お風呂
僕は故あって「女性文化研究会」の部室を訪ねた。
そこは性転換女子たちの巣窟になっていた。
そこの部長は見並 甘音。
聞けばこの学校の生徒会長をやっているのだそう。
この部活もかなり歴史がると言うこと。
今、僕はその部長に連れられて地下の浴場に連れられていある。
地下の浴場にはエレベーターはなく階段一本槍だ。
それにしても長い。
普通5分や10分ぐらいだと思うのだが既に階段を降りるだけで30分はかかっている。
ずっと黙っているのも何なので僕はいろいろと部長に聞いてみた。
「部長は関西弁なので関西の何処出身ですか?」
そう聞くと意外な答えが
「え!?
うちは関西出身やないよ。
うちがこのしゃべり方なんは女らしいしゃべり方を研究したからなんよ」
僕が驚いていると
「うちはこれでも性転換してから2年目なんや。
せっかく性転換したからには女らしくなりたかった。
うちはこれでもこの状況を楽しんでるや。
でも、このしゃべり方をしてから1週間、あることに気づいたんや。
うち、キャラ設定間違ってるって。
しかし今更変える訳にはいかへん。
そして今日このキャラを演じさせてもらっているちゅうわけや。
もうこのしゃべり方に慣れてもうたし」
僕は半ば呆れて聞いていた。
階段を降り始めて1時間、ようやく脱衣室に付いた。
「さぁ、恥ずかしがらんと服脱ぎぃや
お互い女なんや。
同じものしか付いてへん。」
と言い部長が真っ先に素っ裸になった。
僕はと言うと両親以外の女性の裸を見たことがない。
(ちなみに両親は2人とも見た目女子高生の同性夫婦です)
つまり免疫がない。
部長の裸を直視して良いのかどうか悩んでいると
「何、モジモジしてるや」
と怒鳴られ部長の手で強制的に服を脱がされた。
「良い体してるやないか。
なんやったらうちの体よりもプロポーションが良い。
とても(女性に)なったばかりとは思えないほどや。
女性の洗礼としてのアレはまだなんやろ。
それにしては良い体をしてる」
マッパの部長にめちゃくちゃ褒められてしまった。
浴場に入るといくつものお風呂があった。
「ここの浴場はスパリゾートみたいにいろんなお風呂があるんや。
いろいろと入ってみぃ」
そう言われ部長の指示通りいろんなお風呂に入ることにした。
なぜか部長は何らかの紙とそれを挟む板みたいなもの、そして書くものを持参しているが。
まず示されたのが泡風呂だ。
「このお風呂、沸騰しているようやけど決して熱くはあらへん。
帰ってぬるいくらいやから入ってみぃ」
そう言われ僕はお風呂に入った。
確かにお風呂は熱くはなかった。
かえってひんやりするような。
部長は僕の様子を見て何か書いている。
一通り書き終わると部長もお風呂に入ってきた。
「どや、気持ちええやろ」
と僕に聞いてくる。
僕からすると部長が近づいてくる方がドキドキする。
次に示されたのが電気風呂。
「このお風呂は電気が流れて入れピリピリする。
少し強いけどうちらにとっては死ぬほどのものじゃないから。
さぁ、入って入って」
お風呂は入ってみると確かにピリピリする。
でも電気的な刺激ではないような気もする。
部長はここでも何かを一通り書き終わるとお風呂に入ってきた。
しかもものすごい勢いで。
その勢いでお風呂の水が僕の顔にかかった。
部長の方を見るとその水で顔を擦っていたりしていた。
石けん風呂
僕たちが3番目に入ったお風呂だ。
部長はやはり一通り何かを書いた後、お風呂に入ってきた。
「このお風呂は肌に良いんや。
女は肌が命やさかい、よう入っとき」
そう言われ僕は頭まですっぽり入らされた。
第二の泡風呂
「このお風呂は最初の泡風呂よりかなり暑い。
そんな我慢しなくても良いから少しでも良いから入っとき」
僕は少し気を張って入ってみた。
でも確かに熱いが部長が言うほど熱くはない。
「ほぅ、全然大丈夫なんか。
それとも今日は温いのか。
とりあえずうちも入ってみよう」
何か書き終えてから部長が入ってきた。
最後は何の変哲もないお風呂。
「よう、ここに浸かりぃ
ここで今までの温泉の成分を洗い流せるから。
頭までな。
出ないと大変なことになるから」
「大変な事って何?」
と僕は聞いてみた。
すると委員長は今までの楽しそうな顔から一転真面目な顔になった。
「じゃぁ、種明かしをするね。
これは部員全員にやっているテストや。
このテストをクリアしなければ正式にうちの部員に慣れないんや」
僕が不思議がっていると
「最初の泡風呂。
アレは液体窒素なんや。
大体、−200℃ぐらい」
僕がその事を聞いて驚いていると
「次に入った電気風呂、そして石けん風呂はそれぞれ強酸性と強アルカリ性のお風呂。
最後の泡風呂は材料は水なんだけど圧力を掛けて300℃ぐらいの設定にしてある」
僕は思わず
「死んだらどうするんですか」
と怒鳴って聞き返した。
「それは大丈夫や。
うちらの種族はこのレベルでは死なない体を持っている。
普通の人間やったら最初ので死んでるけどな。
いわゆる最終確認や。
うちらと同じ種族なんかを調べるための。
普通の人間はこのお風呂には入れんし部活にも入れんようになっている。
大体、ここに通じる階段は毒ガスが充満しているから普通の人間だったらここに来る前に死によるし。
うちの部活は普通の人間は入れんよ」
僕は呆れていた。
「そういえば最後のお風呂はどういったお風呂なんですか」
部長は
「最後のは本当に普通のお風呂。
と言っても水風呂に近いけど。
強酸性や強アルカリ性のお風呂に入ったんや。
ちゃんと洗い流さないと着てきた服が溶けてしまうからな。
だからしっかりと浸かってよ」
そう聞き、僕はめちゃくちゃお風呂に浸かった。
もちろん頭まで。
しばらく浸かっていると部長は
「でも凄いやろ。
うちらの体。
ほぼ不死身やと言っても良い。
後、大分高いところから落ちても無傷やし、今こうやって水中を10分以上いることも出来る。
もちろん、水の中でも息が出来る仕様や。
これで空を飛べれば最高なんやけど。
残念ながら空を飛ぶことは出来ひん。
ていうか防御力は最高なんやけど攻撃力は人並みもしくはそれ以下。
うちらは運動音痴なんは覚悟しておかなければならへん。
人間と共生するんや。
うちらの特徴を理解しておかなければならへん。
その上で平和的に共生するとはと言うことを常日頃考えておき。
うちらは特殊やけど特殊やない。
1人の人間としてどう生きるべきか」
部長の話はとても貴重なものだった。
但し今度は素っ裸な状態ではない時にも1回話して欲しい。