろす。
「はあああああああああああああああああああああああッ!!」
大慈は限界まで後ろに引いた《吉祥神三叉槍》の穂先を一気に突き出す。
そして生じたのは爆発だった。




