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第四十八話 二度あることは三度ある

「ついさっきぶりですね」


何もない空間だ。

完全なる無。

身体も動かせない、当然だ、動かす体がまずない。

意識だけが宙に浮いているみたいで水中を漂っているかのような心地よさ。

そんな真っ白で清潔感漂う楽園にどす黒い墨汁が一滴落ちて汚らしい染みを作るみたいに不愉快な声が聞こえる。


「ちょっと今の表現あんまりじゃありませんか!? あなたの思ったことは全部こっちに筒抜けなんですからもうちょっと配慮して下さいよ!」


醜悪な生き物の叫びはただただ不快だ、つまりは黙れと言ってやりたい。


「だから聞こえてるんですって! 私のどこが醜悪なんですか!? 寝言を言うのも大概に━━━━」


うるせぇー! この悪魔!

人を殺してとんでもない選択肢押し付けやがって!


「悪魔じゃありません神様です〜!」


知るか、俺にとっては悪魔だから悪魔なんだよいいかクソ悪魔!!


「死んだくせに無駄に元気ですねー負け犬の遠吠えはみっともないですよ」


負けてません〜お前の思い通りにはしなかったのでどちらかと言えば俺の勝ちですーだ!


「それはどうでしょう? 神様パワーを送り込んだあなたの心臓は魔族の手に渡りました、豊富な魔力を生み出す心臓がね。つまり、あなたがわかる風に言えばほぼ無限弾薬を手に入れたようなものです。ならこの後どうなるかは当然分かりますよね?」


・・・・・。


「あらあら黙っちゃいました? なら代わりに教えて差し上げます、ずばりこの先待っているのは心臓という兵器を巡っての殺し合い。魔族による人間達の支配か殲滅、又は心臓を人間がどうにかして奪って逆のパターンになるか。ただの道具と成り果てましたから後は使う者次第」


分かってる、ただでさえ強力な魔族がさらに力を得たのなら人間に勝ち目はない。

争いにすらならない蹂躙だ。


「これまで人間側には一部の実力者に加えて圧倒的な数というアドバンテージがあったので魔族も迂闊に手は出せなかったんですけどこれからはそうはいきません」


だから何だよ? そんな話を聞かせてどうしたいんだよ?


「別に〜、聞いておきたいかなと思ったので話しただけでーす」


そんなの聞きたくねーよ、死んだ身じゃどうせ何も出来ないし元々俺には関係ない事だし。それよりもさっさとやる事やれよ。

天国にでも送るとかそういう事をするんじゃないのか?


「強がっちゃってみっともない、本当は・・・・いえ、まあ良いです。それよりも自分が天国に行けると思ってるなんて図々しくないですか」


はい? ちょっと待て! 地獄ってことはないだろ!?

俺は何も悪いことは・・いや、ちょっとくらいはしたかもしれないが地獄に連れて行かれるような事は断じてしていないぞ!


「したじゃないですか、地獄に叩き落とされても文句の言えない事を」


はぁ? 全然記憶にないんだが。


「神様である私に敬意を示さずさらには悪魔呼ばわり、これはとんでもない罪です。地獄の業火に放り込まれても仕方のない事です。そこで永遠に身を焼かれながら私に誠心誠意謝罪して下さい、そうすれば助けはしませんけど時々笑いには来るかも、というわけでさよならでーす、どうかお元気で」


悪魔の笑みを浮かべて指を鳴らそうとしている。

パチンという合図で俺は地獄へ叩き落とされるのだろう・・・いや、ふざけるな!


待て待て待って待って下さい!


「いやでーす」


そして指が鳴らされた。

耳をつんざくような盛大さもない本当にしようもない音をきっかけに終わる。








だがしかし、何も起きない。


これは一体?


「おやおや、あなた幸運ですね。普通ありませんよ()()()なんて」


三度目? 何のことだ。


「すぐに分かります。しかしあなたは何か特別なのかもしれませんね、ひょっとするとあなたならどんな事だって成し得るのかも。だって奇跡を起こすのは神じゃなくその人自身の努力、努力は必ず報われるなんて言葉はもはや誰しもが鼻で笑う程に陳腐な言葉に成り果てていますが私はあえてその言葉をあなたに送りましょう。わざわざ不可能と思えることに挑んで可能にしてしまうのは下界に生きるあなた達の特権ですから、神のように無理なものは無理と即座に切り捨てることの出来ない愚かさくる努力、せいぜい見て楽しませて貰うとしましょうか」


ああやってやるよ。

ひたすらに足掻いて奇跡ってやつをみせてやるよ。


「期待して・・待ち・・・・ぷっ、あーはっはっはっ! やっぱ無理ですー! 神様らしくしてみようと思ったんですけど無理。笑いが堪えられませんよ! 何カッコつけちゃってるんですか? 万能でもない人が不可能を可能にだなんて無理無理無理ぜーったいに無理に決まってるじゃないですか! 不可能なものはさっさと諦めて神様頼りにして全て放棄して仕舞えば良いんです。そうすれば私が見守って差し上げますから、どんな悲惨な末路を歩むのかを。そしてそれを見て大笑いさせてもらいますのでいつでも頼って下さいね」


最後の最後までこいつはクソ悪魔だ!


「でも一応応援はしてあげましょう、ですので一つ真面目な助言です。奇跡を起こしたいのなら強くなりなさい・・って言っても貴方みたいな雑魚には難しいかもしれませんからあなたは他に頼るのもいいかもしれません。いつか大きな選択を迫られた時に味方してくれる信頼出来る仲間なんてものがいれば或いはバットエンドは回避できるかもしれませんしね」


仲間が一人もいなさそうな性悪悪魔からまさかの助言。


「‥‥‥‥では精々頑張って私の暇つぶしくらいにはなってから死んで下さいね〜それでは」








真っ暗闇。

でもそれは俺が目を閉じているからだろう。

さっきと違ってまぶたが動かせるという事は・・・。


「おや? 起きたか」


クソ悪魔とは違う声は人のものだ。

二回死にこれから三度目の人生が始まろうとしている。


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