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第九十二話 最悪の選択

「嘘、まさか、そんな!?」


人の死ぬ瞬間、心を痛めてもおかしくはないのだが魔族は首を傾げる。

この手の映像は前にも見せたことがあるがその時のどれとも違った反応を少女は見せた。


「どうかした?」


聞いても答えは返ってこないがその落胆っぷりから想像は出来た。


「ひょっとして知り合いだった?」


やはり黙ったままだが魔族は確信した。

すると良くない癖が出て来てしまう。


「どう? 知り合いを殺した気分は? あなたが殺した様なものだもの感想を聞かせてもらえないかしら」


目の前でこんなにも良い表情を晒されるとさらにとその先を求めてしまう。人が絶望の果てに見せる諦めの表情、精神的な死を迎え道具の様に成り果てる様を見たいという悪癖。

一つ間違えば死を選ばせてしまう危険もあるがそれはそれで面白いと思えるのがその魔族の性質、今後の利益よりも今の快楽を優先してしまう。


「自分のために他人を犠牲にする、あなたが私に従って道具を作らなければ死ぬことがなかったかもしれない命がどれだけあるか」


少女の目から涙が落ちる。

良い兆候、近くには命を断てそうな道具がたくさんある。手に持った新作なんかもそうだがそれは使わないだろう、私を殺せる確証がないのに危険を冒せるほど思い切りは良くない。

人間にとっての家族とはそんな風に互いに自由を奪い合うもの、一人なら賭けに出れるだろうにそうじゃないから失敗を恐れる。

私を怒らせると今度こそ本当に自分の姉が殺されると分かっているだろうから大人しく死ぬか従い続けるしか選べない。


「じゃあこうしましょう、あなたがあなた自身の手でその新作の性能を人を使って証明してくれたらあなた達姉妹だけは解放してあげる。そうすればもう人を殺す道具を作らなくて済む、自らで他者を殺して終わりにするか間接的に殺し続けるか、さあ、どうする? ティオちゃん」


自分の手を汚すのはこれまでと違う、命が消えていく過程が直に伝わってくるのだ。

そんな重圧に耐えられるはずがない少女がとった行動は魔族の思った通りだった。


近くにあったナイフを手に取り自らの命を断つことに決めたのだ。

自身の喉元に突きつけて一息にはいかない。手が震えている、死への恐怖が邪魔をしているのだろう。

恐怖が勝つか覚悟が勝つか見もの。

さてどうするのかと傍観しているとようやく決まった様だ。



勝ったのは覚悟、目を閉じ意を決した表情でナイフを自身の首に突き立てる。


「なっ!?」


この場を支配しているのは魔族の方だった、だが起きた事に間抜けな声で驚いているのも魔族の方だった。



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