第三十話 隠された真実
「これは・・・私のです」
「・・・・はぁ!? この悪魔僧侶いきなり何を言い出しよる! それは絶対に我が家に伝わりし秘宝じゃ! 断じて貴様の物などではない。どこまで欲深い性格を━━━━━━━━ぎゃっ!」
「あんまり汚い言葉は感心しませんよ、めっ!です」
神聖な力(?)によってリアは黙らされた。
「言葉が足りませんでしたね、私は別にこれの所有権を訴えているわけではありません。もうずっと前ですが私はこれを所有してました、しかしどうしても欲しいという方がいたのでお譲りしたんです」
ということはその相手があの屋敷の主人の可能性があるということか。
なんにせよ善意で譲った物が回り回って今本人の前に戻ってきたというのはきっとフレイヤの日頃の行いの賜物だろう。
俺たちがあの屋敷でお宝を見つけることはもしかしたら偶然という名の必然だったのかもな。
「ちょっと待て、何故貴様がそれを持っていたんじゃ?」
聖なる何かで浄化されたリアが小刻みに震えながら訪ねた。
しかしそんな事聞かなくてもわかりそうなものだが。
リアの父親が無くしたものを偶然フレイヤが見つけた、それだけのことだろうに。
「偶然ですよ」
まあ、予想した回答だ。
「本当に偶然か? 父上の名誉のために黙っておこうと思ったが実はのその宝珠は無くしたんじゃなく盗まれたんじゃよ。あれは父上が人間の街に遊びに出かけた時、一人の僧侶の姿をした女に声をかけられてたったそれだけで父上はまるで操られているかのように抵抗できなかったと」
ゴクリと生唾を飲む。
仮にも魔王相手に洗脳だと! よほどの手練れ、フレイヤなら或いはと思ってしまったがすぐにそんな考えは追い出す。
「おいおい、ならお前はフレイヤがその女だって言うのかよ? そんな事あるわけないだろう、だって、フレイヤだぞ、それに仮にそうだとして盗んでまで手に入れた物をどうして他人に譲るんだよ? 」
「馬鹿者! この女が無償で譲るわけなかろう! 金で売ったに決まっておるわ」
俺は答えを求めるようにフレイヤさんを見た。
相変わらず美しい笑顔に少しうっとりしてから顔を引き締める。
「どうでしょうねぇ?」
含みをもたせた返答にリアはさらに追い込みをかけていく。
「その時父上が言っていたその女の特徴、貴様とことごとく一致するんじゃよ」
フレイヤがわずかに下を向く。
それから軽く息を吐いてからあげた顔からはどこか諦めを感じた。
まさか!と思ったさ。でもさ、それでもやっぱり俺はフレイヤを信じた。
彼女が盗人な訳ないって、だって俺は二度と仲間を疑わないってあの日、魔王の城で誓ったんだから。
だから、フレイヤの言葉を待とう。
「これは認める他ありませんね。私がその宝珠を手にしたのは確かにその時です」
それは罪の告白だった。
「ようやく認めおったか。貴様のせいであの後暫く我が家は険悪だったのじゃぞ、母上が怒って怒って父上の土下座なんてものを見せられてわしがどれだけ辛かったと思う!」
「そうですが、それは申し訳ないことをしました。ですが、盗んだと言われる覚えはないのですが」
「貴様何を?」
「ええ、ですから盗んだと言われる覚えがないと」
「ここに来てとぼけるか!?」
「あれは頂いたんですよ。それに、声をかけてきたのはあちらから。お酒に誘われたのでご一緒してあれはそのお礼にと」
・・・・・これは変な感じになってきたぞ!
「嘘じゃ! 何か良からぬ魔法を使ったに決まっておるわ!」
「では確認してみればどうですか?」
そういえばリアはいつでも転移して帰れるんだった。
「ならばそうしてやる! 逃げるでないぞ」
数分後
「本当じゃった・・・・」
すっかり暗い顔をして帰ってきたのでなんとなく予想はついたけど。
「父上に聞いたら母上があれは洗脳じゃなくて浮気だと。浮気とは何かと聞いたら母上以外の女性に求愛する事だと・・・見損なったわ!」
子供になんて生々しいことを・・・。
「宝珠も実は酔った勢いであげてしまったんじゃと・・・最低じゃ、クズじゃ」
もうやめて! リアの父親のライフはもう0よ!
「だから言ったでしょう、根拠も無く人を疑うのは良くありませんよ」
フレイヤは諭すように言った言葉に珍しくリアも反発せずに頷いた。
「すまぬ、わしが悪かった」
「顔をあげてください、謝罪なんて必要ありませんよ」
優しく微笑むフレイヤにつられてリアの顔にも笑顔が灯る。
仲間っていいものだぜ。
「これは一つ貸しにしていずれ返して頂きますから。人の心を傷つける、それがどれほどの悪行かしっかりと理解して頂くために私も心を鬼にして対応させてもらいましょう」
リアの顔が真っ青になった。
仲間っていいものなのか?