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第三十四話 命懸けの脱出

「さて、問題はここからどうやって脱出するかなんだが・・・」


女騎士キアラが真面目な顔して切り出したので俺と姫様ことクラリスも真剣な顔をして続きを待った。


「おま・・・いや、君、何かいい案はないか?」


今明らかにお前って言いかけたがまあそれは気にしないとしよう。

差し迫ったこの窮地をどう乗り越えるか、優先して考えるべきはそれなのだ。

そこで俺は視野を広げて周りを見渡す。

土を切り出して作った穴を鉄格子で蓋をしたような簡素な作り。

鉄格子の幅はバラバラでおそらくは素人が作ったものだ。

扉には鍵が掛かっていてあれをどうにかしないと出られない。

物も何もないこの状況、普通なら打つ手なしといったところだがお忘れじゃないだろうか?

ここは俺にとっては普通じゃない異世界なんだぜ!

奇跡も魔法もあるんだぜ!

そしてそこに俺の脳内にある人類の叡智たる化学の知識が加わればどうなるかな。

日頃こんなもん役にたたねぇよと授業中居眠りしている奴よ見ておけ!

もしうっかり死んでよく分からない神様に異世界送られて牢獄にぶち込まれた時役に立つって事をな!

高度に発展した化学知識を見せつけてお姫様を助けてキャー凄いって言われて最終的には結婚までいってやりますとも。

というわけで俺の成り上がりの始まりの一歩として扉を施錠する南京錠を壊すことにする。

やることは簡単、高温になるまで熱して急速に冷やしてやる、それだけで大抵の物は壊れるってなんか聞いたことがあるような気がする。

だから必要なのはその魔法を使える人間だけ。

俺はクソ魔法しか使えないから参謀役という立ち位置にしてと、ここには二人もいるんだそれくらいの魔法どっちかは使えるだろう。

フャイヤとブリザド、又はメラ(ギラでも可)とヒャドみたいな初級魔法しか必要としないんだから。


さっそく得意げに教えてやる。


「回りくどい、却下」


即座に反対。


「じゃあ他に良い方法があるのかよ?」


「壊せば良い」


「どうやって?」


「殴るか蹴るかして」


「馬鹿?」


「なんだと?」


ちょっと悪口言ったら女騎士がガチギレしそうになったので慌てて取り繕う。


「こんなの人の力で壊せるわけないだろ」


「こんなのも壊せないのか? 軟弱な人間め」


「じゃあお前は出来るのかよ!?」


「今は無理だ」


「“今は”って、じゃあいつなら出来るんだよ?」


「この身を縛る枷が無くなりさえすればいつでも出来る」


「あ・・・そう」


どうやらこの女騎士は見えない何かに縛られている設定らしい。

ふざけて言っているのならこちらもつっこみを入れられたのだがその表情はあまりにも真剣、だから言葉に迷う。

助けを求めるように姫様の方を見る。


「では私がやってみますね! これでも魔力には自信があるので今の状態でもここを破壊するくらいは出来ると思いますから」


姫クラリスが嬉しそうに立候補。

いやいやお姫様にそんな事・・・


「たしかに、姫様のお力があれば・・・」


女騎士も乗り気。

お前は守る側だろう、護衛対象の力を当てにしてんじゃないよ!


「それじゃあいきますね! えいっ!」


ほのぼのするような掛け声に頬を緩ませる。

まあ挑戦するだけしてもらおう。鍵を壊すまでは行かなくても何か別の打開策に繋がるかもしれないし。


魔法陣が浮かび上がって小さな炎の塊が形成される。

それは小さな太陽の如く熱量を放出しながら燃え上がる・・・と仰々しく言ってはみたがサイズは握り拳ほど、可愛いもんじゃないか。

こんな小さな炎でもなんだか落ち着くなぁなんて火の偉大さに心奪われていると少し暑くなってきた。

それもそのはず可愛い火の玉がぶくぶくと膨れ上がっているのだから。


「ひ、姫様、もうそろそろ控えた方が・・・」


女騎士も俺と同じようでそれとなくやめさせようとする。


「え? 大丈夫ですよ! そんなに心配なさらないでも私はまだまだいけますから」


微笑む姫様と肥大していく炎、そして顔がひきつる俺と女騎士。


「あのお姫様、それはどれくらい大きくなるものなんです?」


恐怖を感じるくらいに大きくなったところで聞いてみる。


「分かりません、使ったことありませんから。とにかく限界までいってみようと思います。そうすればこの南京錠も壊せるかもしれませんから! 私頑張ります☆」


ああなんてピュアなんだ。

必死に頑張ってる彼女にやめろなんて俺の口からは言えない、好感度下げたくないし。

というわけで頼んだ女騎士。


「姫様っ! 素敵です頑張って下さい!」


こいつも俺と同じ考えか!

だがそうはいくか、俺も急いで後に続く。


「姫様は俺たちの希望です、お願いします!」


そうやって褒め称えられた姫はすっかりその気になって出来上がったのがヤバイと一目で分かる火球。


「いきますよ〜!」


放たれる。

爆発する。

凄まじい爆風が巻き起こった・・・・そして巻き込まれた俺たちは・・・。




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