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第二十話 よし、宝探しに行こう!

ティオとリアと一緒に酒場で夕食をとった。


混み合った酒場では、調理場から空腹の人間には耐えがたいかぐわしい香りが漂っている。お肉が焼ける匂い、魚がこんがり焼けている匂い、香辛料の鼻腔を刺激する匂いなど色々な匂いが絡み合っているが決して悪い匂いではない。


お腹の虫が鳴いている、さっそく席に着こうと店内を見渡してみた、どこも人がいっぱいだったが偶然空いている席に滑り込むように座った。


椅子にどっぷりと沈み込むように腰かけ、料理を注文し終えると、


「今日はありがとうございました、私のワガママに付き合ってもらちゃって、本当に楽しかったです」


ティオが興奮冷めやらぬといった感じで感謝を告げてくる。


「いやいや、気にしなくていいよ、俺も結構楽しめたし魔法道具にちょっと興味が出てきたよ」


その言葉を聞いたティオの顔が途端に明るくなる。


「本当ですか! それじゃあ今日私が聞いた面白い話をお教えしますね」


そこからティオの魔法道具講義が開始される。


一生懸命話に集中し理解しようと頭の中で反芻したが、異世界初心者の俺には話の内容はほとんど理解することは出来なかったので、途中から俺は考えるのをやめた、静かに微笑んで、ほぅ、えぇ、なるほど、うん、すごいな、といった相槌をここぞというタイミングで繰り出して料理が運ばれてくるまでの時間をなんとかやり過ごした。


すまん、ティオ、許せ。


料理が運ばれてきてテーブルに並べられる、注文した料理はティオが野菜炒め定食、キャベツ、ニンジン、もやし、ピーマンといった野菜の中に豚肉もそれなりに入っていてしっかり味付けされている野菜炒めと、味噌汁、ごはん、香の物までついた定食だ。

リアはカツ丼だ、サクサクのカツに、とろりとした卵と割り下、うまそうだ。

俺は野菜炒め単品にしてさらに俺のは肉抜きだ、そうしたらいくらか安くなるのだ。


小動物のようにちょびちょびと少しずつご飯を口元に運びしっかりと噛んでから食べるティオとそれとは対照的にガツガツと勢いよく口の中にご飯を掻き込んでほとんど飲むかのように流し込んでいくリア、そんな二人を眺めながら考えをめぐらせる俺。


この後の屋敷での宝探しにどうやってみんなを引き入れようか考えていた。


別に街の外に出る訳ではないので危険という事は無いだろうからティオと二人で行くのも(やぶさ)かではないのだが二人で行って『何でこんなとっても面白そうな事に誘ってくれなかったの!』と後で他の奴に責められても困るし仕方ないから誘ってやらなければな。まったく疲れるぜ。


言っておくが決して怖いとかそういう訳では無い、俺は幽霊など信じない人間だからな。

幽霊など所詮、異様な状況下における異様な精神状態が見せる幻のようなものようするに気のせいだろう。心霊映像、写真もまた然り、作り物かシミュラクラかパレイドリアだ。全然怖くないもんね。


怖くないけど人が多い方が楽しいに決まってる、というわけでまずはリアからだ。


「館長の屋敷の話覚えてるか?」


唐突に言葉を切り出す。


「それがどうしたんじゃ」


一呼吸おいてから答える。


「一緒にどうだろう?」


・・・・・


「わしも楽しそうだからついて行くに決まっておる」


よし、まずは一人確保。


食事を終え、ゆっくりと歩いて宿に向かう。食後の運動にはちょうどいい。


宿についてそのままティオが報酬をルナとフレイヤに渡すのについて行く。


コンコン、ルナの部屋の扉をノックする。ティオが報酬を渡す。俺が『深夜0時、屋敷に一緒に宝探しに行かないか?』と言う。


「屋敷って何処の?」


ルナの質問に正直に答える。


「この南区のはずれにある今はもう人が住んでいない屋敷さ、そこは深夜0時からしか入れないらしいから今から行かないかと思って」


「人がいないって、廃墟って事?」


「そう」


ルナの顔が見る見るうちに青ざめていく、


「ごめん、私はやめとくわ」


静かに扉が閉められる。


「ビビりじゃな」

「ああ、ビビりだ」


リアと俺が哀れむように呟く。


ドンッ、乱暴に扉が叩かれ、


「聞こえてるわよ!!」


怒号が飛んできたので早々にその場を撤退した。


コンコン、フレイヤの部屋の扉をノックする。ティオが報酬を渡す。俺が『深夜0時、屋敷に一緒に宝探しに行かないですか?』と言う。


「すいません、これから夜中まで神にお祈りをしなければならないので行けそうにありません。とても残念です、本当に」


残念そうにして答えてすぐに扉が閉められた。


「うそじゃな」

「いやいや、フレイヤさんはお忙しいんだよ」

「いや、絶対にウソじゃ、今頃きっと酒を片手につまみを口に放り込んでいるに違いないぞ、あいつはそういう女じゃ」


刹那、リアの頭上からいつか見たような光の柱が降り注ぐ、


「ぎやぁぁぁ!!」


シュウウウと軽く煙を上げながらリアはその場にひれ伏した。


聞こえていたようだ。この扉は以外と声を通すとルナの時に学んだろうに、うかつなり、リア。


その場に倒れているリア担いでその場を撤退した。


そして俺達は結局三人で件の屋敷に向かう事にした。


第二十話 END

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