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第八十三話 偽り

・・・・はっ!っと目を覚ました俺は手足が縛られ完全に動けない状態にある事を理解した。


「よう、目覚めたか」


俺を殴り気絶させた張本人が笑みを浮かべて近寄って来るので当然敵意剥き出しで睨みつけてやる。


「あなたがそんな人だったなんてっ!」


一時的に行動を共にし助けられた事で手放しで信用していたがそれがまさかこんな形で裏切られることになるなんて思いもしなかった。


「何が反乱軍ですか! ただの犯罪集団じゃないですかっ!」


薄汚い如何にも悪人というような顔と格好をした男達を後ろに従えているのを見れば一目瞭然。

今すぐにでも討伐してやりたい気持ちに動かされ少し無理をしてでも拘束を解く事に決め全力を振り絞る、手首と縄の両方がぎちぎちと悲鳴の様に音を立てるも気にせずに。


「お、おい正気かよお前!?」


俺の身体について知らない男は縄が食い込み下手をすれば手首を落としかねないほどに無茶をする姿に焦りを見せている。

どちらが先に限界を迎えようがこの身体にとっては大した違いではない、最終的には拘束が解けちゃんと二つの手が繋がった状態で存在する事になる。

皮膚が変色、それを見て男は慌てて止めようと抑えにかかって来るがこちらが早かった。

随分と痛々しい事になってはいるがようやく両手は自由になる、使えるように治るのにかかる時間だってすぐだ。


「マジかよ!?」


たちまち元通りになる姿を目にした男達がざわめき立つ、普段目にする回復魔法とは違う治癒速度、何の動作もなく自発的に回復を行う様子が珍しかったのだろう、そこに魔剣まで合わせると「ひっ」と気味悪がる声も聞こえるが大半は剣に手をかけ警戒をあらわにする。

「こいつ人間じゃない、今すぐ殺すべきだ」と訴え出る者もいたがただ一人顔見知りの男だけは「待て」とそれを止める。


「どうしてっ!? こんなの普通じゃない、魔族に決まってる。殺すべきだろ!」


「まだ分からないだろ! あの英雄レンフィーリスだって自身が負ったあらゆる怪我をたちまち癒すって話だろ、ひょっとしたら━━━━━」


「そんなのただの言い伝えだ、誇張されてるだけに決まってるだろ」


「だがこいつは人を助けたんだぞ、俺達じゃ束になってじゃないと敵わない魔族相手にたった一人で立ち向かって」


「本当にこいつがやったのか分からない、実際見てないんだろ? こんな世の中だ、希望みたいなものが欲しいのは分かるが現実を見ろ、英雄なんて都合よく現れない、自分達でどうにかするしかないんだ。魔族に奪われた物を取り返す為にやるべき事をやるべきだ」


・・・・何かがおかしい?

こいつらは魔族と繋がってるという話だったはず、なのにどうしてここまで憎しみを持っている?


「魔族に奪われたって? あんた達はその魔族と一緒になって奪う側に回ってるんだろ?」


「ふざけたこと言うな! 誰がお前ら魔族なんかと手を組むか!」


「じゃあその装備は? 魔族と繋がってるからそんなの堂々と携えてるんだろ!」


「そいつは違う」と唯一顔見知りの男が言った。


「言ったろ、俺達は魔族に抗う活動をしてるんだ。言いなりになって武器を手放したりなんかしない、たとえバレて捕まる事になるとしてもこの先永遠に服従して生きるよりはマシっていう馬鹿の集まり」


人攫いじゃない? それにしては身なりがまさしく俺が思う悪人のそれだ。見た目だけで決めつけるのは良くないかもしれないが悪人ヅラとは正にこれだというのを体現しているかの様な顔をしている・・・・のか?


「えっ」


思わず声が漏れる。

俺の迷いが視界に反映したかの様に目の前の光景が歪んでいく、頭痛に視界の酷い揺れも加わり一旦目を閉じ治るまで堪え次に開いて入ってきた光景に驚愕させられた。


まるで違っていたのだ。


人の位置や数は同じ、だが顔見知りの男以外の人物の顔も服装もさっきとはまるで違って嫌悪感を感じなかった。





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