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第五十五話 意外な共通点

「正直言って永遠ってのがよく分からないんですけど? お姉さんは今すぐにでも俺を殺せるんですよね、だったら死にたくなったときに死ねば良いだけでは? 少なくとも今すぐ死ぬ必要はないかと思うんですけど・・・」


「お前の言う通りだ、私はいつでもお前を終わらせられる。だがな、いつでもと先延ばしにすればするほど終わりが怖くなる。永遠が苦痛だと気付いても長い時を経て肥大しきった未練というやつが邪魔をする、やがて自分では出来ないと悟り代わりを求める、私にとっての代わりがお前だよ。私はお前に消してもらって一人勝手に苦痛から解放されようとした、後に残すお前の事など考えず。身勝手だと罵ってもらっても構わない、それだけの事をしたのだから」


白銀の髪が目に掛かる。

表情を隠すように俯いてしまったが少し見えてしまった。


「別に良いですよ、生かしてもらって文句なんて言いません。理不尽に殺してくれたどこぞの悪魔に比べれば天と地ほどの差がありますし」


あの表情を見せられて尚責め立てることが出来るほど気概のある男じゃない。

反省してるのを肌で感じた、なら怒る必要なんて無い。

寛容さに定評のある男なもんで。


「こんな私に情けをかけてくれるのか? 変わった奴だなお前は」


「でも俺が代わりってのはどうなんでしょうかね? 言っときますけど俺大した事出来ませんよ?」


「いや、出来る。お前は私に似ているから私と同じことが出来る」


どこを見て似てると言ってるのか全く不明だ。


「えーとお姉さん、俺の弱さ知ってます?」


「ああ」


即答。ちょっと傷付く。


「その上で俺にお姉さんと同じ事が出来ると?」


「ああ出来る・・・・はずだ」


ちょっと自信なくなってません?


「その根拠は一体?」


「これさ」とお姉さんが取り出したのは汚ねぇ泥団子。

俺があの魔の館でとてつもなく苦労してようやく得たクソみたいな残念賞。


「これは代替の宝珠、お前をこの世に引き止めた物さ」


「そんな泥団子がですか?」


「ああ、死んだ時に持っているだけで人として終わった身体を分解しそこから魔力だけを取り出しそれを使って身体を再構築する。不老不死の原因はこれさ、言ってしまえば私達はもう人ではなくただの魔力の塊、魔力を火や水やらに置換する魔法と同じ原理で出来上がった本物と極めて似た偽者だ。大抵は再構築まではいかずに死体が消え失せるのだがだがお前も私同様それを可能にした。ただ少し魔力が不足していた様で安定しなかった、そこで似た者同士もしかしたらと少し私の魔力をお前に流し補強してみた結果成功、どうやら私とお前は近しい質の魔力を有しているらしい、常人とは違う異質な魔力をな」


俺の身体は魔力で構成されているらしい。正直感覚としては前とあんまり変わらない気がするのだが。

血や肉、そして感覚までも魔力で再現されている。全部作り物なんてでまるでロボットみたいじゃないか。

人でないとはそういう事か。

若干衝撃ではあるがそこまで気にはならない、おそらく魂的なものは作り物ではないから。

だってここにいるのは地獄に叩き落とされる直前の俺、身体に残っていた記憶だけを復元したなら死んだ後に見たあの悪魔の記憶なんてあるはずない。

つまり身体は違えど精神、魂は以前の俺のままちゃんと生きてる。


「どうした、大丈夫か?」


「ええ、今の俺が大まかに言って魔法的な何かだと聞いてちょっと驚きはしましたが大丈夫です。事実はどうあれ俺は俺ですし」


「人と違うという事を恐れないのだな」


信じられないという様な顔。

確かに人と違う事を恐れてなんていない、それは単純に俺はどちらかと言えば人と違う方に憧れるからだ。

この世界に来る前なんて突出したものを何も持たないただの背景の様な存在だった、そのせいもあって特別なものには惹かれる。

とはいえそう楽観も出来ないのだろう、このお姉さんの曇った表情を見ると。

特別は特別なりに辛い事がある、現に俺もそれでこうなったわけだが・・。

しかし特別でないと出来ない事もある。


「人と違っていてもそのおかげでお姉さんの役にも立てそうですし」


具体的にどうすれば良いのか分からないが俺とお姉さんの共通点である魔力の質とやらが関係してくるのだろう。


「で、俺は何をすれば?」


「それは時が来たら説明する」


「そうですか・・ところで一つ良いですか?」


「何だ?」


お姉さんの話を聞いて気づいた事がある。

魔力にも質とやらがあっておまけに俺のは普通じゃない、それはつまり俺がろくでもない魔法しか覚えられない原因もここにあるのでは?

魔力が普通じゃないから普通に覚えようとしてもあんなクソ魔法にしかならないとか。

とはいえお姉さんは普通に爆発を起こしてた、それが分からない。


「お姉さんはどうやって魔法を?」


「私のは自身で試行錯誤して作り上げたものだ」


「魔法って作れるんですか!?」


「ああ、魔法とは魔力を編み上げていった末に生まれるものだからな」


「魔導書がないと駄目だとばっかり・・」


「あれは簡単に言えば編み上げの手順を記した物。読む事で求める魔法を作り上げるまでの手順を読者の深層意識に刻みつけ後は魔力を流すだけ。威力を上げたいとか抑えたいといった細かな調整は効かないが頭を使わず済むので楽ではあるが必須ではない」


「じゃあ俺でも作ろうと思えば・・」


「出来なくはないだろうが難しい。私も何度も挑戦しては見たがほぼ失敗、唯一完成したのがお前にも見せたあの魔法だ、それ以外は使えん」


「え、使えないんですか?」


「ああ、私達の魔力は魔法と相性が悪いらしい」


お姉さんは諦めた様な笑いを漏らす。

だからかな、ちょっとだけ自慢じゃないけど俺の魔法を見せたいと思ったのは。


「実は俺、お姉さんと違う魔法が使えるんです」


あんなクソ魔法なのに。


「ほう」


得意げになって披露しちゃいました。


「見てて下さい!」


ヌメヌメを降らして見せた。もちろんお姉さんの頭上に・・・・なんてやるはずないだろう。


「これは・・・」


流石のお姉さんもこれには動揺が隠せない模様、額に手をやり難しい顔してる。


「ただの失敗作じゃないか。まさかお前はこれを魔法と言うのか?」


「・・・・はい」


大きな溜息、呆れて物も言えないって感じ。


「見ていろ」


そう言いながらお姉さんが遠くを見たので俺もその視線を追う、すると次の瞬間、俺が作り出す何倍もの量のヌメヌメが降り注いだ。




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