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第三十六話 目を覚ますとそこは・・・

そっと近づく二人の顔。

お互い恥じらいながらも吐息の掛かる距離まで接近!


やめろよ、絶対に邪魔するなよ、いいか絶対だぞ!



しかしその時!



唐突な邪魔が入る・・・・なんて展開をなんとなく予期していたのだがそんな事もなく俺は初めて唇の柔らかさを知った。


何で誰も何もしないんだよ!?

しちゃったじゃん。


まさかこの俺にこんな機会が巡ってくるなんて誰が予想できただろうか。

事ある毎に王道展開に裏切られ続け涙でベッドを濡らす毎日、そんな俺にもやっと春が来たようだ。

恋愛なんて時間の無駄なんて冷めていたけどさ結局俺は愛を求めてたってわけだな、滑稽だな、笑ってくれて構わない、だって今から俺はリア充の仲間入りだからさぁ!


「これで達成ですね!」


「そうですが良かったのですか? よりにもよってこのような軟弱な奴、それに何より人間ですよ?」


「構いません、力が無いにも関わらず助けようと必死な姿、健気でとても可愛いじゃないですか。獰猛よりも可愛い方が私の好みですしこの方が私の求める人だと思います。神の導きが最後に知らせてくれたあの村からもそう離れてはいませんし何より口づけをかわしてもこの通り、これが何を意味するかはあなたも知っているでしょう?」


ポッと頬を赤く染めた姫様の顔。

いやぁ照れるなぁ、そんなに好かれるなんて。


「それにこの方は他の人間とは匂いが違う、一緒にいるだけで心地よくそして力がみなぎる。先程の魔法もおそらくはこの方のおかげだと思います」


それは言い過ぎでは!? でも悪くはない。

ルナに変な匂いと言われた事を未だに引きずってたが姫様に褒めてもらえた事で吹っ切れた。


「本当ですか!? ではこれで・・・」


「はい、これで準備は整いました。後はお父様に認めて頂くだけです」


「では戻りますか?」


「はい」


おいおいいきなりお義父さんとご対面か?

心の準備ってものがまだ出来てないのだが、しかし避けては通れぬ道とあらば覚悟を決める他ない。

だが瞬間頭を過ぎったのは仲間の事、このまま黙って幸せになるなんて出来ない。

一緒に今まで旅をしてきたんだ。

ちょっと待って下さい、その一言を言おうとしてやめた。


どうでもいっか、そんな思いに支配された声帯が働く事を止めてしまった。


「それじゃあ行きましょうか、私の眷属さん」


彼女の言葉は絶対のように思えた。







唐突な場面転換、知らない天井が目の前に広がる。

最後の記憶は姫様の太陽のような眩しい笑顔、それが何故だか今はどこぞのお城のような豪華な天井が見える。

そして身体が沈み込むような感覚はとても久しいふかふかベッドの感覚。

こっちに来てから安い宿の硬いベッドばかりで寝ていたからこの心地がとんでもなく良く感じる。

例えるなら真冬の布団の中に居るがごとく俺を引き離さない魔性を秘めている。

ちょうど外も真っ暗でこんな夜中にうろつくのもどうかと思った俺が出す答えは決まっている。

よし寝よう!

そう決意するのにほとんど時間を要することなく目を閉じたのだが直後に響く扉の開閉音に邪魔される。


「目を覚まされましたか?」


その声は微睡みの中にいる俺を優しく覚醒させる。

母親に叩き起こされる時の粗暴なものとは違い小鳥の囀りのような木々のざわめきのような心地よい声。


「ここは?」


今一度目をこすって周りを眺めてもやっぱり見たこともない景色。

お姫様が吹き飛ばした野盗のアジトがあった場所とは全く違う場所。


「私のお家です」


なるほど、さすがは姫様だ。

やっぱり暮らしが別次元、これが頂点に君臨するものの生活かと驚きを禁じ得ない。

あれこれ聞きたいことはあるのだが何を最初に聞くべきか吟味しているうちに先に姫様の方から話し始めてしまった。


「寝起きにすぐで申し訳ありませんが朝食の準備ができておりますので一緒にいただきませんか?」


思い出したように腹の虫が鳴いた。

あれこれ聞くのは食事の後でも良いだろう、そんなわけで俺は迷わず快諾。



いや待て、今姫様は何と言った?

聞き間違いでなければ確かにこう言った。


「朝食・・・・ですか?」


「ええ朝食です」


再び外を確認しても太陽は顔を出してはおらずどんよりと暗い雲が渦巻いている。

思わず首をかしげる仕草に姫様も俺が言わんとすることがわかったみたいで納得の答えを一言。


「これでも一応は朝ですよ、だってここは魔界ですので」


なるほど・・・・・はぁ?




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