第三十三話 姫様と女騎士と俺
俺は常備しているこん棒を振り上げた。
そして野盗Aに向けて会心の一撃といっても過言ではない強烈な打撃を繰り出す。
ユウタの攻撃は外れた!
野盗Aは蹴りを放った。
ユウタは目の前が真っ暗になった!
♢
目を覚ますと知らない天井・・・かと思ったらとってもお綺麗な少女の顔が割り込んでくる。
「大丈夫ですか?」
天使のような彼女が心配そうに呟くもんだから正直ちょっと蹴られたお腹が痛むけど男たるもの心配かけまいと痩せ我慢。
「ええ、大丈夫ですとも! あの程度なんてことありません!」
「良かった!」
ホッと胸をなで下ろす女神の優しさに涙がちょちょぎれる。
だがそんな俺に水を差す人物がここには居た。
「蹴り一発で意識を失いましたからね、大した怪我はしてないでしょう。そんな事より今はここを出ることを考えなければ・・・」
「キアラ、彼は私達を助けようとしてくれたんですよ! それなのにその態度は無礼です」
「も、申し訳ありません姫様! そこの君も失礼した」
はは〜ん、成る程。
お姫様と女騎士ってところか、へぇ〜ふぅ〜ん、最高じゃん!
檻の中に男一人に綺麗な女性二人、この状況で俺に求められてるのは一つだけだろ?
そう! ずばり、男の俺がなんとしても二人を守りきる事だ。
・・・・・俺が良からぬことすると思った人怒らないから手を挙げなさい!
全く! 俺にそんな度胸あるわけないだろ!
「いえいえ、実際なんの役にも立ちませんでしたから」
「そんな事ありません! 来てくれただけでもとっても嬉しかったですよ。まるで勇者様のよう」
・・・・え!? もしかしてこの子俺の事好きになっちゃった的な!
異世界モノにありがちな謎好感度爆上がり現象来ちゃった?
そこで俺はとんでもない事に気付いてしまった!
よくよく考えたら俺の周りには綺麗or可愛い女の子しかいないじゃないか!?
ま、ま、まさか! 俺の力は体から溢れ出る魅力だった・・・のか?
ハーレムを構築せよとの神からの啓示。
俺はすぐさま姫様の手を取り目を見つめて甘い声で囁いた。
「当たり前じゃないですか、目の前で困ってる人がいれば助けるのなんて当たり前の事でしょう」
「素敵なお心がけですね」
なんて素晴らしいひと時なんだろうと状況も忘れて顔を緩ませていると見てしまった。
俺たちの甘い空間をまるで殺意でもこもってるかのような恐ろしい目で見る女騎士を。
俺と目が合っても隠そうともせず延々と目でコ・ロ・シ・テ・ヤ・ルと訴えかけている。
「こんな素敵な方と一緒なんです、きっとどうにかなります! 神様はいつだって私達を見守ってくれてますから。ね、キアラ?」
突然振られたにもかかわらずそいつは瞬時に顔を戻し「ええ、そうですね」なんて同意する。
こいつ、熟練の猫被りだ!
恐らく姫様に近づく輩を闇に紛れて始末してきたに違いない。
要するに姫様大好きなヤバい奴だ。
しかし今はここで争っている場合じゃないというのは理解しているだろう。
「よう、お目覚めか?」
野盗A、B、C、Dが現れた。
どいつもこいつも下卑た目で姫様を見てやがる。
「さて、これからどうなるか分かるよな?」
「こんな事やめて下さい」
「やめねぇよ、大金を得る機会を簡単に捨てられるかよ。お前は奴隷として売り飛ばしてやるよ、見たところどこぞの国の姫様って感じだしそれは高く売れるだろうよ」
「そんな・・・」
「大した護衛も付けずあんなとこうろついてるあんたが悪いんだぜ。そこの女騎士だけなんて襲って下さいって言ってるようなもんだぜ」
「貴様ら如き私一人でも━━━━━」
「強がんなよ、せっかくの綺麗な顔が台無しだぜ。お前も大切な商品だからたっぷり楽しませてもらってから売り飛ばしてやるさ」
「やってみろ下衆が」
「いいねぇ、いつまでその強気が続くか見ものだな」
ゲラゲラ笑い声をあげて去っていく野盗。
隅っこで体育座りしている俺には目も向けねぇの・・・・。
別にいいもん、慣れてるから。