3話
「止まってください。ここは国が管理する森ノ宮ダンジョンです。法律の定めによりここから先、一般の方は入ることが出来ません。ハンターの方ですか?」
ガッチリとした筋肉質の体に迷彩柄の制服を身に着けた男。
周囲を頑丈な鉄製の柵に囲われた洞窟。
その入り口に立つ二人の男。彼らはこのダンジョンを管理する職員。興味本位でダンジョンに近づく一般人や、不法に侵入しようとする者たちを排除する任を持った者たち。
「はい、そうです」
その二人の男に対する一人の女。
美女であり、Gカップ、でもある。
完璧。完璧なるいい女である。
ただ一つ、違和感を感じるとすればその目。
その目には決意が、意志が、思いが宿っている。ハンターという連中は皆そうだ。日々、命を懸ける彼らからは内側から溢れ出るものが必ずどこかしらに現れている。
「それではハンター証を提示をしてください」
「はい」
名前 小倉 麻里
年齢 20歳
性別 女性
ランク F
左の胸ポケットに右手を入れ、カードを取り出し職員に渡した。
そう、この女性。美女。そしてGカップ極上美女。その名を小倉麻里と発します。
小倉さんはハンター。ハンターなのだ。
男達は受け取ったハンター証を確認している。自らに課せられた使命、すなわちダンジョンの管理を万全の注意を払い遂行しているように見える。だがしかし、それは偽なり。
本来見るべきものはうっすらとしか見ていない。間接視野で小倉さんの姿を凝視している。彼らの顔は若干赤く、息も荒い。小倉さんのという存在に興奮を隠しきれていない。
彼らは類まれなる美女である小倉さんと距離を詰めれるこの機会を、話すことが出来るこの機会を、一秒でも長くすることだけを考えていた。何か近づくことが出来る口実を、糸口を探っていた。
小倉さんは艶やかな黒髪を後ろで束ねてまとめ、化粧も最小限。香水なども付けていない。ここまでは別段変わったところのない特徴である。がしかし、身に着けている者は普通の女性とは全く違っている。
強化プラスチックであろう胸当てと肘、膝あてをつけジャケットにはポケットが沢山ついていて小物が収納できるようになっている。そしてゴルフクラブを手に持っている。
その姿はダンジョンに挑むハンターそのものだ。
そんな異様ともいえる格好であるにも関わらず、そのスタイルの良さとあふれ出す色気は隠せていない。異様を吹き飛ばすだけの魅力が小倉さんにはあった。
しかしそれは、彼女がハンターとして潜り抜けてきた修羅場の少なさを意味するものでもある。ベテランのハンターになればたとえ女性であろうとも野生動物のような威圧感を備えているものなのだから。
男達、数々のハンターを見てきた男達。彼らは小倉さんから威圧感を感じ取ってはいなかった。彼らはハンターではないが武をおさめ、そして、モンスターに対応できると判断されたからこそ、この職についている者たち。
そしてそれを証明するかの様に、ハンターランクは最低のF。ハンターを始めて間もないもの、あるいは全く才能がないということを表している。
「ダンジョンは命の危険がありとても危険です。くれぐれもお気お付けて」
「危ないと思ったらすぐに救助を要請してください。すぐに駆け付けますので」
「ありがとうございます」
ダンジョン入り口に立つ二人の男は、遠くに見える小倉さんを見て好き勝手騒いでいた時とはうって変わった表情。小倉さんに規則通りの注意を促した。
だが、顔が違う。いつもとは全く違っている。二人ともが自分の中で一番カッコいい顔で小倉さんと向き合っている。
微笑を浮かべ礼を言うと、小倉さんは再び歩みを進めた。
職員の男たちはその後ろ姿、主に尻のことだが、それを舐めまわすように眺めそして鼻から吸い込めるだけの空気を吸い込み、残り香を嗅いでいる。
「悠里待っててね」
小倉さんは青と白のコントラストが美しい青空を見上げ、いつもの言葉を口にした。
その表情は決意をもった人間特有の強さが感じられる。その決意がただでさえ整った顔立ちの小倉さんの魅力をさらに底上げしている。
小倉さんは視線を空から戻し、一つ息を吐くとダンジョンへと足を踏み入れた。
風に運ばれてくる匂いを嗅ごうと男達は未だ、鼻に神経を集中させていた。




