第九十四話 救出②
ようやく会えた仲間だというのに俺たちを取り巻く空気は重い。状況が状況だけに仕方のない事なのかもしれないが多分それだけじゃない、目の前の問題を解決してもすぐに以前みたいには戻れない気がした。
とはいえこんな状況だからこそ多少の和みも必要ではなかろうか? ティオの元気が無く暗い表情を見て少しくらいは気を紛らわせる話でも出来ればいいのだがみんなと別れてからはあまり話して面白い経験はしていない。
適切な話題が見つからないまま足音だけを響かせているとティオの方から話しかけてきた。
「今までどこにいたんですか?」
「深淵」
「深淵って・・ふざけてますか?」
これまでティオからは聞いたことのない質の声、正直ティオからは聞く事がないとまで思っていたのに。
「もしかして怒ってる?」
恐る恐る聞くとすぐに返事が、というより怒りが返ってきた。
「当たり前です! 死んじゃったんだとばかり・・・」
俺が殺された時の事をルナから聞いたのだろう。
「まあ色々あって、生きてる」
死んだけど生き返ったなんて言ってもさらに怒らせそうだしそこら辺は曖昧にしておいたが納得してはもらえない。
「あり得ないです! だって私見たんですよ、心臓が無くなって完全な死体になった姿を。それにさっきだって確実に爆発に巻き込まれていたのに・・・」
「偶然が重なった結果だな。変な館で手に入れたただの泥団子だと思ってたのが案外凄い物でそれを持っていたから凄い人の目に偶然止まってさらに偶然生き返らせる条件が揃っていた結果として今ここにいる、ついでに生き返った時に死なない身体にもなったからあの爆発でも平気というわけだ」
「・・・・にわかには信じられませんね」
仕方なく説明してみたがさすがのティオでもすぐには飲み込めない様子。
この世界は魔法はあっても蘇生まではないらしいし俺みたいにファンタジーに脳を毒された者じゃない限りはこれが普通の反応なのかも知れない。
「でも━━━━━」
そこまで言うと直前までの語気の強さが消えていく。
「生きていてくれて良かったです」
元の優しい声が聞こえた。