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しかし、電話ではなく、直接話をしたいと十年間、会っていなかった友人から突然、連絡され、大慌てで駆けつけた末に語られた言葉が「妻のことなんだが…」では、いささか拍子抜けではあった。
こうなると中島の悩みは、妻君の浮気か、離婚を迫られているといったところなのか?
ともかく私は、そんな落胆はおくびにも出さず、真面目な顔で頷いて見せた。
「妻とは祖父の紹介で知り合った。簡単に言うと政略結婚だ。お互いの会社にメリットがあるという理由だけで結婚した」
中島の両眼は死んだ魚のように、どんよりと濁っていた。
「ああ、写真を見たよ。とても美しい女性だね」
私は素直な感想を言った。
「美しい…確かに容姿は美しいが、それだけだ。何の魅力も無い。興味が湧かない。あの女には…」
「あの女」という呼びかたに、私はドキリとした。
いくら意に添わぬ結婚とはいえ、自分の妻を「あの女」と呼ぶのは、私の感覚ではあり得ないことだった。




