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6話

 


「痛っ」


 あのスケベ親父から逃げようとした時に咄嗟に右足に力を入れてしまったようだ。思わず声が出てしまった。


 足首は先ほどまでよりも強烈に痛み、とっさに手をダンジョンの壁につき右足を浮かせる。マズい、一人で上まで歩いて戻るのは無理だ。絶対に誰かに助けを求めないといけない。


 モンスターに遭遇したら命の危険すらある。


 緊急事態。


 緊急事態だ。


 だけど・・・・・・。


 緊急用の笛は使いたくない。


 これを使えば地上で待機している職員に連絡がいき、内蔵されている発信機を頼りにハンターを救助をしてくれるありがたい道具ではある。かなりの数のハンターがこの道具の恩恵に預かっているはずだ。


 しかし無料というわけではない。


 しっかりとお金がかかってしまうのだ。


「・・・・・・・・」


 いま小倉さんがいるのは森ノ宮ダンジョンの3階層。


 たかだか、入り口の階層から二つ下りただけの3階層。そんな浅い場所での救助とはいえ基本料が3万円、階層料3万円の6万円に消費税がかかって6万6千円もかかってしまうだろう。


 それはハンターのライセンスを取得する時にも、そしてダンジョンに入る時にも必ず聞かされているハンターの常識だ。知らなかったなどという言い訳は通用しない。


 ハンターが普通の職業よりも儲けれるのは確かだが、それはあくまでもほんの一握りの者たちで、小倉さんのようなFランクのハンターではコンビニでアルバイトをするほうが金になる。


 だから、この笛を使うのをためらうハンターは多い。


 階層が深くなるほどに必要な金額は大きくなり借金をすることも珍しくは無い。けれど金を惜しんで命を捨てるというのは非常に馬鹿げたことである。だから使うのをためらうべきではない。それはわかっていた。


 しかし6万6千円は大金だ。


 さっきのが女性のハンターであったのならと小倉さんは思う。


 笛を使わずともハンターに助けてもらうという手段もあるからだ。いままで一度も救助したことも、されたこともないのだが、そういう手段もある、それはわかっていた。


 値段は交渉次第で変わるはずだが、救助隊に助けを呼ぶよりは安い値段で救助してもらえることが多いという話だ。


 だがそれは助けようとする側に余裕があればの話である。けが人を守りながら地上へと帰還するのは普通にダンジョンを探索するより難易度が格段に上がってしまうからだ。


 結局これは互いの意志が合えばということであって、救助を依頼された側も絶対に引き受けなければならないという事は全くない。引き上げる際にもモンスターに襲われるリスクは当然あるのだから。


 だから一番安全なのは笛を使って救助隊を呼ぶことだ。


 考える。



 小倉さんは考える。



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