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第六十一話 闇

勇者には似つかわしくない禍々しさが俺の手から放たれる。

正直言ってしまえば俺は光より闇を好む、最初こそ変に興奮して物語の勇者的立ち位置をお決まりの様に志したが間違いだった。

俺の心には初めから闇が巣食っていたんだろうから。

この深い闇こそ俺という存在の証。


こっちに来て出会いがあって、優しく温かい光の心地良さに溺れてあたかも自身もそっち側かのように誤解していた。


俺の本質は闇だ。


この深淵の空に渦巻く暗雲の如く光を遮断する存在。


この世すべての陽キャ()を嫌い、陰キャ()の道をひたすらに突き進む者。


何だ、そもそも最初の段階で勇者としての俺なんて存在してなかったんじゃないか・・・。

正義の味方なんてらしくない願いはもう捨てた。

別に陰キャ()だからって恥ずべきことじゃない、一番恥ずかしいのはどちらにもなりきれない中途半端な奴だろうが!


俺は今、闇を受け入れる。

だから魔剣よ俺に力を寄越せ!


俺の要望に応えるように輝きを放つ。

初めての事態だ。

しかし俺にはなんとなく分かった。


「本気で行きますよ?」


いつもは出ない強気な言葉がすんなり出るくらいの輝きだったんだ。


「当たり前だ」


俺の毒された頭は未だに自分を特別な存在と思いたがっている。


「何か今なら、どうにか出来る気がする」


死ぬほど辛い特訓の数々をこなし、そして今、なんか覚醒した感じの魔剣が合わさった事でついに願望が現実となったのかもしれない。


「ほう、面白いことを言う。ならば見せてもらおう」


普段あまり笑わない師匠が微笑みをその顔に浮かべた。

変に自信満々の俺に終わりの可能性を見出したのかもしれない。

消えたいのに消えたくない、生き続けるのも苦痛だが終わりを意識すると恐怖する。相反する二つの感情を併せ持ってしまった師匠はもしかすると消されても仕方ないと思える存在、戦場でぶつかり合う兵士のように強者が敗者の生にすがり付く思いを無慈悲に捻り潰してしまう様な本人の意思が介入する手立ての無い一方的な最後でしか終われないと考えたのかもしれない。

期待の笑みなんだと思うと少し複雑な気持ちにさせられる。


俺が師匠を超える程の実力を身につけた時点で終わる関係だと思うと・・・。





とか何とか延々と思い巡らせていましたが俺の様なクソ雑魚野郎は還付無きまでに叩きのめされました。

それはもう一方的で只今絶賛惨めさと羞恥心による波状攻撃に心を痛めております。


「まあまあだな」


その評価は喜べば良いのだろうか?

まあ、元がゴミカスの俺からすれば上出来ではないでしょうか。

それにしたって俺みたいな奴が随分と傲ったものです。どうにか出来る気がするなんて恥ずかしい。


ああ、どんどん卑屈になっていく。


深い闇、力的なものじゃなく精神的な。

病みと表現する方。


「頃合いか・・」


囁きが聞こえた。


「何がです?」


「決まっているだろう。お前に私を消してもらう為の方法を教えるのさ」


俺と師匠の関係は思ったよりもずっと早く終わろうとしているみたいだった。




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