表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

第1話


 高校デビューに失敗した俺は、今日も教室で一人だった。

 ソシャゲのスタミナも使い終わり、やることを失った俺は次の授業の予習がてら、教科書を眺めていた。

 そんな時だった。クラスで目立つグループに所属する北崎が、バシバシと隣の男の肩を叩いた。


「……おい、あいつまた勉強してるぜ」


 にやっと、北崎が笑った気がした。

 ……北崎と俺は別に親しくない。ただ、一年のときも同じクラスだったから俺も知っていた。


「ガリ勉ぼっちって言われるだけはあるよな」

「前に、テスト返却されたときに見たけどよ。あいつあんだけ勉強して俺より点数低かったんだからな」

「マジかよ北崎? 遊びまくっているお前よりもバカってあいつ地頭本当に悪いんだなっ」

「それで友達も一人もいないんだぜ? マジ受けるよな」


 ゲラゲラと笑う北崎を含めたグループ。

 人の悪口を言うのに盛り上がっている。

 北崎と一緒にいた女子たちも同じように笑ってこちらを見ていた。


 ……ああ、最悪なクラスだ。

 ぼっちなのは別にいいが、人をいじめて楽しんでいるような奴と一緒なのがマジで辛い。

 それを見て、楽しそうに笑っているクラスメートたちにもうんざりだ。


 ……本当に世の中最悪だ。信用できるのは自分だけだ。

 笑い声なんて気にせず、俺は教科書に視線を戻した。


 高校生にもなればいじめなんてないだろうと思っていたが、そんなことは決してない。

 結局、見た目的変化が現れても人間的な部分は変わらない。


 そもそも、動物にもいじめというのは存在する。

 結局種として落ちこぼれているものは、それを理由としていじめの対象にされることが多いのだ。

 ……まあ、人間の場合、優秀な人間に対しても嫉妬していじめる者は多いが。


 俺は小さく息を吐きながら、北崎を思い出す。

 ……俺が北崎に目をつけられたのは、たぶん入学式初日のときに北崎に声をかけたからだ。

 高校生になって浮かれていた俺は、高校デビュー……とはいかなくとも、少なくていい、彼女も別にできなくていい……それでも友人くらいは作りたいと思った。


 だから、近くの席だった北崎に声をかけたのだ。

 そしたら北崎は……俺を睨んでこう言った。


『陰キャオタクが話しかけんな。殺すぞ』


 周りに聞こえないよう、脅すようにだ。

 ……いや殺すぞって、本当にそんなことやるのかどうか気になったが激しく拒絶されているのは分かった。

 実際北崎は、クラスの上位カーストに所属し、俺なんかとは住む世界がまるで違う。

 

 ……だからまあ、そういわれるのも仕方ない。

 俺はすっかり人に怯えてしまい、ぼっちを貫くことを決意した。


 そこで俺と北崎の関係は終わるのかと思ったが、違った。

 北崎は話題に困ると俺のことを言うようになった。

 ぼっち、オタク、陰キャ、眼鏡……そんな言葉を並べ、俺を馬鹿にする。それが友人たちの間でも受けるようで、たびたび話題になるのだ。


 どんな世界にもいじめはある。たまたまその標的に俺がされただけだ。

 今のところ、実害は特にない。だから俺も我慢すればいいと思った。


 ……後二年。二年辛抱すれば、高校卒業だ。

 大学生にもなれば、さすがに今よりはまともになるだろう。

 

 まともになるよな? なってください。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ