女性文化研究会
女子校に入学して1週間。
僕はクラスで孤立していた。
だってそうだろう、僕は今まで女の子と会話したことがない。
女の子とどういったことを話せば良いのか分からないのだ。
おかげで僕は両親以外の女子とは未だに話せずにいる。
両親はと言うと父(女)も母も元々女子なので女子校に簡単に馴染んでいた。
つまり僕だけが出遅れていたのだ。
話しかけてくれるのはこのクラスの委員長ともう1人、僕の席の後ろにいつも座っている読書女子だ。
委員長はなぜか僕に気を掛けてくれる。
「女子の生活は大変でしょう?
女の子は男の子の知らないことばかりだしね。
あ、私はごく普通の女子だから、あなたとは違って。
あ、この話は秘密ね」
と、なぜか僕の事情に詳しいようだ。
もちろん他のクラスメイトは僕の事情は知らない。
後ろの席に座っている女の子は非常に無口だ。
ただ、なぜか僕に少女小説を薦めてくる。
僕はその度に断っているのだがどうも彼女なりに孤立している僕を心配してくれているようだ。
それにしても彼女はカワイイ。
どちらかと言ったら僕の好みの女性だ。
彼女の読書姿は可憐で美しい。
声も聞くととても高くて可愛らしい声。
ザ、女の子っていった感じだ。
僕はこのタイプの女生徒とまともに会話できる自信がない。
気に掛けてくれるのは嬉しいけど僕には刺激が強すぎるのだ。
とにかく僕はクラスの誰とも仲良くなれないでいた。
そうだ、そういえば「女性文化研究会」に顔を出すように言われていたっけ。
このクラスにずっといたってどうしても慣れることが出来ない。
まだ、そういった所に顔を出すのも暇つぶしになるだろうと思った。
僕が顔を出す部室は一階の奥にあった。
場所は簡単に分かった。
担任に聞いてみると担任は女生徒に聞いた方が早いと言った。
会話の練習にもなるしとも。
僕は意を決してクラスの女子や廊下を歩いている女子に聞き回った。
そうしたらあっさりと場所が分かったのだ。
とても有名な場所らしい。
そして部員は女子の憧れだとも。
今、僕はそこに行くのだけれど聞く度になんか行きづらくなる。
ハードルが高そうな所だ。
そしてクラスメイトの女子たちが
「あなたは行く価値があります。
あなたは私たちの憧れなのです。
どうぞ頑張ってね。
影ながら応援してます」
と謎の応援ももらった。
クラスメイトたちはどうも僕に話しかけて欲しかったみたいだった。
よく分からないけれど。
それにしても僕クラスメイトにどういったイメージで見られているのか。
中身を知られないように気をつけなければ。
部室にはでかでかと「女性文化研究会」と書かれた名前がでかでかとドアに張られていた。
もしかしたら聞かなくても行けたのでは無いのかと言うぐらいにその文字は目立っていた。
しかし、部室の中は暗幕が張られていて中が良く確認できない。
僕はドアをコンコンと叩いた。
中から着物の女の人が出てきた。
「どういったご用で」
その女の人は尋ねた。
その人は糸目の美人で非常に着物が似合っていた。
僕は緊張しながら
「入学する時に学校からここに入部するように言われました。
ここがどういった場所か分かりませんがよろしくお願いします」
女の人は
「あんさん(あなた)がもしかして折井 詩温さん?
待ちかねてました。
それにしても来るのが遅すぎます。
あんさんの事情はよ〜く分かっておりますえ。
初めての女子高生生活はいかがどす?」
と言われ僕は中に入れてもらえた。
中に入るとなぜかカオス状態だった。
後ろで2人の女子高生がキャッチボールしているし。
とてもここが女子の憧れの場所とは思えない。
僕が呆気にとられていると
「まずは自己紹介します。
うちは見並 甘音。
あなたと同類です。
女子としての生活はあんさんより1年先輩の2年目。
学年も2年生になります。
ここではうちと同じ同類の人たちが集まり女子とは一体何なのかと言うことを研究する部活です。
表向きは一人前の大人の女性になるための部活。
なぜかうちたちは女子の憧れみたいな存在になっています。
先代からの伝統もあるみたいだし。
それにうちらみたいな特別な女子しか入れないので一般の女生徒は入部できません。
それがかえってプレミアム感が増しているというか、さらに女子の憧れとなっています。
ここまでが建前です。
本音を言いますとここはうちたちの憩いの場。
うちはこの言葉遣いが気に入っているんで常にこのしゃべり方ですがほとんどの娘(こ〜)らが表と裏とではしゃべり方が違います。
女言葉と男言葉。
ここではみんなが事情を知っているので素が出しやすいのです。
女子ばかりで教室にいられない娘(こ〜)たちのエスケープの場でもあるんです。
これからもここに顔を出してくださいね」
僕は説明を黙って聞いていた。
その人は続けて
「こうしてあったのはなんかの縁。
実はこの部室の地下にお風呂があるんどす。
一緒に入りおすか?
裸の付き合いも大事おすえ。
あれ、もしかして女子の裸に興奮するんどすか?
同じ女同士、何も恥ずかしがることはあらへん。
これも修行おすえ」
僕は半ば強引にお風呂に入らされることになった。