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第八十一話 いざ、悪者退治へ

薄暗い店内、ずらりと並んだボトルとそして、女装したおっさん。

空気を吸うだけで酔ってしまいそうな大人の空間に今俺は足を踏み入れている。

置かれた現状に若干の背徳感と共に恐れもあった。

お酒を扱う店で他には誰もいない二人だけの空間、男と女なれば思春期らしい妄想もしてしまう穢れを知らない純粋な男子の俺の初めてが奪われてしまうのでは?と内心びくびくしている。


「そう緊張しないで、とって食べたりしないから・・まだ」


まだ!? つまりいずれ食べるとでも言うのだろうか!

あからさまに警戒を顕にするとにやりとして「冗談よ・・・・今は」といちいち重要な事を最後に小声で付け足しやがる。


「知っている事を教えて貰っても?」


さっさとおさらばしたいのでさっそく要件に入る。


「そうね、余計なおしゃべりは片が付いてからにしましょうか」


意外にもすんなりとしている。

目の前で椅子に腰掛けぬっと神妙そうな顔を接近させる。


「多分あなたの探している子はこの町に居た」


居た、過去形という事はもう居ないのか。

がっくりと肩を落とす俺を見て考えている事は容易に想像できたのであろうその人はすかさずそれを否定した。


「ここから出て行ったのならその程度の落ち込みで済むんでしょうけど残念ながら事態は深刻、それも命に関わるくらいに」


「何かあったんですか?」


「人攫いよ、あなたが探してるであろう子と他にもあと数人が連れ去られた」


「なっ!?」


連れ去られた人間を魔族がどうするかはこの目で見てきた、最悪の事態だ。


「まだ誰一人助けられてないと?」


「それ以前に誰も助けになんて行ってない、私も含めてこの町の人達はみんなどうにも出来ないと諦めてる」


「だったら他に依頼するとかすればいいんじゃ? そういうのを生業にしてる人だって居るだろうしそもそも民の安全を守る兵士みたいな存在がいるでしょう!」


「まともな武器もなしでそんな事続けられないでしょ、今や武装してるだけで反逆だの言われて連れて行かれる世の中なのに」


そういえばオヤジもそんな事言ってたな。


「そうですか、確かに魔族相手になんの装備も無しじゃ無理もないのかもしれませんね」


「いえ、相手は人間よ」


人間?てっきり魔族の仕業かと思ったが。

でも、それなら助けようと思えば助けられるのでは?


「相手が人間なら向こうだって武器はないはず、なら諦める様な状況じゃないんじゃ・・・」


屈強な男を集めればどうにかなりそうだが。

ここに至るまで色々な人に話しかけたが強そうな男は結構な数を見かけた、その人達が集まればどうにかなるのではとも考えたが俺が思うほど簡単ではないらしい。

女装した男は悔しげに頭を振った。


「それが何故か向こうはしっかりと武装してるの」


「そうか、元々悪事に手を染めていた連中、取り締まるのが魔族になろうと言う事を素直に聞くはずないか・・・」


一人納得する俺に再び待ったがかかる。


「いいえ、どうやらあいつ等は魔族と繋がってるみたい。本人達が自慢げに言ってた。元々普通の人達に害為す存在だったし魔族からすれば敵の敵は味方っていうことなんでしょう」


ほんと気に入らない、と作った拳を震わせる。

立場の逆転は人間同士でも起こっているらしい、悪人が堂々とのさばりそうじゃない人が虐げられる。

歪な世界、俺には到底許容出来ない。


「あなたは武器を持ってる様だけど暫く様子を見た感じでは悪人には見えないしだからお願い! 連れて行かれた子たちをあいつ等の魔の手から救ってあげてちょうだい!」


そんなの頼まれるまでもない、助けに行くに決まってる。


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