5話
身の危険を感じとっさに逃げようとした小倉さん。
ザッ
「っ!」
しかし痛みが怪我をした足の存在を思い出させた。。
スケベ中年オヤジのような男は小倉さんの発した音に反応した。そのいやらしい眼は彼女の姿を、身体を、Gカップの胸を、確実に捉えた。
「フフフ・・こんにちわ」
「!」
男が発した声。それはなんともねっとりとした声だった。そして油でテカてかになった顔にはスケベそうな笑みが浮かんでいる。その顔はこちらの姿を確認した瞬間により一層、笑った気がした。
小倉さんは瞬時に、自分が獲物として見られていると確信した。軽く頭を下げる行為も会釈に見せかけてはいるが、自分の下半身を見るための行為だと思った。足を見ているに違いない。
鳥肌が立った。
ダンジョン内であっても、当然のことながら日本の法律は適用される。
しかしこの男は法律などものともせず襲い掛かってくるに違いない、そう思った。緊急用の笛があるといっても救助隊は地上にいる。ここまで助けに来るにはある程度の時間がかかってしまうだろう。
神様お願いします。どうかお助けください。
小倉さんの心からの願いが通じたのだろうか。男は麻里の予想に反し襲い掛かってくることはない。足を止めることもこちらを見ることもなく、そのままダンジョンの奥へと向かっていった。
けれど油断は禁物、ただ挨拶をしたかのように見せかけ、気を緩めた瞬間に襲い掛かってくるつもりかもしれない。小倉さんは身を固くし、警戒を緩めない。だが男は相変わらずただ真っすぐに進んでいく。
勘違い?
その思いが頭をよぎるが、本能はデンジャー!デンジャー!エマージェンシー!エマージェンシー!と叫んでいる。自分でも不思議なほどにこの男に対して引っ掛かるものを感じてしまう。
時間が経つにつれ男の姿は遠くなっていく。その姿から感じるのは彼が相当に経験を積んでいるハンターかもしれないという事だ。警戒はしているのだろうが緊張でガチガチになっているという雰囲気は微塵もない。
自分を含め初心者は、周囲の様子を探るのに大きく顔を振りながら確認するのだが、彼にはその様子が無い。最小限の動きで確認しているのか、それともこんな所、たったの3階層では警戒するに値しないのだろうか。
そんなことを頭の隅で考えていると、だんだんと先へと進む漢との距離が広がっていく。それと共に麻里の警戒心は解けていく。助かった。神様ありがとうございます。両手をGカップの前で組み神に感謝を捧げる。
「痛っ」
右足首に激痛が走った。




