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「深夜になると妻はベッドを抜け出した。ナイトガウンを羽織って、寝室を出ていった。僕もそっと起きて後を追った」
「………」
「前日と違い、妻はシャワールームには行かなかった。リビングに入って、電気も点けずにソファーに座った。僕は廊下の影に隠れて、妻の様子を窺った。妻の横顔が窓から入る月明かりで、はっきりと見えた。妻は最初、ピクリともしなかったが…ついに始まった」
「………」
「前日の異変は幻聴では無かった。妻が『こんばんは』と言ったんだ。誰も居ないリビングで」
「………」
「そして次に『こんばんは』と繰り返した。その声は、少女の声だった。何を言ってるのか分からないかもしれない。僕だって分からない。妻の挨拶に少女の声が返事をしたわけだが、その声は両方とも、妻の口から発せられていたんだよ!」
中島の声が興奮で、うわずった。
ゲホゲホと咳き込む。
私は落ち着いて、コーヒーの2口目を飲んだ。
驚くべきことに、まだ2口目だ。




