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英雄譚 2

対処すべきは先ず後ろの三人。

いくら気を抜いてるとはいえ馬に乗る相手を仕留めるのは容易じゃない。

見つかり騒がれれば前方にいる仲間も呼ばれ複数を相手にしなければいけなくなる。

レンフィーリスはそれでもどうにか出来る自信はあった、村での立ち回りを見る限り兵士のように洗練された動きではなく単なる武器頼みのようにしか見えなかった。

人数差、子供と大人の体格差、普通ならば一人の少女では埋めようのない差は彼女にとって問題ではなく人質を取られて盾にされる事が一番心配だった。

そうなってしまうと全員を無事に返すのは難しくなってしまうから。


仲間を呼ばれる事なく一息のうちに三人を仕留めるには魔法が最も適しているが生憎今のレンフィーリスには使えないし周りにも居ないだろう。必然的に武器による制圧しか方法はないのだが肝心の武器が近くにある様には見えない。

しかし何の手段も持っていないのにどうにか出来そうなどと楽観的に考える程能天気じゃない。

レンフィーリスはちゃんと持っていた。

村で騒ぎを聞いて状況を確認しすぐ家にあった包丁を服の中に仕舞い込んだ。いざという時のため、同世代の子が泣き叫ぶ状況で彼女は怖いくらい冷静に相手を殺す手段をその身に潜ませる。


包丁を取り出し少しだけ目を閉じて思考、どうすれば望んだ結果を得られるのかを。

そこでレンフィーリスが考え出したのは常人であればまず不可能だと切り捨てる無謀な方法。

彼女は躊躇いなく決行した。



男三人が横一列に並んで馬に揺られるだけの暇な時間をつぶす為に談笑している。

追手を警戒して背後を任されたというのに何とも呑気なものだ。

だが今しがた襲った村の様子を見ればそれも仕方ないのかもしれない。反抗の意思すら見せず絶望だけを貼り付けた表情、追いかけてきてまで拐われた村人を取り返そうという気概のある者なんている様には見えなかった。

この油断はそれ故だ。


男達が本当に警戒すべき脅威は背後ではなく前方に存在するとは思いもしていない。


それは唐突に飛び出してきた。


悪事の成功に緩んだ頬が戻る前に目の前の馬車から飛び出してきた存在が真ん中にいた男の首を掻き切って流れる様に男の剣を鞘から引き抜いた。

左右にいた男も出来た事と言えば飛来したのが天使の様に可憐なただの少女であるという事実を目で確認する事だけ、次の瞬間にはその少女の手から投げ放たれた刃物が同時に両隣の男の喉に突き刺さって沈黙のまま絶命した。

幸い他に気付かれる事なく後ろを制圧したレンフィーリスはそのまま馬を奪って先頭集団の方へと向かう。



そうしてレンフィーリスは無事救い出す事に成功したのだがそこに感謝の声は響いていない。

ここにいる全員が感謝の思いを抱いているのだろうが全身血に塗れて今尚血液が滴り落ちる剣を握る少女にどんな言葉をかければ良いのか見つからなかった。



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