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「その日から僕は毎晩…冗談ではなく本当に妻を抱いている。どうしてもこれだけは抗えない」
「………」
「半年前の夜、いつもの交情の後、僕はそのまま眠りに落ちたのだが、深夜に自然と目が覚めた。すると隣に寝ているはずの妻が居ない。まあ、トイレなのだろうとは思ったが…もうこの頃の僕は妻の虜になっていて…今もそれは変わりはしないのだけれど…1度は収まったはずの妻の身体への欲望がムクムクと頭をもたげ、居ても立っても居られなくなって僕は…とんでもない馬鹿と思われるだろうが、裸のままベッドを出て、その姿で家中、妻を捜し始めたのだよ」
「………」
「妻は風呂場に居た。シャワーを浴びていたのだ。普通なら踵を返してベッドに戻り、妻を待てば良い。そう思うだろう。だが、そのときの僕は違った。僕の欲望は切迫していて、シャワールームに妻を追いかけ、その中でいたそうと考えたのだ。ほんの数時間前、あれほど、いとおしみ、責め、責められ、お互いを貪り尽くしたのにもかかわらず、僕は餓えていた。妻が欲しくて欲しくて、たまらなかった」
「………」
「シャワールームのそばまで行った僕の耳に、妻が喋る声が聞こえた。独り言にしては普通の声のトーンだった。僕は止まった。さすがにその声を無視して、中に入りはしなかった」
「………」




