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第五十四話 生と死

うねうねと動く首が一つ、二つ、三つ・・・ええい数えるのも面倒くさい。

とにかくそれだけ一杯あると言う事だ! それが全部一つの体から生えてるもんだからまた気持ち悪い。

因みに頭はドラゴンみたいなのがくっついてる、そしてデカイ。

終盤で出てくるような敵にレベル5くらいで挑んでるようなもので要するに一撃でgame overさようなら。

なるほど、強い相手から逃げれない勇者の気持ちが分かった。

逃げる隙を見つける事なんて出来やしねえや、背を向けての撤退より立ち向かった方がまだ生存確率がありそうに思えるんだもん。


死中に活ありとはよく言ったもの、ならば退くは誤り、前進あるのみ!


ズシリと地面を踏み鳴らす圧倒的重量感と圧倒的な頭の数による威圧、その戦力差は俺の試算でおそらく・・・・絶望的。


「無理です! 助けてっ助けて下さいお願いします〜!!」


絶壁をガリガリと爪で引っ掻いて登れもしないのに登ろうと試みるなんとも無駄な行為に励む、だってそれ以外やることが無いもの。

そんな俺をお姉さんは冷たく見下している。


「仕方のない奴だ、ならば一つ助言をくれてやろう。そいつの名はズメイ、口から吐き出される猛毒に触れれば長時間苦しみもがいて死ぬ、気をつけるべきはそれだけで注意して其奴の頭を全て斬り落とせば良いだけだ」


「・・・・言葉より手を動かしてもらえませんかね! そんな助言もらっても実行出来ないから無意味でしかないんですよ!」


「やかましい奴だ、どうせすぐ治る当たって砕けるくらいの気概で挑まんか。私がお前くらいの時はその程度の魔物など赤子の手をひねるのと同じくらいには容易な事だったというのに今の人間ときたら・・・生温い環境に浸りすぎだな」


その後もベラベラべらべらと一昔前の頭の硬いおっさんみたいな持論を展開している。

そうこうしてる間に俺絶対絶命。

無数の頭の一つからベッと唾を吐き出すみたいに飛ばしてきた紫の猛毒が直撃、激しい痛みに地面を転がり悶えているとようやく「やれやれ」とお姉さんが降りて来て一閃、またしても瞬殺してしまった。


「ほら起きろ」


毒を消してくれたのでようやく俺も痛みから解放された。


でもさすがにこれは・・・・・きつい。


「・・・もう嫌だ」


「何?」


こんな痛い思いをするくらいなら俺はもう主人公になんてなりたくない、そこら辺のmobと同じで良いから普通の平穏が欲しい。


「もう嫌だって言ったんですよ! 治るからって痛いもんは痛いし怖いもんは怖い、何度も死ぬ恐怖と痛みを味わうなんて悪夢でしかない、こんなのもう嫌だ」


子供のように喚き散らす。

とんでもない醜態を晒しているがそれだけ限界だった。


「では終わるか?」


「えっ?」


「終わるかと聞いている、お前の意見も聞かず勝手にこの世に引き留めたのは謝る、なにぶん死んでいたものでな聞きようもなかった。どうしてもと言うなら責任を取って修正するとしよう、安心しろ一瞬だ、痛みも感じる事なく終われる」


違う違う違う! 死にたいんじゃない、苦しみたくないんだ。


「俺はただ普通に暮らして普通に寿命を迎えて死にたいって言ってるんですよ!」


「残念だがその願いは叶わん、お前はもう私と同じく人の理から外れている」


すると突然お姉さんは刀で自分の腕を涼しい顔で斬り落とした。

普通に血が溢れる、けどそこから先は普通じゃない。

斬り落とされた腕が光の粒子となってお姉さんの腕まで飛んで行き粒子に包み込まれ次の瞬間には再生していた。


「分かったか? 私も同じこんな風に勝手に傷が修復される身体、そしてこの姿のまま変わらずに名前を忘れてしまうほどは長い時間を生きている。寿命なんて待っても永遠にやって来ない、狡猾に生きようとした代償がこれだ」


名乗りたくないから出た嘘だと思ったが本当に忘れているようだ。

自分の名前を忘れるほどの時間、想像できないが相当な時間ではあるはず。


「すまんな、半ば魔物のようになってしまって人に対する気遣いを忘れていた。終わりがこないということがどんなものか知っていながらお前をこっちに引き込むなど間違いだった。修正しよう」


一体どうするつもりなのか見当もつかない。


「待って下さい!」


止めたのは怖かったというのが主ではあるがもう一つ、お姉さんが何故俺を助けたのか? その理由を聞いていないと思ったから。

それとついでに人間離れしたお姉さんが話の途中一瞬垣間見せた弱々しい表情が気掛かりにもなったからというのもある。





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