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第百七十二話 探索part④

重々しい扉を抜けた先、薄暗い廊下を少し進んだら開けた場所に。


「じゃあ後は好きにしやがれクソ野郎」


そんな汚い言葉を別れ言葉にしてヴァイスは一人先に行こうとする。


「ちょっと待てよ、俺の探し物手伝ってくれる約束だろ?」


「ああ? そんな約束した覚えねぇよ」


「助けてやったんだちょっとくらい手伝ってくれてもいいだろ!」


「助けてやっただぁ? 違う、お前は俺に良い様に使われただけ、まんまと俺に利用されたんだよバーカ!」


知力の勝利だとでも言うかの様に頭を指差し得意げな顔を散々晒して拳を胸の前に突き出して親指を立てる俺の世界で言うGOODのポーズを作る。

達者でな、という意味合いだろうか?


「探し物の事だけど、頑張れよ」


「お前⤴︎‥‥‥」


色々本当に最悪なクソみたいな奴だがほんの少しくらいは感謝の気持ちはあったのか‥‥‥でもそれなら少しくらい手伝えよ馬鹿野郎と喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ矢先、手の上下を入れ替える。


「まあお前如きが頑張ったところで一生見つけられないと思うけどなww、精々足掻いてそれからくたばっちまえ、あばよ!」


地獄に落ちろのポーズを見せつけそれからさっさと背を向け階段を登って去っていった。


「‥‥‥お前⤵︎」


どうやら奴は芯の部分まで腐りきってやがった様だ。

牢屋から出して貰い目的地までの道を切り開いてくれた相手に対する最後の言葉が『くたばっちまえ、あばよ』。

これは逆によかったかもしれない、ここまで散々な扱いを受けたなら負い目もない。

精々一時の甘い虚構の中にいるが良い。

どうせ最後はここに逆戻りだ。

あんな殺人鬼を野に放つわけにはいかない、だからこっそりミニ魔剣を服に忍ばせいつでもあいつの場所に行ける様にしてある。

こっちの仕事が済んだらさっさとあいつのところに飛んでボコボコにして監獄に放り投げてやるんだ、覚悟しとけよ。

ふぅ〜と一呼吸吐いて心を整え向かうべき場所を思考する。

選択肢は二つ、左右にある階段で上に行くか真っ直ぐ真ん中にあるでっかい扉を行くか。


「触れられたく無いものはとことん奥に隠すものか」


魔族の体を使った実験の痕跡、それを見つけて公表すれば今の魔族に対する仕打ちも多少は和らぐかもしれない。酷い目にあったのは人間だけじゃ無いとみんなが知れば‥‥。

それとついでに聖剣なる物を見つけて俺がもっと強くなって心臓を奪い返して騎士共を弱体化させられれば一方的な理不尽を止められる。

多少疑いはしたがここに来たのは間違いでは無かった、しかしそうなるとやはりフレイヤの立ち位置がよく分からない。敵か味方か、一体どう見るべきなのか?

いや、今は目の前の事に集中しよう!


ドシン、ドシン!


心を切り替え正面の扉に近付いた時、騒々しい足音が上から響いた。

すぐさま隠れられそうな場所を探し偶然そこにあった騎士甲冑のオブジェクトの中に身を潜める。


「おい何処だ馬鹿っ!」


騎士甲冑の中では視界が悪くよく見えなかったが声で駆け下りてきたのがただのヴァイスだと分かった。馬鹿とは何だ馬鹿とは、と憤りもしたがここは沈黙を貫く。関わるのも面倒だしそのまま隠れてやり過ごすとする、だって足音はひとつじゃないんだから。

ヴァイスの後を追いかける様にドシドシと鳴り響いている。

ただの足音にしては若干大きすぎる気がする、何だか地面も揺れてるようだし何かまるでデカい何かが追いかけている様な‥‥‥‥。


「ああクソがっ!」


階段を降りて来た追跡者の姿を目にしてかヴァイスは慌てた様子で俺の隠れる甲冑の前を通り過ぎて行く、そしてその後を何やら大きな何かも通り過ぎていく。

あれは、いつしか俺が戦わされた巨人か? ただ、あの時とは段違いの俊敏性ではあるが。

まさかあんなものがうろついているとは‥‥‥よし、俺は見つかる前にさっさと先に進むとしよう。ヴァイスという尊い犠牲を無駄にしないように。

甲冑を脱ぎ捨て扉に向かう途中の事だ、何やら視線を感じてその方向に目をやるとそれはいた。

こちらを見つめる大きな大きなつぶらな瞳、巨大な体躯は俺の三倍程はあろうか。

瞬間、恐怖で本能的に体の動きをピタリと止めた。こちらの世界に来ていろんな魔獣と遭遇して来た。深淵に蔓延るドラゴンにはこいつよりもはるかに大きな奴もいたがそれらとはまた別物。サイズ感から来る絶望はあったが言うてもファンタジー的な強大な何かを前にして感じる恐れ、しかし一方こいつはホラー系だ。

サイズはまだマシかもしれないが見た目がその‥‥‥気持ち悪い。

やはり人型の異形というのは精神的に来るものがある。

やだなぁ〜何か涎がぼたぼた溢れてるし捕まったら齧られて殺される系なんだろうなぁ、そんなホラーゲームあったなぁ〜。


数秒の硬直の後、先に逃げ出したのはこちらだった。


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